教えてくれたのは……中澤佑介(なかざわゆうすけ)先生
金沢医科大学医学部医学科卒業。
「患者さんに近い立場で専門的医療を提供したい」という思いで2021年、なかざわ腎泌尿器科クリニックを開設。2023年6月、JR金沢駅前にメンズヘルスクリニック(Gran Clinic)を開院。
身体にうれしい効果が期待できる「タケノコ」
シャキッとした食感で、炊き込みご飯や炒め物、煮物など、食卓で出番が多いタケノコ。
食べ過ぎない場合には、身体にうれしい効果が期待できるそうです。食べることで、どのようなメリットがあるのでしょうか?
中澤先生「タケノコの主要な栄養素は、独特な食感のもとになる食物繊維です。
不溶性食物繊維は、腸内環境を整える効果があり、便秘解消につながります。また、コレステロールの吸収や血糖値の上昇を抑える効果も期待されます。」
食べ過ぎると「尿路結石」の要因に
一方で、気をつけておきたいのが、タケノコに多く含まれる「シュウ酸カルシウム」とのこと。
この成分は、尿路結石を発生させる確率を高めてしまうことが考えられるそうです。
中澤先生「タケノコには、尿路結石症の原因で最も多いシュウ酸カルシウム結石の構成成分であるシュウ酸が多く含まれています。
シュウ酸はジカルボン酸(COOH-COOH)という構造式の物質です。尿中に排泄されるシュウ酸は、尿路結石症のリスクファクターになります。その約70%は食事由来のシュウ酸とされているので、食事の工夫と対策が必要です。」
尿路結石になると、どのような症状がある?
経験者は「七転八倒するほどの激痛を感じた」と口をそろえる尿路結石。
尿路結石になると、どのような症状があらわれるのか、治療方法も併せて教えていただきました。
中澤先生「結石ができてしまった場合、腰背部痛といった背中の痛み、血尿が症状として挙げられます。また、結石が尿管に嵌頓(かんとん:結石が引っ掛かり留まること)すると、おしっこの流れが悪くなり、吐気や場合によっては発熱することもあります。
治療方法は尿管結石の大きさや部位により治療方針が決定されますが、結石が嵌頓した場合、おしっこの流れを確保するための処置が必要になることがあります。
それ以外の場合では、基本的に8mm以下の結石は自然排石することが多いため、内服加療による治療が選択されることが多いです。1cm以上の場合は、観血的治療(内視鏡治療、衝撃波治療)を行います。
尿路結石症診療ガイドライン2013年版によると男女比は2.4:1で、1965年頃からほぼ一定であり、男性に多い疾患とされています。」
食べる量と頻度というより、食事の工夫と対策が大切
では、タケノコを食べる量や頻度は、どの程度なら結石ができる心配がないのでしょうか?
中澤先生「具体的にどのくらいタケノコを摂取すると尿路結石を形成するという指標はなく、個人差があると考えられます。
尿路結石は、尿中の結石成分が高濃度となり、結晶を形成して小さな結晶が凝集し、大きく成長することで形成されます。尿中に結晶が発生するためには一定期間、結石成分が過飽和状態になることが不可欠なので、尿が過飽和な状態でなければ尿路結石は発生しないと考えられます。過飽和状態にならないために水を飲むことなどが重要です。」
タケノコを食べる際には、2つの対策を
食べる量と頻度というよりは「食事の工夫と対策が大切になる」と、中澤先生はおっしゃいます。
そこで、タケノコを食べる際に意識しておきたい2つの対策を教えていただきました。
1.カルシウムを同時に摂取する
中澤先生「シュウ酸を含む食品を摂取するときには、カルシウムを同時に摂取するように心がけてほしいです。たとえば、タケノコの場合にはカツオ節を合わせるなどが手軽な方法で効果的だと言えます。
摂取したシュウ酸とカルシウムが腎臓に到達する前に胃と腸管内で結合することで、尿路結石が形成されにくくなります。」
2.食事の前後にコップ一杯の水を飲む
中澤先生「シュウ酸を多く含む食品を摂取する場合は食後の前後にコップ一杯の水を飲み、シュウ酸を洗い流すように心がけましょう。」
体質などから、再発することも多いと言われる尿路結石。どちらの対策も難しいことではないので、予防のために意識してみてはいかがでしょうか。