集中力が切れてきたら、キリが悪いところでやめる
「集中力を高めるのに環境に働きかけるのはわかったけれど、そもそも集中力が続かないんです......」
そんな人もいるかもしれませんね。集中力の持続する時間は、人それぞれです。15分単位で集中と休憩を繰り返して成果をあげる人もいれば、10時間ぶっ続けで作品をつくるような芸術家もいます。後者の場合は、ドーパミンなどの快楽物質がかなり出ていなければ無理だとは思いますが、わたしはあまり時間で区切るのではなく、人それぞれ集中力が切れるまでやればいいと考えています。
ただし、ここでひとつ覚えておきたいコツがあります。それは、集中力が切れかけたときに、キリが悪いところでやめること。
よく、「キリがいいところまではやっておこう」とがんばる人がいますが、これはかえって逆効果です。なぜなら、やり切ってしまうと再開するときに新しいことに取り組むことになり、自然とおっくうになってしまうからです。でも、キリの悪いところでやめると、脳がいわばパソコンのスリープ状態となり、作業を再開しやすくなるのです。しかも、脳はスリープ状態でも無意識で働いているため、休憩中に良いアイデアが浮かぶこともあります。
これは専門的には、「ツァイガルニク効果」と呼ばれます。人は未達成のことや中断している出来事のほうをよく覚えているという現象で、旧ソ連の心理学者ブルーマ・ツァイガルニクが実験で示しました。
つまり、仕事でつくる企画書でも、受験や資格の勉強でも、とにかくキリの悪いところで中断するのがポイント。わたしはこれを、「学校で教えてもいいのでは」と思うほど効果的な方法だと考えています。
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中野信子(なかの・のぶこ)
脳科学者、医学博士、認知科学者。横浜市立大学、東日本国際大学などで教鞭を執る。脳科学や心理学をテーマに研究や執筆活動を行うほか、その知見を生かしてテレビや雑誌でも活躍。社会問題やビジネス、カルチャーなど、幅広い分野を、科学の視点で読み解く語り口が人気。
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