優しい人ほど生きづらい。落語家であり僧侶・露の団姫さんに学ぶ 「とらわれず、うけいれる 、あきらかにする 」心が楽になる穏やかな生き方【その1】

働く・学ぶ

tuyunomaruko.com
 僧侶・露の団姫さんに学ぶ 「心が楽になる穏やかな生き方」

2022.05.16

落語家でありながら、実は天台宗僧侶でもある露の団姫さんに仏教の教えを取り入れた「とらわれず、うけいれる、あきらめる」生き方について教わる第1回。今回のテーマは日々の暮らしの中でつい「とらわれ」ている自分自身への気づき、です。大人になると周りに気を回しすぎて、つい自分のことが後回しになることも…。そんなクセを簡単なことから見直せば、もっと楽に生きられるはず!

広告

お寺で開催 縁日寄席

道心寺阪神尼崎駅から徒歩10分のところにある道心寺は、団姫さんが住職を務めるお寺です

ツヤツヤお肌で華やかな笑顔が印象的な露の団姫(つゆのまるこ)さん。このお姿を見てわかる通り女性のお坊さん、尼さんです。さまざまなメディアに登場されているので、お顔をご存知の方も多いと思いますが、実は団姫さんは落語家さんでもあります。この日は、自らが開かれたお寺、兵庫県尼崎市(阪神尼崎駅より徒歩10分)の道心寺にて「縁日寄席」が開かれるとお聞きして伺いました。

玄関モダンな建物の2階が本堂と寄席でした。

お寺の印象を覆すモダンなコンクリートの建物に入り、手渡されたのは独演会のチラシに開け★ごま(しょうゆ風味のゴマ)そしてうれしいお菓子付。温かいおもてなしに心がほぐれます。

ひらけごま出演者の噺家さんたちのチラシを眺めながら開演を待つのも
寄席の楽しみのひとつです。

この日の演者は桂弥っこさん、露の瑞さん、笑福亭喬介さん。それぞれが持ち味を生かした大熱演で満席の場内は笑いに包まれました。

露の瑞さん団姫さんと同じく露の一門の露の瑞さん。
キュートなルックスに似合わず?グイグイとお客さんを落語の世界に引き込む大熱演!

落語のお話は、また次回にゆっくりとさせていただくとして、今回は「実は私たちは毎日さまざまな思い込みや世間体にしばられている」というお話しと、その「とらわれ」から解放されるちょっとしたコツを伺いました。

「悟り」とは、幸せに生きること

ぽくぽく出典:www.amazon.co.jp団姫さん作の仏教落語など、具体的な事例をとりあげた自分のココロと向き合う方法が
やさしい語り口調で書かれている、団姫さんの本。

仏教の教えと聞いて、まず思い浮かぶのが「悟り」という言葉。団姫さんの本「ぽくぽくぽく・ちーん 仏の知恵の薬箱(2013年ぷねうま舎)」を読んで「気持ちを楽に毎日機嫌よく過ごすこと」が悟りなのだと知りました。

団姫さんいわゆる「幸せ」な状態が悟りであると思います。と言っても、「なんでも思い通りになる」ことではなくて、心穏やかに「ありのままの自分」でいられることが大切です。

大人になると「ありのまま」が難しい

蹲心の中は、水のような透明度を保てなくなることが多々ありますね。

「ありのままの自分」でいることは、大人になるにつれて難しくなるようです。なぜなら、世の中にはあらゆる立場の人たちがいて、人々はみんな多様な価値観や思いを持っている…ということに気づいてしまうから。

つい、大丈夫なフリをしていませんか?

大丈夫出典:www.ac-illust.com辛いとき、平気な顔をしていませんか?
ありのままの自分の声に耳を傾けて、思いを周りに伝える練習をしましょう。

団姫さん:道心寺では対面で悩み相談を受けていますが、つくづく「ありのままの自分」で生きることは難しいことなんだな、と感じます。例えば、事件や事故に巻き込まれてしまい、実際にご苦労をされている方が「この件は済んでしまったことなので、私はもういいんです。でも他の方が同じ目に遭ったら気の毒だと思って、警察に届けました。」と言われたりします。被害者なんですから、届けたり訴えたりするのは当然なのに「私は大丈夫」と言ってしまう。こんな方には「もっと自分を大切にして!まずは、あなたが救われないといけないんですよ。」とお話します。

ハート出典:www.ac-illust.comもっと自分の心の声に耳を傾けて…。

団姫さんいわく「周りに心配をかけてはいけない。」と思う気持ちが強すぎて、自分の心の声に蓋をして、頑張ってしまう人が多いとのことでした。そして、そのことを「とらわれ」と表現されました。

好きなものをオーダーしてみよう

カフェ出典:www.photo-ac.comカフェのオーダーぐらいは、自分で本当に食べたいもの、飲みたいものを注文できるように!

