他者にコントロールされないためにも、なるべく「格差」のせいにしない
現在は、以前にも増して「格差社会」といわれます。
経済格差や世代間格差をはじめ、学歴、知識、地域、男女間......など、この世には本当にたくさんの格差が存在します。むしろ、格差がない社会など存在しないでしょう。
でも、だからといって、「格差は許せない」「この格差社会をなんとかしろ!」と声高に叫ぶ学者や政治家、文化人の一方的な言動にはあまり賛同する気になれません。もちろんすべてではないですが、そのような発言をすることで、大衆の味方であることを装い、ビジネスにしていることもあるからです。
あまり深く考えずに、ただ善意から「格差反対」を声高に唱えているパターンもあるかもしれません。
いずれにしてもわたしは、本書を読んでいただいている方には、そうした他者の言動にコントロールされないためにも、なるべく格差のせいにしない生き方をしてほしいなと思います。
じつは、他者の言動にコントロールされると、「心が楽になる」という側面があります。そうして楽なほうへ楽なほうへと気持ちが流れていくことで、本当は自分にあったはずの未知なる可能性を閉ざすことにもなりかねないのです。
生まれてきた時代や、いま置かれている立場を嘆いていても、良いことはひとつもありません。むしろ自分の可能性を奪うという意味では、有害な考え方といえるでしょう。
格差のせいにすれば楽かもしれない。でも、格差のせいにしたら、そこで終わってしまうのです。
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中野信子(なかの・のぶこ)
脳科学者、医学博士、認知科学者。横浜市立大学、東日本国際大学などで教鞭を執る。脳科学や心理学をテーマに研究や執筆活動を行うほか、その知見を生かしてテレビや雑誌でも活躍。社会問題やビジネス、カルチャーなど、幅広い分野を、科学の視点で読み解く語り口が人気。
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