「恋愛できない」のは、脳が合理的にブレーキをかけているから
少子化が叫ばれて久しいですが、最近は社会的、経済的事情から結婚をしなかったり、子どもを産まない選択をしたりする人が増えています。そもそも仕事が忙しいことや、生活するのに精いっぱいで、恋愛自体が二の次になっている事情もあることでしょう。
もちろん、そうした選択は尊重すべきものです。ただ、生物の生殖本能という観点から考えると、気になる相手に恋をしてしまうのがふつうの状態ともいえます。
そうなっていないのは、脳が本能にブレーキをかけているわけです。
この働きを担うのが、脳の前頭前皮質にある「DLPFC(背外側《はいがいそく》前頭前野)」という部分です。この部分は、計画性、論理性、合理性などを司(つかさど)り、いわゆる「知能」が高い人ほど、この部分が働きやすくなります。
つまり、冷静に相手を見極めるぶんには良いのですが、DLPFCの働きが過剰になると、せっかく相手に愛情を感じたとしても、すぐにその気持ちを自分で否定しかねないのです。
「好きなタイプだけど、フリーランスは将来危ないな」
「気が合うけれど、彼は社交的だから遊ばれるかもな」
そうして自分では賢明な判断をしているつもりでも、結果的に出会いの機会を逃していることがあります。最近では、将来産む子どもを優秀にするために優秀な遺伝子を選ぶなど、結婚や出産をより戦略的に考える人も増えています。
繰り返しますが、そうした選択を否定しているのではありません。ただ、そうした振る舞いによって、かえって愛情を共有する機会が減っていることが、現在の少子化の背景のひとつにあると思うのです。
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中野信子(なかの・のぶこ)
脳科学者、医学博士、認知科学者。横浜市立大学、東日本国際大学などで教鞭を執る。脳科学や心理学をテーマに研究や執筆活動を行うほか、その知見を生かしてテレビや雑誌でも活躍。社会問題やビジネス、カルチャーなど、幅広い分野を、科学の視点で読み解く語り口が人気。
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