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【乳腺専門医に聞く】インターネットの経験談は見ないほうがいい!乳腺専門医が語る乳がん治療の”今”

心と体

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2020.10.18

乳がん啓発月間である10月に、乳がんについて、乳がん検診について改めて考えるきっかけになればという想いから、saitaPULS編集部は東海大学医学部 乳腺・内分泌外科学 教授の新倉直樹先生に、検診のことや、もし自分にがんが見つかったらということについてお話を聞きました。

日本人女性の9人に1人が乳がんになると言われている時代。もし自分がなったらどうするべきなのでしょうか。40歳を過ぎたら、2年に1度の検診がどれだけ大切かを、改めて考えさせられるお話です。

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乳がんは遺伝するの?

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――前回乳がん検診を受ける頻度や、また自己触診で乳がんを疑うのはどんなときかなどのお話を聞いてきましたが、1番気になっていることを聞きます。ずばり、乳がんは死んでしまう病気なのでしょうか?

最新のがん統計では乳がんの5年生存率は92%、10年生存率は79%となっています(※)。この統計には初診時に肺や肝臓などに転移を起こした患者さんも含まれたデータですので、当院のデータでは検診で発見されるような、腫瘍径が2cm前後の乳がんの10年生存率は90%を超えています。もし乳がん検診でがんが見つかっても、すぐに病院に行けばほとんどの場合治ります。もちろん治療は必要になりますが、僕は患者さんに対して、「命がどうこうということは考えなくてもいいですよ」と伝えています。
患者さんの中にも、身内に乳がんの人がいたりする方は、「乳がんは死ぬ病気ではない」とわかっている方も増えてきました。乳がんは、標準治療でしっかりと治療をすれば大丈夫ながんなのです。

――本当に早期発見、早期治療がポイントになるのですね。ところで、乳がんに遺伝的な要素は大きいのでしょうか? 親族に乳がんの人がいる場合は、やはり意識的に検診やセルフチェックを行う必要があるのでしょうか。

遺伝による発症は、だいたい5〜10%と言われています。ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーは、がん抑制遺伝子「BRCA1」に生まれつき異常があったため、予防的乳房切除と予防的卵巣切除をしたことが話題になりました。日本でも、乳がんになった人は保険適用でBRCA遺伝子の検査を受けることはできます。BRCA遺伝子に異常がある場合、女性は乳がんや卵巣がん、男性だと膵臓がんや前立腺がんになるリスクが高いとされています。親、兄弟、親戚の中で、これらのがんを発症した方が多い場合は、気をつけたほうがいいとされているので、定期的な検診は大事です。

もし乳がんが見つかっても、日常生活は変えないで

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――5年生存率が90%以上だとしても、乳がんが見つかったとなると一大事ですよね。乳がんの治療はどのくらい大変なものですか? 仕事を続けていくのは難しいのでしょうか。

僕は、治療をスタートする患者さんには必ず「生活を変えないでください」と伝えています。もちろんがんの進行度によって治療の内容も変わるので、抗がん剤治療をする場合は仕事を休まなければいけない時期もありますが、仕事はやめないほうが良いです。

――そうなのですね。がんが見つかったら仕事は続けられないというイメージを持っている人は多そうです。

がんになったからといって、がんのことをずっと心配してもがんが治るわけではないので、仕事などのこれまでの日常を続けている方が良いと思います。抗がん剤治療だと、半年、1年と期間を要しますが、今は仕事をしながら治療ができる薬の開発も進んでいます。
乳がんが見つかりやすい年代の女性は、子育てや仕事の面でも社会的意義が非常に高い。その方々が一線から退くのは損失が大きいので、社会にいながら治療をし、早く社会復帰をしていただくのが我々にとっても重要なポイントです。
基本的には日常生活を送りながら治療をしてもらっています。それにがんは治ったけど、仕事はなくなったというのは困りますよね。治療後の人生のほうがずっと長いですから。

――乳がんは、治療後の人生について考えられるがんなのですね。

そうです。がんの治療自体もどんどん変わってきています。僕が医者になったころは、がんは治りづらい病気とされていて、告知をするかどうかを議論していたような時代でした。今は早期乳がんの方は早期に治療すれば治癒しますし、再発乳がんの患者さんでも10年以上生きられる方もいるので、その方たちも治療しながら日常を送っています。そう考えると、がんは急性期の病気ではなく、慢性期のものになってきているのです。糖尿病や高血圧などと同じように、患者さんは長く付き合っていく病気なので、その方がどんな生活を望んでいるのかを聞いて、日常生活も含めて僕たちはアドバイスをしています。

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著者

山田かほり

山田かほり

フリーライター歴10年。読んだ人の心にふわっとした空気が流れるような記事や情報をお届けできるよう心がけています。

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