子ども2人を私立中学校に入れたいけれど……
今回のご相談者さんは、「子ども2人を私立中学校に入学させたい」と悩んでいるご様子です。ご相談内容を見てみましょう。
長男(小3)、長女(小1)、夫(45歳)、私(39歳)の4人家族、東京23区内在住です。
夫は会社員、私はパートで世帯年収は800万円ほどです。
2人の子どもが小学生になり、特に長男のクラスのお友達のママ友の中では、最近「中学受験」の話がよく出るようになりました。
近所の公立中学校の評判があまりよくなく、荒れているなどの噂も聞かれるため、親しくしている周りのお友達はほとんど中学受験を希望するようで、本格的に塾選びなどを始めているそうです。私も、近所の公立中学校の良くない噂を聞くと、中学受験をした方がいいのではないかと思うようになり、できるなら2人の子ども両方に、中学受験をさせてやりたいという気持ちになってきています。
おそらく、うちの子のレベルだと都立中学は無理だと思いますし、奨学金などをもらえるほどの学力もないと思います。結果として受験をしてもほどほどのレベルの私立中学校になると思いますが、もし子ども2人を中学受験させるとすると、学費がかかりすぎることが心配です。
また、3年生になり塾通いも始まると考えると、塾の費用も心配です。
費用のことを考えて、荒れているという噂のある公立の中学校に進んで公立高校を目指すか、教育ローンなどを検討してでも私立の中学校に入学させ、そのまま私立高校に上がるほうがいいのか迷っています。
子どもの教育にも関わることなので、どこまでお金のことを重視して選択すべきか悩みます。
子ども2人を中学受験させようとすると……
子ども2人をできれば中学受験させたいと考えている投稿者のママ。近所の公立中学校の評判があまり良くないこともあり、中学校受験を希望されているようですが、費用の面で心配なご様子ですね。
お子さんの教育のことを考えると中学受験をさせたいけれど、ローンを組んでまで受験をすべきなのか、子どもの教育のことを考えれば費用のことは後回しにして受験すべきなのかなど、迷ってしまう親心もよく理解できます。
ここでは、中学受験を視野に入れた場合、お子さんの教育と費用のバランスをどのようにとればいいのか、中学校受験を視野に入れる場合の家計設計なども含め、一緒に考えてみましょう。
1 公立中学校についての情報収集を怠らない
今回の相談者さんがそもそも中学受験をしたいと思う理由のひとつは、「公立中学校が荒れているから」ということのようです。
大切なお子さんが通う中学校ですから、荒れているといった噂を聞いてしまうと、心配になる気持ちもよく分かります。
しかし、本当にその公立中学校が荒れているのか、まずはご自分の目で今一度よく確かめてみましょう。
よく聞いてみると、荒れていると言ってもごく一部の子どもだけで、ほとんどの生徒さんは荒れているどころか優秀な生徒さんであることも多いものです。
また、学年によってカラーが違うことも多く、公立中学校に進学した場合、実際の同級生や先輩後輩になるのは、今一緒に公立小学校に通っている同級生や先輩後輩のお子さんたちです。
今は問題のある生徒さんの多い中学校でも、同級生、先輩後輩の中で取り立てて大きな問題がない小学校であれば、相談者さんのお子さんが中学校に進学する頃には、公立中学校が荒れるといったことは少ないかもしれません。
近隣の小学校のお子さんも一緒になることもありますので、近隣の小学校に通っているお子さんの状況も確認しておきましょう。
人から聞いた「公立中学校は荒れている」といった噂は、単純に鵜吞みにするのではなく、偏見にならないよう自分の目でよく確かめ、今後も情報収集を怠らないようにしましょう。
2 高校から私立という手もある
相談者さんが、もし金銭的な理由から中学受験をあきらめることになった場合でも、公立中学校からは公立高校しか行けないわけではありません。
公立中学校から私立高校に入学することもできますし、高等学校等就学支援金制度など、授業料の支援なども受けることができます。
世帯年収800万円、東京23区内在住ということですから、現在の収入であれば東京都の私立高等学校等就学支援金などの対象にも該当すると考えられます。
高校附属の中学校であればそのまま高校に進学できますが、高校進学に再度受験が必要な中学校の場合、身の丈に合わない偏差値の高い中学校に進学してしまうと、公立中学校に比べ内申点が低くなりすぎ、高校受験にかえって不利になるケースもあります。
3 私立中学校を受験するのにかかるお金を計算しておく
私立中学校に進学すると決めるのであれば、私立中学校進学時に必要なお金についてはあらかじめ計算しておきましょう。
文部科学省「子供の学習費調査」(平成30年度)によると、中学校でかかる学校教育費と学校外活動などを合わせた学習費の平均総額は、公立で約48.8万円、私立で約140.6万円となっています。
お子さん2人を私立中学校に進学させた場合、最大年間280万円ほどの学費がかかることが想定されます。
相談者さんの世帯年収は800万円ということですから、仮に手取りで600万円の収入があると想定した場合、そのうち半分近くは学費に消えることになります。
残り320万円となりますから、単純に計算しても学費以外の生活費に使えるお金は月々約26.5万円ほどになります。一定の貯蓄もすると考えると、できれば月20万円前後で生活できた方が望ましいということになります。私立中学校に進学させるのであれば、その中での生活が可能なのか確認しておきましょう。
さらに、以前の記事で試算しましたとおり、「塾の費用で年間約100万円、私立中学校で約140万円、私立高校で約100万円、私立大学で約130万円」がかかるとすると、上のお子さんが5年生になる頃から、塾の費用が2人分かかるようになり、上のお子さんが中学校3年生になる頃には、2人分の学費がかかるようになってきます。
その後、上のお子さんが大学を卒業するまでは継続して2人分の教育費がかかることになります。およそ年間200万円~最大280万円前後までの教育費を想定しておいた方がよいでしょう。前後数年は大きな額になる教育費は1人分で済みますが、それでも年間100万円~130万円の教育費を負担することになります。
上のお子さんが小学校5年生になってから、大学を卒業するまでの12年間、少なく見積もって年間200万円の教育費が12年間かかったと仮定しても、2,400万円ほどになります。高額になりますので、全額借金でやりくりできるような範囲ではないと考えると、今ある収入の中でどこまでやりくりできるのか考えておく方が賢明でしょう。
子ども2人を中学受験させるのが難しい時は
金銭的な理由から子ども2人の中学受験が難しいと判断した場合、荒れていない公立中学校のある地域に引っ越しをするということも方法として考えられます。
2人分の私立中学校の学費を支払うよりも、引っ越しをして、満足できる公立中学校を探した方が金銭的な負担という意味では軽く済ませられる場合もあります。相談者さんの場合は仲の良いお友達はみんな中学校受験を考えているということですから、仲の良いお友達と離れるのが嫌だから引っ越しをしないと考える必要もないでしょう。
このように選択したい進路をよく考えてみると、様々な方法があることに気がつくはずです。絶対に私立中学校でなければ、という思い込みは捨て、柔軟に現実的な方法を検討してみましょう。