コロナ禍、食糧難を想定して子どもたちと買い物ゲームをしてみた話。

ライフスタイル

2020.09.20

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「お店に残ってるもので、主食になるのはどれだ?」

グルグルと悪い想像ばかりを巡らせている間に、子どもたちが到着した。

「やばい! マジで何にもない!! やっば!」

語彙力の貧困な中2息子は、精一杯の驚きを表現した。ビビりの高2娘は「すごいねえ」と見回しながら不安を感じたらしい。私のシャツをつかんで幼い子どものようにまとわりついてくる。

よく考えたら、この子たちはもうあと数年で巣立っていく。将来、一人でいるときに、こんな状況に遭遇することもあるかもしれない。 

「お店に残ってるもので、主食になるのはどれだ? 炭水化物やデンプンだよ」

子どもたちに探させると数分後、乾燥豆、春雨、お麩などを集めてきた。使いづらそうに見えるのか、乾物の棚はまだ大量に売れ残っていたのだ。豆は炭水化物の含有量が米の約6割と豊富なうえ、たんぱく質も多く含む優秀な食材。春雨は緑豆・じゃがいも・さつまいものデンプンから、お麩は小麦粉からできている。どれも栄養的には主食になりうるし、実際に主食としている国も多い。「このへんの食材は、次の品不足の時にも売れ残る確率が高いから。これでごはんになるって知っていれば、生きていけるからね」と選んできた子どもたちを褒めた。

なじみがある春雨や、パンの代わりにもなると知ってるお麩を選んだのはまだしも、豆を選んだのには感心した。聞くと、小学校の給食で「豆は栄養がある」と教わったからとのこと。あと「メキシコ料理で、豆がごはんみたいに添えられてたから」「台湾で、豆がのったかき氷食べたらお腹いっぱいになったから」。台湾のかき氷には確かに、小豆や落花生、緑豆、金時豆などの甘煮がどっさりとのっていた。かき氷というよりは冷たい豆を食べてるような感覚のスイーツで、食後のデザートとしてはとても食べられないくらいボリュームがある。台湾にみんなで行ったのなんてもう5年も前なのにちゃんと覚えているものだなあ、と驚いた。メキシコ料理も食べさせた甲斐があったよ。いろいろな食べ方を知っていることは、それだけで生きる知恵になる。親として、子どもたちの成長ぶりにちょっとした満足感を覚えながら、レジを待つ長い列の最後尾に3人で並んだ。

面白いことに、この日を境に子どもたちの食欲は少しずつ落ちていった。食べすぎの3食から、普通の3食へ。徐々に量は減り、日によっては2食になることさえ出てきた。コロナ禍の自粛生活で運動量が減りカロリーがさほど必要なくなったのも大きな理由だろうけれど、この日いつもと違う雰囲気のスーパーで、自分たちの食べものを選べたということが、どこかで自信と安心感に繋がったのかもしれない。

プロフィール:田内しょうこ
「働くママの時短おさんどん料理」「育休復帰のためのキッチンづくり」「忙しいワーキングマザーのための料理」「子育て料理」をテーマに、書籍や雑誌、ウェブサイトで発信。出張教室やセミナーのほか、食と子育て関連の情報発信を行う。著書に『時短料理のきほん』(草思社)、『働くおうちの親子ごはん』(英治出版)、『「今日も、ごはん作らなきゃ」のため息がふっとぶ本』(主婦の友)などがある。
ブログ:働くおうちの親子ごはん!

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