抗がん剤治療前のあれこれ
娘の入学に合わせた治療スケジュール
ーー担当医師から対面で告知をされた、その日に抗がん剤治療の予約をして「2日後から実際に治療が始まった」ということでしたね。
くま子さん:ブログにも書いていますが、自分では「一刻も早く始めたい」一心でした。「なんで私だけ……」と、嘆き悲しむ気持ちが全く無かったわけではありません。でも、まだ幼い娘を見ていると、泣き言を言っている時間がもったいない!と思って。とは言うものの、ネットに溢れる経験者の情報を見ると、壮絶な副作用に苦しむ人もいて……それを見ると、ちょっと怖いな、という気持ちもありました。色々考えてはみましたが、考えているだけでは病気は治らないので「まずは始めてみないと!」と。
ーーくま子さんらしさ、と何度も言いますが(笑)「ここぞ!」という場面での決断がとても早いですよね。副作用についてあれこれ調べるよりも、まずは「治るための最短距離を選ぶぞ!」という気迫が感じられます。
くま子:娘がこの時、幼稚園の年長さんで、4月から小学校に上がるという節目だったのも大きかったですね。スケジュールを考えると幼稚園のうちに、抗がん剤治療を終えて、手術の後に入学式を迎えられたらいいなと。娘が幼稚園を卒園するのと同時に、私も腫瘍とサヨナラしたかったので(笑)。
悩ましいのは、家族や友人への「がん告知」
ーー告知後に治療日を決めて、その足で旦那さんの実家に行かれたそうですね。
くま子:ちょうど夫も一緒でしたし、抗がん剤が始まる前の体調に支障のないときにと思っていたので、その日のうちに病気のことを伝えました。もちろん驚いてはいましたが「協力するよ」と心強い言葉をもらって安心しました。でもちょっと大変だったのが私の実家で……実はその頃、母が1年間の卵巣がんの闘病に区切りがついたところだったんです。母はもちろんショックを受けていましたが、懸命に受け止めてくれました。やはり治療も長いし副作用もあるので、子どものことなどで協力をしてもらえる人には話しておいてよかったと思います。隠し通せる病気ではないな、と実感しました。
ーーブログによると、抗がん剤治療が始まった頃に、すでに病気のことを話してあるママ友のお宅に、お子さんを預かってもらっていましたね。
くま子:この頃は副作用の影響もあまりなく普通の生活ができていましたが、「この先どうなるかわからない」と思っていたので、気心の知れたママ友にお願いして「ひとまず預かってもらう練習を」と思い、2時間ほど娘を預けました。とても楽しそうにしていたので、ホッとしました。身近に子育ての強力な助っ人がいると、本当に助かります。「つらい~~~」とLINEすると「寝てて~~~」とレスが返ってきて(笑)お迎えに行ってくれたり……そして、過剰に気づかいをするわけではなく、いつも通りにしてくれたのも心が休まった理由だと思います。クラスのママ全員に話す必要は無いと思いますが、子どもを預けたりする場合を考えて、信頼できる人には話しておくといいですね。
ーーそして、当時5歳のお子さんにも、病気のことをお話されたんですよね。
くま子:隠しておくつもりは最初から無くて、できるだけストレートに、と思い「お母さんね、しばらく強い薬を飲むことになって、髪の毛が抜けたり元気がない日も出てくる病気なの。でも春頃にはそれがなくなる予定だよ」と伝えました。『ガン』とは言いませんでしたが、娘は「分かった。お手伝いとかするからね」と言っていました。その後に幼稚園の先生にも伝えました。まだ若い先生なのですが「様子を見ておきますね。」と言っていただいて頼もしく思えました。娘に「先生にも伝えるからね」と言ったら「良かった」と安心した様子で……やっぱりちょっとしんどかったのかな、先生に伝えてよかったな、と思いました。
抗がん剤治療のリアル
ーー治療は点滴で、2,3週間の間隔で受けたんですね?
