「妙齢の婦人」は何歳くらいのこと?
中年以上の女性の年齢を、曖昧かつ失礼のないように表現するときに使われることのある「妙齢」という言葉。実際に自分よりも年上の女性の方に対し「妙齢の婦人」という使い方をしていませんか?
「でも国語辞典を引くと『女性のうら若い年ごろ』となっているんですよ」(岩佐さん)
となると、普段の使い方は、間違っていることになります。
微妙な年齢が、本当の意味
「僕が想像するに、『若いというには微妙な年齢』と思ってしまうから、間違った使い方が発生してるのかもしれません」(岩佐さん)
では実際に「妙」の文字を辞書で引いてみると……(下記参照)「若い」という文言はありません。「日本では『妙』単独では、なせか『わかい』意味が失われ、そして今『妙齢』からも若いという意味が希薄になってきているのかもしれません」(岩佐さん)。
「日本国語大辞典」(第2版)より
妙……
①(形動)きわめてすぐれていること。人知ではかり知ることができないほどすぐれていること。言語でいい表せないほどすぐれていること。また、そのさま。
②(形動)不思議なこと。奇妙なこと。奇蹟。また、そのさま。
③(形動)物事を喜んだり、ほめたりはやしたてたりするときにいう近世の流行語。すてき。すばらしいこと。いいこと。また、そのさま。
70代までが妙齢!?
下記、毎日新聞校閲センターのウェブアンケートによると、「妙齢」の使い方の実態が見えてきました。中年以上なら「妙齢」と言われて喜ぶ人は多いでしょうが、本当に若い人が言われたら、少し微妙です。
Q「妙齢の女性といったら、どの年ごろをイメージしますか?」
A
もう若いとは言えないぐらいの年ごろ……56.4%
まだ若い年ごろ……33.9%
「2019年に発行された『大辞林』(第4版)で見ると『重ねた年齢に見合う風格や魅力の感じられること。』と記載されています」(岩佐さん)
岩佐さんが、こっそり教えてくれたのですが、辞書には『50代から70代の妙齢の女性の集まり』という続きがあるそうで……幅広い年齢としての記述があるので、使う際には注意が必要ですね。
「教えてくれたのは」 毎日新聞社校閲センター前部長 岩佐義樹さん
1963年、広島県呉市生まれ。早稲田大学第1文学部卒業後、毎日新聞社に校閲記者として入社。用語委員会用語幹事などを務める、日本語のスペシャリスト。毎日新聞校閲センター運営のウェブサイト「毎日ことば」や「サンデー毎日」の連載コラム「校閲至極」などにて執筆中。
『失礼な日本語』
著/岩佐 義樹
ポプラ社
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