きゅうりは栄養がない? 食べるとビタミンCを壊すって本当?
【「世界で一番、栄養がない野菜」はウソ】
きゅうりは「世界で一番、栄養がない野菜」なんてことを聞いたことはありませんか? じつはこの噂、ギネス世界記録と関係があるんです。確かに、ギネス世界記録には、きゅうりがある記録名で登録されています。それは、「Least calorific fruit」というもの。日本語に訳すと、「カロリー(発熱量)の最も低い果実」。これが「世界で一番、栄養がない野菜」と誤って解釈され、世間に広まってしまったようです。
カロリーも、栄養の一つではありますが、ビタミンなど、その他の栄養については触れられていません。しかも、「果実」であって、「野菜」としての記録ではないのです。
きゅうりは可食部100gあたり14キロカロリーと、低カロリーですが、だからといって、その他の栄養がないわけではありません。
【食べるとビタミンCが壊れる?】
きゅうりに含まれる「アスコルビナーゼ」は、ビタミンCを破壊するといわれていました。しかし、最近の研究により、破壊するのではなく、還元型ビタミンCから酸化型ビタミンCに変化させることが分かってきたようです。
体内では、ビタミンCを必要に応じて、還元型から酸化型に変換させたり、酸化型から還元型に戻したりしています。
つまり、還元型でも酸化型でもビタミンCであり、その効果に変わりはないようです。
きゅうりの成分、栄養素
■カリウム
体内の余分な塩分を排出する働きがあります。高血圧の予防や、むくみの解消に効果的です。
また、夏バテの原因の一つに、カリウム不足があげられます。きゅうりは95%が水分といわれているので、夏場のカリウム、水分の補給源としてもおすすめです。
■βカロテン
きゅうりの皮に含まれています。βカロテンは体内でビタミンAに変換し、皮膚や粘膜を丈夫にするほか、視力の維持や、がん予防、免疫力の強化、アンチエイジングなど、健康を保つために重要な働きをします。
■ビタミンC
強い抗酸化作用を持ち、生活習慣病や老化の予防、免疫力のアップにも有効です。
熱や水に弱く、体内に貯蔵することもできないので、こまめに摂取する必要があります。
■シリカ
肌、爪、毛髪の老化防止や修復作用があることが分かり、注目されています。そのため、肌のパックにも使われています。
きゅうりにはダイエット効果がある!?
【きゅうりはダイエット効果もある!?】
きゅうりに含まれる「ホスホリパーゼ」という酵素には、体内の脂肪の分解を助ける効果があると報告されています。ホスホリパーゼは熱に弱いですが、すりおろすと細胞膜が壊れて、その働きが促進されるといわれています。大根おろしも時間が経つと酵素の力が弱まりますが、きゅうりのすりおろしも同じ。食べる直前にすりおろせば、ダイエットにも効果が期待できそうです。
おいしく食べるための切り方、保存法
【切り方】
一般的に、野菜は繊維にそって切ると、歯ごたえがよくなり、繊維に対して直角に切ると、噛みやすくなります。きゅうりは種とそれ以外の部分で食感が違うため、繊維にそって切ると、食感にばらつきが出てしまいます。そこで、斜めに切ることで、食感がよくなります。
また、きゅうりの両端は苦味があるので、1cmほど切り落とし、端の部分の皮もむきます。
・輪切り
繊維に対して直角に切ります。同じ厚さに切ると、味わいが均一になります。サラダや和え物などに向いています。
・斜め薄切り
繊維に対して斜めに切ります。角度をつけ、薄く切るとなめらかな食感に。サラダや炒め物などに向きます。
・千切り
斜め薄切りにしてから、ずらして重ね、細く切ります。サラダなどに向きます。
・乱切り
手前に90度回しながら、斜めに切っていきます。炒め物などに向きます。
・蛇腹切り
2本の割り箸で挟むようにきゅうりを置きます。繊維に対して直角に、包丁が割り箸にあたるまで包丁を入れます。端から細かく切り、上から押して蛇腹に開けば完成。酢の物などに利用します。
【保存法】
ラップに包むかビニール袋に入れて口を閉じ、野菜室に立てて保存し、4〜5日で使い切ります。低温に弱く、冷やしすぎるとビタミンCが壊れるので、10〜15度で保存しましょう。
【選び方】
重みとハリがあり、濃い緑色のものを選びます。多少曲がっていてもOKですが、太さができるだけ均一のものがよいでしょう。イボがあるものは、イボがとがっている方が新鮮です。
きゅうりの食べ方と注意点
【冷凍すると】
冷凍はできますが、水分が多い野菜なので、塩などで水分を抜いてから冷凍するとよいでしょう。
【食べ過ぎると】
体が冷え、それに伴い腹痛や下痢が起こる可能性があります。
【妊婦が食べると】
特に問題はありませんが、食べすぎは体を冷やしてしまいますし、塩や濃い調味料をつけて食べると、妊娠高血圧症候群を引き起こす可能性が高まるので注意が必要です。
きゅうりを使った世界の料理、日本の料理
【世界の料理、日本の料理】
スペインの「ガスパチョ」は、野菜の冷製スープ。地方によっては、きゅうりをメインにヨーグルトを加えたものが食べられています。
ブルガリアの「タラトール」は、刻んだきゅうりとヨーグルトで作る伝統料理。また、クリーム分の濃いヨーグルトとくるみなどを合わせたサラダ「スネジャンカ」(白雪姫という意味)もあります。
日本国内でも、生産地である宮崎県では「冷や汁」がよく食べられます。魚のすり身にみそ、ごまを加えて湯を混ぜ、きゅうりの輪切りと薬味を加えます。熱いご飯にかけて食べると美味です。
栄養がなく、食べてもあまり意味がないと思われていたきゅうりが、栄養もしっかりあってダイエットにも効果的とは、驚きです。この夏は、きゅうりをさらにたくさん食べたいですね。
監修/吉沼弓美子(管理栄養士)
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