くま子:合計8回の治療でした。点滴の間は音楽を聞いたりマンガを読んだりして、のんびり過ごせます。病院の帰り道にはコンビニスイーツを買ったり、コーヒーを飲んだりするのを楽しんでいました。日数にすると長いと感じるかもしれませんが、私の場合は「娘の入学までに」と、治療のゴールが晴れやかなイベントと重なっていたので、娘の成長を励みに乗り切りました。
副作用には個人差がある
ーー抗がん剤治療は副作用が辛いと聞いたことがあります。
くま子:個人差がかなりあると思いますが、同年代の女性にわかりやすく例えるなら、妊娠中の悪阻に似ているかもしれません。私は吐くことはなかったのですが、吐いてしまう人もいて、多くの人が食欲不振にはなりますね。私もゼリーとか口当たりのいいものばかり食べていた時がありました。病気の症状ではなくて薬の副作用ですから、人によって違いますし、副作用が強く出ていることが薬の効果に繋がるということでも無いようです。私のブログも含めて、のことですが……個人が書いている情報だけを頼らず、心配なことは経過を良く知る担当の先生にきちんと聞く方がいいですね。情報に振り回されず、自分の身体に実際に起きていることに集中して欲しいです。
ーーあと、具体的に私たちが知っている、抗がん剤の副作用と言えば、髪の毛が抜けてしまう、ということですが。
くま子:あ、髪の毛も抜けましたよ。抜けるとわかっていたから、ショートにはしていたんですが、それでも驚くくらいのスピードで抜けるので……多分、みんなこの時期には泣いてしまうと思います。その状況の時に夫は「どうする?刈っちゃう?」って丸坊主を勧めてくるし、娘は「ウィッグは茶色がいいよ」って(笑)。家族が自分たちなりに予め受け止めていてくれていたたんだと思いますけど、まさかの発言にびっくりでした。でも、この時期ってネガティブなびっくりしかなかったので、笑っちゃいました。ある意味どん底に辛いときにスゴイ台詞だったなぁ……助かったなぁ、と(笑)。どんなにしんどい時にでも、ちょこっと楽しいことや、ふと心が温まることって必ずあるはずなんですよね。そういうことを見逃したくないな、と思ったのもこの頃です。
「心を開くこと」を覚えた
ーーくま子さんの病気と向き合う姿勢は常に一貫していて「いつも、今起こっている事実をしっかり捉えて、1歩先のことを考えている」と感じます。早い時期に周りの信頼できる人たちに知らせたり、辛いときには言葉にして家族や友だちにSOSを出すことで、シンプルに「病気と闘う」ことに集中できている……これは大人になるにつれて実はとても難しくなることだと思います。「周りにどう思われるか」「誰に伝えるべきか、伝えないべきか」「頼ってばかりではいけないのでは?」とか余計なことに頭と心をつい、費やしてしまいます。
くま子:もともと上手に人に頼れないタイプだったので、今回は病気を通じて「心を開く」ことを覚えられて、とても良かったと思います。とても辛いとか、心から感謝してる、とかの感情を、ちゃんと伝えるって大切なことだな、と思いました。子育てをしていく上でも「自分を大切にすること」「相手を思いやること」をより深く教えてあげられる自信がつきました。
くま子さんプロフィール
ショートヘア(ウィッグ!)が似合う、キュートな笑顔と真っすぐな瞳が印象的な1女のママ。
1980年生まれ 東京都出身 神奈川在住 2011年に結婚、2015年には長女を出産。
夫とともに鍼灸院を経営 趣味は朝ランニング、料理、食べる事。フットケアセラピスト、ネイリスト、食育アドバイザー、スポーツフードアドバイザーなどの資格を持つ傍ら、ヨガインストラクターになるべく現在勉強中!
がん治療のあれこれを綴ったブログには、子育て中のエピソードや家族の話題、大好きな「おいしいもの」の写真がずらりと並ぶ。