「私の育て方のせい……?」子どもが発達障害を抱えていると感じやすい“罪悪感との付き合い方”

家族・人間関係

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 「私の育て方のせい……?」子どもが発達障害を抱えていると感じやすい“罪悪感との付き合い方”

2023.01.16

臨床心理士・公認心理師のyukoです。友達とのトラブルが多い、子ども自身思うようにいかず頻繁にイライラしている。発達障害のお子さんをもつ親御さんは、子育てに人一倍苦労されている方も多いです。また、周りとは成長のペースが異なるお子さんの姿を見て「親である自分がもっと手をかけていれば」と、自分を責めやすくなる方も。子育ての中で抱きやすい罪悪感との付き合い方を考えていきます。

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子どもが発達障害を抱えているとき、親が抱きやすい気持ちとは?

言葉が遅い、視線が合いにくい、名前を呼んでも振り返らない。
「うちの子ちょっと他の子と違う?」と感じることから、専門家への相談を経て発達障害の診断が下される方は多いです。

発達障害の子と母出典:stock.adobe.com

大きくなると、友達とのやり取りが上手くいかない、こだわりが強くて日常がスムーズに回らない、不注意や多動で落ち着いて座っていられないなど、成長に応じて次々と問題がでてきます。

そんな中で、「私の育て方のせいだったのかな」と悩まれる方が多いんです。
中には、「もっと早くから療育などのトレーニングをさせておけばよかった」「仕事ばかりしていたから、早くに気づけなかった」と後悔している親御さんも。
そして、子どもが学校で嫌な思いをしたり、友達と楽しく遊んでいない姿を見ると、より一層自信をなくしてしまう‥。

周りよりゆっくりのペースで成長していく我が子を見て、何が悪かったんだろうと自責の念に駆られる日々‥。
子どもの特性と、親が感じる罪悪感とは、どのように付き合っていけばよいのでしょうか。

子どもは親をどう見ているか。

発達障害を抱える方やその親御さんと話す中で感じるのは、子育てに迷い悩まれている親に対して、恨んでいるお子さんはいないことです。
(もちろん私的な印象なので、統計的に0ではないかもしれません)

多くのお子さんは、「母が自分のために時間を費やしてくれてきた」「自分が他の子と違うから両親に迷惑をかけてきた」と話します。
そんなとき私は、お子さんの許可が取れたら親御さんに伝えるようにしているのですが、「まさかうちの子がそんな風に思っているなんて」と言われる方がほとんどです。

どんな親子であっても、面と向かって本音を言い合うのは難しいんですよね。

親が専門家に相談したり試行錯誤する後ろ姿を、子どもは必ず見ています。
心配になったときは、パートナーや祖父母、兄弟など、第三者を通し、”親として今の関わり方で大丈夫か”尋ねてみるのもよいかもしれません。

夫婦出典:stock.adobe.com

また、誕生日やクリスマスなど、特別な日に手紙を通してメッセージを送るのもおすすめです。
忙しい日常の中ではなかなか伝えられない本音を打ち明け合う機会になるのではないでしょうか。

「3年前」と「3年後」を想像する

「発達障害の原因が親の育て方にある」という考え方は否定されています。
一方で、親の適切な関わり方によって、発達障害の子がその子のペースで育っていけるのは事実として認められています。

子どもが何か失敗してしまったとき、子どもを周りと比べてしまったとき、どうしても後ろ向きな考えになり、過去に原因を求めるようになるんだと思います。

そんなときは、3年前の我が子と、今の我が子を比べてみてください。
当時、悩んでいた内容とは異なる質の悩みを今抱えているのではないでしょうか。

例えば、
学校で上手く馴染めず友達は1人もいなかった3年前の悩みと、学童で友達に言いすぎてしまった今の悩み。

友達がいなかったことを考えると、当初は想像できない未来だったのではないでしょうか。

子ども同士出典:stock.adobe.com

他にも、
朝の準備は全て親任せで歯磨きをする余裕もなかった3年前と、久しぶりに忘れものをして先生に怒られ、落ち込んでいる今。
友達の家にも公園にも親がついていかないと遊べなかった3年前と、「一人で行けるから放っておいて」と親に歯向かう反抗期の今。

できるようになったことはすぐに忘れてしまい、できていない面にばかり目を向けてしまうのは大人も子どもも一緒です。
そして、子どもの成長を願うからこそ、親の欲目が次々にでてくるのも当然です。

子育てで自信をなくしているときに思い出してほしいのは、「3年前はどんな悩みを抱えていたか」、そして「この3年で変化したことは何か」です。

子どもを親身に想うゆえの悩み

日々一生懸命育児に向き合っているからこそ、落ち込み、真面目に接しているからこそ、自分を責めてしまうんだと思います。
3年後の子どもはきっと、新しい発見と悩みを持ってきてくれるはずです。
その子しか持っていない個性を抱きながら一緒に成長していけるといいですよね。

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著者

yuko

yuko

臨床心理士・公認心理師。現在は小児の総合医療センターと大学の心理教育相談センターにて勤務。児童期から思春期の子どもへのカウンセリングやプレイセラピー、子育てに悩む保護者の方への育児相談を専門にしています。色彩心理学やカラーコーディネートについても学んでおります。

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