団姫さん「気が利く」ことが良い、ということにとらわれている人が多いように思います。…人の顔色を伺いすぎる人が多いですね。例えば仕事関係の人とお茶をするとき「何にされますか?」とまず相手に聞くことは良いことですが、「コーヒーでいいですか?」と、先回りをしすぎていませんか?
本人は気を利かせているつもりでも、相手にとっては急かされているような気持ちになり、負担になっているかもしれません。そればかりか、自分がオーダーをすれば、「では、私も同じもので」と、あなたが自分と同じオーダーをすることが分かってしまっているため、当たり障りのないものを選ばせてしまう可能性もあります。

コーヒー出典:www.photo-ac.com軽やかな意思表示で、空気が和むことも…。

結果、本当はお互いに紅茶が好きなのに、好きでもないコーヒーをすすりあっている…なんていうこともあります。だからこそ、自分の意思表示もできる軽やかさが大切です。「今日はお昼を食べそびれたので何か食べてもいいですか?」とか「ケーキも気になりますね。」と、自分の状況や好みをこちらが率直に話した方が、相手も自分のことを話しやすいかもしれません。気持ちをオープンにして接すると、自分も無理せず、その場を和ませることにもつながりそうです。「気が利く」は相手に従属する姿勢を見せることでもなければ、自分をアピールする手段でもありません。相手に心地よく過ごしてもらうことです。まず相手のことから…がクセになっている人は自分の好きなものをオーダーすることから始めてください。

まずは自分の機嫌がいいこと、が大前提

すまいる出典:www.photo-ac.com人のことばかりに目が行くのは、世間の評価を欲しているから?

団姫さん:仏教の教えの中に「利他行(りたぎょう)」という言葉があります。これは「自分のことよりも他人のことを優先する行」のことを言いますが、実は、他人のことよりもまずは自分自身が満たされ、機嫌がいい状態でいることが大前提なんです。誰かのために働くことが好きな方はたくさんおられますが、それよりも「自分自身が幸せでいること」が優先されるべきだと理解してもらいたいですね。他人のことばかり気になるのは、もしかすると「周りに評価されたい!」という気持ちのあらわれかもしれません。「誰かに尊敬されたい」と理想を追ってはいるものの、自分の機嫌を取ることができず、内面では自己肯定感が低い人も多いんじゃないかなと思います。これでは幸せになれません。どんなときでも自分を大切にするための行動をとってくださいね。誰かの役に立つのは、それができてからです。

お話を伺ったのは…露の団姫(つゆのまるこ)さん

まるこさん2「今日の朝食はなんでしたか?」とお聞きしたら、
「ええ~っと、ビスケットです。ケンタッキービスケットのような…」とこの笑顔!
自然体の団姫さんは、ごく普通の小学生ママの一面もお持ちです。

1986年生まれ。兵庫県尼崎市在住。
落語の創始者、初代・露の五郎兵衛が僧侶であり、説法をおもしろおかしく話したことが落語の起源と知り、高校卒業を機に初代・露の五郎兵衛の流れを組む露の団四郎へ入門。
2011年、天台宗で得度。2012年、比叡山行院で四度加行を受け正式な天台僧となる。
年間250席以上の高座と仏教のPRを両立し全国を奔走する異色の落語家。

広告

著者

みやむらけいこ

みやむらけいこ

ライター歴20年。「あなたに逢いに行きます」取材ではなく出会い、インタビューではなく会話。わかりやすい言葉で丁寧に「ひと」を伝えます。好きなものは、サーフィンと歌舞伎、主食はチョコレート。#人生はチョコレート

気になるタグをチェック!

saitaとは
広告