「子どもと夫が幸せならいい」は間違いだった。専業主婦が気づいた“今が人生最高の点数”の生き方とは【引田かおりさんインタビュー】

家族・人間関係

 「子どもと夫が幸せならいい」は間違いだった。専業主婦が気づいた“今が人生最高の点数”の生き方とは【引田かおりさんインタビュー】

2021.05.23

東京・吉祥寺あるパン屋さん「Dans Dix ans(ダンディゾン)」とギャラリー「gallery fève(ギャラリー フェブ)」のオーナーの引田かおりさん。センスのいい暮らし方やモノ選びについてたびたび注目されていますが、今回はそんな引田さんの「自分らしい生き方」について聞きました。

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幸せになるために誰かが犠牲になる必要はない

――引田さんの20〜30代は、自分のことよりも家族のことを優先すると覚悟を決めたというお話を伺いました。今同じような生活を送っている方たちに、同じ経験がある引田さんだからこそ送れるメッセージはありますか?

引田かおりさん

自分のことをないがしろにしない、後回しにしないということです。体調が優れなかった20代30代の頃って、今思えば、自分がやりたいことと、家族のことを優先しようというとする気持ちのギャップに疲れていたのかもしれません。

私がいろいろを引き受けることによって、家族が元気で幸せならいいと思っていた時期がありました。家族の誰かが具合が悪いことより、私が悪いほうがいいやと納得していたんです。でも本来はみんなが元気、みんなが幸せであるべきなんですよね。そんな当たり前のことに気づくのにも時間がかかりました。実家が安定していなかったから、自分が手に入れたこの家族もいつかダメになるんじゃないかと怖かったんだと思います。

――何かを犠牲にしなくても、幸せになる方法があるという気づきがあったのですね。引田さんご自身がそのことに気づくきっかけになったことがあれば教えてください。

人間って、確実なのはいつか死ぬことだけですよね。誰もが死に向かって生きているんだけど、そこにフォーカスしたらおかしくなっちゃうのでそれは置いておいて……。今の私はやりたいことをやって生きていますが、やりたいことについて深く考えたり本を読んだりしているうちに、自分のことをないがしろにするのはやめようと思えたんです。どこかのタイミングで「私だってやりたいことをやるぞ!」という意識を持ちました。

自分の好きにしてみたら、体調が戻ってきた

「自分の人生にどっちでもいい、はナシ!」引田かおりさん

――30代の頃の不調は、自分のことをないがしろにしていたからということでしたが、やりたいことをやっている今、不調は改善されましたか?

あの頃、どんなに検査をしても何の病気も見つからなかったんです。お医者さんに「どこも悪くないですよ」と言われるたびに、「そんなわけがない」と思う毎日でした。

もしかすると、今は「ウツ」という診断をされるのかもしれないけど、当時は今ほど簡単に診断がでなかったんですよね。それで40代後半から、詳しくホルモンなんかを調べたら、足りないホルモンがたくさんあることがわかりました。鬱と言われる人の多くも副腎から出ているホルモン不足というのが関係しているらしいんです。それを調べたことで、いろんなことがガラリと変わる体験をしたので、ホルモンバランスも関係していたんだなと思いました。

――ホルモンバランスって大事ですよね。そういうことを調べるのも、自分を大切にするということの一つですよね。

自分を大事にしてみて気づいたのは、ほとんどのことは自分の問題だなということ。子育てを経験して、どんな風に育てても、子どもたちは100%満足しないということに気づいたんです。ものすごく手をかけても、「もっと、放っておいてほしかった」と言われるかもしれないし、放任したら「もっと構ってほしかった」と言われるかもしれない。それならば、私の好きに子育てをしようと思ったんです。そう気づいて、いろいろと自分の好きにしてみたら、体調が戻ってくるという経験をしました。

人の言動に傷つくことも多いけど、癒してくれるのも人

――今回発売された著書の冒頭に、「もう一度生まれ変わるときには自己肯定感が欲しい」ということが書かれています。引田さんは、自己肯定感を高めるというのはどういうことだと考えますか?

自己肯定感というのは、そこに行き着くまでに、悩んで考えて苦しんで出した結果であることが大事だと思っています。自己を肯定している=何をやってもOKというのは違うと思うんです。

自己肯定を高めるためには、自分のやりたくないことを積み重ねるよりは、自分のやりたいことを磨いていったほうが絶対に良いと思うので、足りないことにフォーカスするのではなくて、「私はすごく人が好きだから、接客が向いている」とか、「私はあまり人に会うのが苦手だけど、デスクワークは得意だし好き」と、自分のことを見極めることが必要ですよね。なんでも肯定するというのはちょっと違うと思っていて、そこに努力とか悩みとか学習とかがないと、自己肯定とは違うものなるんじゃないかなと思っています。

――人生の中では、失敗をするという経験も避けては通れません。失敗がない人生はないと思うので、失敗をしたときにどう対処するかということが大事だと思います。引田さんは、失敗をしたときにどう向き合いますか?

なんでそうなったかということを分析して、反省をしますよね。でも、あまり失敗したこと自体にこだわらないかもしれません(笑)。物が捨てられない人が断捨離をして、「やっぱり捨てなければよかった」と後悔している話をよく聞きますが、その時は捨てて良いと思ったのであれば、それは引きずらなくてもいいんじゃないかなと思う性格なんです。

――引きずらないのですね。そんな引田さんが落ち込んだときは、どのように気持ちを高めていくんですか?

やっぱり吐き出しますね。「こんなことがあった」ということを、友人や子どもや夫に聞いてもらいます。それぞれに全く違った角度から聞いてくれるし、そうしているうちに、落ち込んでいた気持ちが薄まります。人の言動に傷つくことも多いんですけど、癒してくれるのも人なんですよね。

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