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人生のターニングポイントになる【乳がん】サバイバーに寄り添う活動から見えてきたものとは

心と体

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 人生のターニングポイントになる【乳がん】サバイバーに寄り添う活動から見えてきたものとは

2020.11.02

毎年10月は世界的な乳がん啓発月間。今年もさまざまなところで乳がんの早期発見につながる活動が行われています。「ピンクリボンキャンペーン」として、東京タワーや東京スカイツリーがピンク色に照らされるのもその活動のひとつ。現在、日本では40歳以上の女性には2年に1度の乳がん検診が推奨されています。日本人女性の乳がん発症率は9人に1人とされていて、40歳を過ぎれば、自分自身ががんサバイバーになる確率は上がります。そこで今回は、乳がんサバイバーに寄り添う活動を行っているNPO法人「ビーシーアンドミー」の理事長・神農晶子さんに、乳がんサバイバーたちの本当の姿についてお話を聞きました。

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乳がんをきっかけに、前向きに新しい人生を歩んでいる人がいることを知ってほしい

――乳がん情報サイト「Breast Cancer and Me」を拝見すると、「新しい私」や「自分らしさ」という言葉が並んでいて、これまでの「乳がんになったら……」という暗いイメージが大きく変わりました。

乳がんは、怖いものではないんです。これまで多くの乳がんサバイバーの方たちをサポートしてきましたが、乳がんは早期発見、早期治療をすれば5年生存率は92%以上(※1)。多くの方が、乳がんになったことをきっかけに人生を見つめなおし、新たな人生を手に入れています。

――どうしてもネガティブな想像をしてしまいがちなのですが、乳がんをきっかけに人生を見つめなおすというのはどういうことなのでしょうか。

乳がんは、現役世代で発症する方が多いです。まさに、女性のライフステージのど真ん中。仕事でキャリアを確立したタイミングや子育て真っただ中、中には親の介護がはじまっているという人もいます。そのタイミングで乳がんが見つかれば、もちろん皆さんショックを受けますし、落ち込み悩みます。人生まさにこれから! というタイミングで乳がんが見つかったことで、自分にとって本当に大切なものに気づく方、これまで諦めていたことに挑戦してみようとする方を私はたくさん見てきました。

――このような活動をはじめられたきっかけはなんだったのでしょうか。

乳がんについての情報を集めようとするとき「治療を終わって元気になった!」という情報は意外と少ないんですよね。逆に、治療で辛くて再発して……という発信はどんどん目に入るのです。私は活動を通して、これまで乳がん患者の方が治療して元気になっていく姿をたくさん見ています。だからこそ、前向きな情報や、実は乳がんサバイバーの多くがそうであるという情報を発信したかったのです。乳がんは生存率が高いがんなので、ポジティブにとらえて新しい人生を歩んでいきましょうという想いからNPO法人を立ち上げました。

――サイトにある「サバイバーアンケート」などを見て、こんな風に前向きに乳がんになったことを捉えている方がいるんだということを初めて知った気がします。

もちろん、早期発見で治療を終えても、再発が怖くてごはんが食べられないという方や、乳がんをきっかけに鬱になる方もいらっしゃいます。進行具合によっては乳房切除、抗がん剤治療と、肉体的にも精神的にもきつい治療を受ける方もいますし、乳がんとの向き合い方はみなさんそれぞれです。ネガティブな発信がダメというわけではなく、乳がんをきっかけに新しい人生を歩んでいる人もいるんだということを知ってもらえると嬉しいです。

※1 参考:国立がん研究センター|最新がん統計「4.生存率」

いい意味で人生のターニングポイントになり得る

ーー生存率が高いとはいえ、乳がんになったら精神的に辛いと思いますが、サバイバーの方々はどのように向き合い、前を向いているのでしょうか。

乳がんサバイバーのコミュニティサイトを通して、新しい仲間ができた方がたくさんいます。同じ病気ということで、お互いに励まし合ったり、共感しあったりして一生の友達になるという人も多いです。またその中で、毎日を大切に生きること、生きられることへの感謝について話す方も多いんですよ。
確かに乳がんは辛い経験ではあるけれど、同じ経験を通して一生の友だちに出会えたり、生きる喜びを実感できたり、新しいことに挑戦する勇気が持てたりと、前向きに捉える方も数多くいるのです。

ーーそういう出会いの場を提供されているということですね。ネガティブに受け止めるより、乳がんになったことをきっかけに、人生を見つめ直せるというのは希望ですね。

乳がんは、自分の人生を見つめなおすきっかけになります。本当に大切なものがわかって、これまで諦めていたこと、やってみたかったけど躊躇していたことに足を踏み出すという人をたくさん見てきました。必要以上に乳がんを怖がるのではなく、何よりも早めに見つけることが大事なんです。

※表示価格は記事執筆時点の価格です。現在の価格については各サイトでご確認ください。

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著者

山田かほり

山田かほり

フリーライター歴10年。読んだ人の心にふわっとした空気が流れるような記事や情報をお届けできるよう心がけています。

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