「集中力」を鍛えるのではなく、集中力を乱さない環境をつくって高めていく
集中力というものを、がんばって身につけるべき能力と考えるから苦しくなるのです。それは、脳の機能・システムに過ぎません。だからこそ、わたしたちはそれを別の方向からうまくコントロールできるのです。
思えば、わたしたちの身のまわりは、集中力を散漫にさせるものごとがあふれています。その典型は、SNSやメール、アプリなどの通知機能でしょう。それらは、通知やアラート機能で注意をうながしてくるわけですから、これでは集中しろといわれてもどだい無理な話。
ほかにも、ネット上の情報をはじめ、テレビや音楽、街を歩くと目に入る広告......と枚挙にいとまがありません。人の集中力を乱す(対象に惹きつける)のが、うまくいくビジネスの必要条件のひとつなので、その強力な誘惑に無防備な状態で対抗するのは至難の業(わざ)でしょう。
そこで、まずわたしたちにできるのは、スマホやテレビの電源を切ること。たとえば、「19時からはおやすみモードにする」と決めて、習慣化する。すると、次第にまわりの人も、「あの人は夜つながらないから」とわかってくれるようになります。「それを尊重してくれない人とはつき合わない」と、割り切るくらいでいいかもしれません。
ほかにも、周囲の雑音、部屋の温度、椅子の座り心地、目に入る景色など、人によって集中力が乱れる条件はさまざま。完全な無音より、静かな音があるほうが集中できる人もいるでしょう。でも、集中力を高めるためにやるべきことは、基本的に変わりません。
大切なのは、集中力を乱さない環境をつくることなのです。
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中野信子(なかの・のぶこ)
脳科学者、医学博士、認知科学者。横浜市立大学、東日本国際大学などで教鞭を執る。脳科学や心理学をテーマに研究や執筆活動を行うほか、その知見を生かしてテレビや雑誌でも活躍。社会問題やビジネス、カルチャーなど、幅広い分野を、科学の視点で読み解く語り口が人気。
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