体調不良ゼロからのがん発覚!だから「伝えたいこと」がある。
くま子さんは現在41歳。関東近郊の街に、同い年の夫と小学1年生の娘さんと3人で暮らしています。これまで大きな病気や手術など経験したことがなかったという彼女が、乳がんと診断されたのは2020年の8月のこと。現在は手術も成功し放射線治療を受けています。そんなくま子さんは、告知を受けたその日からブログを続けています。そこには「がんと診断され、闘病する中ではじめて知ったことや、知っておきたかったこと」「これからがんと診断されるかもしれない人に、知っておいて欲しいこと」が記されています。
痛みもしこりもなかった、まさかの発見
ーーくま子さんにお話を伺うにあたって、去年の夏の終わりから書かれているブログを読ませていただきました。新型コロナの感染が拡大し、ただでさえ幼稚園児のお子さんを抱えて、日々不安な中で、ご自身の経験を読み手が「知りたい」ところにしっかりピントを合わせて書かれていますよね。
1つ1つは短いけれど、胸に響く言葉がシンプルで、とても骨の太い文章を書かれているな、と感じました。ブログにも書かれていましたが、がんと診断されたのは「健康診断」がきっかけだったそうですね。
くま子さん、以下、くま子:私の場合、痛みやしこりを見つけていたわけでは無くて、偶然、久しぶりに夫と一緒に健康診断に行くことになり、ふと思いついてマンモグラフィーを追加したのがきっかけでがんが見つかりました。だるいとか気分が悪いなどの体調不良もなく、むしろ早朝に1時間のランニングで10キロを走っていたので、体力には自信があったんです。こんな私でも検査をしたら、がんが見つかった……ということは、まだ自分の身体の中にがんがあることに気づかずにいる人が、私の他にもきっとたくさんいるはず! と思いました。
ーー1時間に10キロも走ってたんですか?私も少しだけ走るんですけど、その距離を1時間で走ったことは無いです……マラソンにも挑戦できるんじゃないですか?
くま子:実は、密かにホノルルマラソンに出場するのが夢なんです(笑)。
ーーそんなに元気な方が病気だなんて、語彙が乏しくて申し訳ないのですが本当に「まさか!」ですよね 。
くま子:あ、そう……がんが見つかったときの気持ちは、文字にするとありふれてしまうんですけど、本当に「まさか!」だったんですよ。その時に「がんになっても全然気づかないものなんだ」ということも初めて知りましたし、同じような「まさか!」を味わう人がたくさんいるんじゃないかな、と気づきました。なのでそんな人たちに「1日でも早く検査に行って治してほしい」と思ったことが、このブログの出発点になっています。だから、心情を吐き出すとか、物語にする気持ちは無くて、ただひたすら「伝えたいメッセージ」があるから、ピントが合っていると思ってもらえてるのかもしれませんね。
ーーちなみに、今も走っているんですか?
くま子:今(2021年5月現在)は放射線治療の真っ最中なので走っていませんが、少し前にゆっくりペースでランニングに復帰したんですよ。やっぱり走ると風が当たるだけで気持ちいいんです。全力で景色や空気を味わえるというか……気分がすっきりと晴れますね。9年後、50歳の記念にホノルルマラソンで走ろうと思ってるんです(笑)。
5分で終わる?!意外と知らない!「放射線治療」のこと
ーー私は嫌なことは「水に流す」タイプで(笑)海やお風呂とかに入るとすっきりするんですけど、くま子さんは「風に飛ばす」タイプですか。今は放射線治療をされているんですね?
