子どもの想いと、親の不安
子どもは、3歳頃から「自分 ― 他人」の明確な区別ができるようになっていきます。そして、自分の言動によって、相手の反応が変わることを学び、一番身近にいる親の顔を見て育っていきます。
親から見れば、わがままだったり、マイペースに見える子であっても「ママ(パパ)に嫌われてはいけない」気持ちは根づいているもの。
どんな子でも幼いながらに「お母さんが喜ぶ顔が見たい」気持ちと、「自分はこうしたい」気持ちの両方を抱えながら、生きているのだと思います。
ちょうどそのような年齢から、集団保育に入るお子さんが多くいらっしゃいます。そして、多くの親御さんは「周囲の子ができているのに、わが子ができていないこと」に目がいき、焦りや不安を感じやすくなります。わが子のできることが増えていくと同時に、集団保育にいる同年齢の子もそれぞれのペースで成長していくからです。
伝わってしまうことと、伝えるべきこと
育ちに関する"不安”は、「〇ちゃんは行儀よく待つことができるのに、うちの子は。」「〇君は先生に褒められていたみたい。なのに…」という言葉となり、ママ友や家族内で共有されます。
一方、「うちの子は、弟に優しくできる」「うちの子が自分からお皿を運んでくれて嬉しかった」のような"良いところ”はあまり人に言うことはなく、心の内に留めておくことが多いのではないでしょうか。なぜなら、親ばかに思えたり、自慢に聞こえてしまうことを恐れるからです。
ただ、子どもは、親が言葉に出す愚痴や悩みを聞いています。
親が心の中で褒めたり感心したりしていても、聞こえてくるのは、自分(子ども)の心配や不安についての話。「本当はいいところもたくさん知っている」という親の気持ちは知る由もありません。ネガティブな評価を重ね重ね耳にしていると、「お母さんは私のこと好きじゃない」「僕なんてどうせ……」と思うことも。
子どもの一番近くにいながら、日々の成長に気づき、褒めてあげることは、簡単なようで難しいですよね。
子どもは、「ママが笑うこと」「パパが喜んでいる」ことで嬉しさを感じます。
そして、「僕が好きなものを知ってほしい」「私ができるようになったことを見てほしい」、「言葉に出して、自分のことを認めてほしい」。そんな想いを抱いているのではないでしょうか。
「今日どうだった?」だけではわからない子どもの声
小学校に上がると、子どもは集団の中での競争や評価の中で生きなければいけません。
集団社会で頑張っていると、親の「今日どうだった?」は、学校のテストや成績、習い事の上達、先生に注意されていないかどうか、について問われていると感じやすいようです。
そして、「ネガティブなことを言ったらがっかりさせるかもしれない」と親の気持ちを汲み取り、「別に」「普通」という言葉でやり過ごすようになります。
親からすると「(子どもは)言わなかった」。一方、子どもは「(お母さんが悲しむ、怒ると思って)言えなかった」のではないかと思います。
「今日どうだった?」だけではなく、「友達と楽しく遊ぶことができたか」、「ご飯は美味しく食べられているか」、「生活する中で辛いことはないか、心が疲れてきていないか」と問いかけることも大切だと思います。
そして、子どもが好きなこと、興味を持っていることを聴き、肯定的に認めていく姿勢が求められます。
また、ネガティブなことを言っても、「大丈夫だよ。どうすればいいか一緒に考えよう」と受け止めてもらえる経験が大切な支えになっていきます。
子どもが、「話してみようかな」と思える関係作りが基盤になります。
心が折れてしまう前に必要なコミュニケーションとは
頑張り続けた結果、疲れ切ってしまうと、「もうこれ以上できない」「自分には無理だ」と、心が折れてしまう場合も。
「できる自分」から「できない自分」になったとき、「もう嫌われるのかな」、「親はどこまでだめな自分に付き合ってくれるのかな」と不安に思うこともあります。
そして、黙ることで自分の気持ちを伏せたり、不安な気持ちが反抗心として表れる子も。
そうなってから、「大丈夫だよ。大好きなことに変わりはないよ」と伝えるのも大切なコミュニケーションです。
ただそうなる前に、「勉強ができる」とか「1番になれたから」という条件ではなく、「どんなあなたであっても大切に思っている」というメッセージを日常的に伝えていくのも必要なのだと思います。
「友達と仲良く遊べたこと」「兄弟にゲームの順番を譲ってあげたこと」「お手伝いがひとつできたこと」を日常的に褒めてあげるのもよいかもしれません。
「今日も怪我なく無事に家に帰ってきたことを嬉しく思っている」という想いがしっかりと伝わると、温かい気持ちが子どもの心に残ると思います。
近くにいるからこそ見えないものもある
愛情深い親御さんこそ、常に子どものことを考え、一心同体であるかのように密接な距離感をもちやすくなると思います。
一方、親の愛情や期待に応えようとする優しい子こそ、頑張りすぎてしまうのかもしれません。
大切に思うからこそ、一息ついて立ち止まり、一歩下がって待ちながら、子どもの声を聴いてみてください。