教えてくれたのは……菅原洋平さん
作業療法士。ユークロニア株式会社代表。アクティブスリープ指導士養成講座主宰。ビジネスパーソンのメンタルケアを専門に行うベスリクリニック(東京都千代田区)で、薬に頼らない睡眠外来を担当するかたわら、生体リズムや脳の仕組みを活用した企業研修を全国で行う。
『「めんどくさい」が消える脳の使い方』
著者:菅原 洋平
価格:1,650円(税込)
発行:ディスカヴァ―・トゥエンティワン
めんどくさいと感じるのは「脳がわからない」と思っているから
「あれもしなければ」「これもしなければ」と考えていても、面倒だと感じる気持ちが上回り、なかなか行動に移せないことはありませんか?
この「めんどくさい」という心理が働く理由を理解することで、物事をスムーズに進められるようになるかもしれません。
菅原さんは「『めんどくさい』は脳が予測できなくて生じるもの」なのだと言います。「脳に通じない命令=脳がわからない」と思うことがあると、「めんどくさい」につながるのだそうです。
「めんどくさい」につながる3つの理由
めんどくさいという感情は、無駄にエネルギーが使われたり、使えるエネルギーが少なかったりするときに出現するとのこと。それは、具体的にどのようなときに起こるのでしょうか。
1.「どうすればいいのか」「何が起こるのかわからない」とき
(例)友人の結婚式に出席するのが、めんどくさい。
これは、「どうすればいいのか、何が起こるのか、わからない」と思っているために生じる「めんどくさい」です。
脳は常に次の展開を予測して動こうするため、初めて行く場所、初めて会う場所、初めてのイベント、初めての服装……など、初めてのことが多すぎると、過去の記憶だけでは予測が難しくなり、無駄にエネルギーを使ってしまうことに。これが、面倒だと感じる理由なのだとか。
この場合の解決策は、初めてのことをひとつでも減らすこと。上記の例であれば、場所を下見する、事前に人に会うなど、事前にできることをやっておくことでイメージがつきやすくなり、めんどくさいという気持ちを減らすことにつながるのだそうです。
2.「自分を守ろうとする意識が働いた」とき
(例)今週中に提出しなければならない資料をつくるのが、めんどくさい。
これは、人からの指示や割り当てられた役割として作成する場合、「間に合わないと怒られる」「自分の作業ペースをせかされる」と思っているために生じる「めんどくさい」です。
怒られるといった罰を受ける、自分の安全を侵されるという意識がつくられると、自律神経のひとつである背側迷走神経系の働きにより、危機を回避して安全を確保することが最優先に。そうすると、代謝率が下がって身体が動かなくなってやる気が起こらず、危機が過ぎ去るのを待つモードになるのだそうです。
この場合の解決策は、必要な作業とやりたいことの間につながりを見つけて、自分がやりたいことの一部として取り組めるような設定をすること。上記の例であれば、頼まれた資料がどんな人に役立つのかという情報を得ておくことが、ひとつの策です。これにより、腹側迷走神経系の働きでリラックスして動けるようになり、高いパフォーマンスを発揮することができます。
3.「複数のスキルを同時に使わないといけない」とき
(例)揚げ油をペットボトルに入れてリサイクルに出すのが、めんどくさい。
これは、油をこぼさないように注ぐ“空間的な能力”と、油がついていることで洗う時間がかかる“時間的な能力”という、2つの能力が求められるため、同時に行うことに負担を感じるために生じる「めんどくさい」です。
空間的な能力と時間的な能力は、脳の中でエネルギーを奪い合っていることが明らかになっているとのこと。1つの課題に使えるエネルギーが減らされてしまうことが、面倒だと感じる理由になるようです。
この場合の解決策は、1つの能力だけでできる状況をつくること。上記の例であれば、雑に作業しても油がこぼれない容器に移す、または油の処理をするだけの時間を設けるなど、“空間的な能力”か“時間的な能力”のどちらかに集中できるような環境を整えることがポイントです。これにより、一気にめんどくささが薄れるようになります。
換気扇の掃除や窓拭きなどの面倒な家事を行う際にも、どちらかの要素を減らして1つの能力に絞ることで、ハードルを低くすることができるのだそうです。
「めんどくさい」の正体を知ることがカギ
脳がどのようなことに「めんどくささ」を感じるかを理解して解決策を探ることは、行動に移しやすくなるための第一歩。「面倒だな」と思ったときに思い出して、改善の道を見つけてみてくださいね。