くま子:はい、25回の予定で毎日病院で放射線治療を受けています。決まった時間に受けるので、子どものことを含めスケジュールを考えておかなくてはいけなくて、イレギュラーの多い子育ての時期にはなかなか大変なこともありますね。でも、治療の時間は短いんです。病院によるのかもしれませんが、受付から会計までで20分もかかりません。治療そのものは5分程度で終わります。
ーー放射線治療という言葉は聞いたことがあっても「5分で終わる」と知っている人は、きっとあまりいませんよね。くま子さんのブログには、抗がん剤治療にしても、手術のことにしても、読み手が知りたい情報が的確に書かれているので、キャッチしやすくて安心できます。やはり「知らない」ことは漠然と怖いと感じますものね。
くま子:私は抗がん剤治療も手術も経験しました。でも治療について1つ1つ自分で考える必要はありません。がんの疑いが見つかった時点から、詳しい検査のことや治療法、手術、入院、それにウィッグのことまで、全部ひとりひとりのためにカスタマイズされたプランが作られます。その都度、治療については説明と同時に冊子が渡されるので、診察の説明時に十分理解できなくても自宅でゆっくり読むことができます。つまり「すでに流れができている」ので、そこに乗るという感じですね。看護師さんも疑問や不安がないか、いつもヒアリングしてくれますし、そこは心配しなくて大丈夫ですよ。
大半のことは「流れに乗って」いい。だけど、ここだけは…「考えてほしい」ポイント
ーーなるほど、やみくもに「不安」と戦うのではなくて、流れの中で1つ1つをクリアしていくという感じでしょうか。その部分が治療だったり副作用に関することなどですね。では、逆に「ここはしっかり考えて自分自身で決めてほしい」という部分は?
くま子:やはり主治医の先生をどうするか、という問題はあるでしょうね。私は検査結果を見て告知をしてくれた先生のことを直感で選びましたが、話しにくかったり相性の部分でしんどい部分がある場合は別の病院にかかるなど、いわゆるセカンドオピニオンを求めても構わないと思います。デリケートな問題ですし、シンプルに人間対人間の相性とか、うまく理由が掴めない勘のようなものも働くので、少しでも「違うな」と思ったら、話しやすく信頼のできる先生と出会える方法を考えるといいですね。あと、現実的な話で言うと、子どもがいると遠い病院に通うのは大変かもしれません。いずれにせよ「自分が納得して」決めるべきです。親戚や友だちから紹介してもらったり、評判のいいお医者さんでも、自分との相性が合うとは限りませんし、例えば通うのに往復何時間もかかってしまうと、治療をしながら普通の生活を送ることが難しくなるかもしれませんしね。
「見つかったら怖いからマンモグラフィー検査を受けない」は本末転倒!
ーー評判が良くても、自分にとってはどうか?ということですね。ところで、最初に「久しぶりに健康診断を受けた」と言われましたが、お勤めをされていた時には、毎年受けておられたんですよね。健康診断自体は実際に何年くらいのブランクがありましたか?
くま子:健康診断は5年、マンモグラフィーは7年空いていました。夫が自営業なので、国民健康保険の健康診断の通知が来て「あ、受けてみようかな」と思いました。ちょうど40歳ということで、公費でマンモグラフィーも受けられるとの記載があったので「じゃあそれも」とプラスして。
ーーそう言えば、40代になると急に「来週マンモだ」「先月誕生日だったから、乳がん検診に行ってきた」とママ友の中で話題になりますね。一方「一度も受けたことが無い」「受けたことはあるけど、何か見つかるのが怖くて受けなくなった」という人もいます。
くま子:面倒に思う気持ちも、見つかったら怖い……という気持ちもとてもわかります。私もそうでした。でも、もしものことを考えると、1日でも早い方が治療の選択肢も多くなるし、体への負担も違う場合が多いです。怖い気持ちはわかるけど、後悔はしてほしくないんです。「私は大丈夫!」と思い込まないで、ぜひ検診を受けて欲しいと思います。実際に患者になってみると、がんが見つかることよりも、何の根拠もない「大丈夫」という思い込みが一番怖いと気づきます。「今日、マンモグラフィーの検査を受けました」というブログやSNSにあげる話題の1つ、のつもりでもいいと思います。必ず、がん検診をひとりでも多くの人に受けてもらいたいんです。
※ 記事内の情報は、すべてくま子さん自身の体験や個人の感想によるものです。
くま子さんプロフィール
ショートヘア(ウィッグ!)が似合う、キュートな笑顔と真っすぐな瞳が印象的な1女のママ。
1980年生まれ 東京都出身 神奈川在住 2011年に結婚、2015年には長女を出産。
夫とともに鍼灸院を経営 趣味は朝ランニング、料理、食べる事。フットケアセラピスト、ネイリスト、食育アドバイザー、スポーツフードアドバイザーなどの資格を持つ傍ら、ヨガインストラクターになるべく現在勉強中!
がん治療のあれこれを綴ったブログには、子育て中のエピソードや家族の話題、大好きな「おいしいもの」の写真がずらりと並ぶ。