娘の小学校の「運動会」から学ぶ“本当に戦うべき相手”

家族・人間関係

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2023.08.07

「順位をつけない運動会」があるという。そんな運動会を見たことがない身としては、もはや都市伝説なのでは!? とも思いますが、調べてみるとアチコチで話題にあげられているのです。では、運動会の順位付けはいったい何が問題なのでしょうか

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順位をつけることより、評価のつけかたが問題なのでは?

娘の通う小学校は、少し特別な教育をしています。1学年9人までという、超少人数制でなおかつ1、2年が一緒だったり、3、4年が一緒だったりする縦割り授業もあります。いわゆる5段階(10段階)の通知表はなく、一人ひとりの学びの軌跡をたどるアセンブリシート(評価シート)が通知表代わりに配られます。

テストの点数で決まる5段階評価はありませんが、学びに対する取り組みの姿勢や理解度など、その教科事に期待する目標値はあります。たとえば、授業態度が悪く、今やっている内容も理解できていないようだったら、厳しい評価になります。

これらの評価は「他の子と比べてどうか」ではなく「この授業において求められる期待値」と「本人の成長度合い」で、はかられています。

そんな学校で行われる運動会は、いったいどんな運動会なのでしょうか?

運動会の評価のつけかた

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娘が通う小学校の運動会では、1年〜6年生まで縦割りで4つのグループに分かれて勝負をします。
6年がリーダーとなり、各メンバーを勝利に向けて引っ張っていきます。

「みんなで一等賞」どころか、負ければ本気で悔し泣きをする子が続出するほど、ゴリゴリの勝負の世界。
しかも、子どもたちは全競技全員参加。走るのが得意な子も、苦手な子も、ダンスが好きな子も、嫌いな子も。選択の余地はなく、平等に参加します。
そして、なんと保護者もこの勝負に参加します。大人も本気で走り、飛び、勝負に一喜一憂します。運動が得意な人も、苦手な人も。

「運動が苦手な子にとっては、嫌な日だろうな」「足を引っ張ったっていう自己嫌悪で苦しむ子もいるんだろうな」

運動会の競争を反対する人たちは、運動が不得意な子の気持ちが置いてけぼりになることを心配します。

もちろん運動が苦手で「嫌だな〜」って思っている子もいるでしょう。
でも「お前のせいで負けた!」と言うようなやり取りは、いっさい出てきません。

それは、点数の付け方に工夫がされているから。

他人との競争でもあるが、自分との勝負でもある

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たとえば1200m走という競技があります。
この競技は、毎年「誰がスクールレコード更新するか!?」「誰が一位になるか?」と大いに盛り上がるのですが。
足の早い子だけが活躍するわけではありません。子どもたちは全員(1年生以外)去年の自分のタイムを持っています。
それを超えることができれば、チームに加点されるのです。

競争の順位が何位だろうと関係ありません。「去年の自分を超える!」ことで、チームに貢献できます。
だから足が遅い子も、得点表の前でガッツポーズしている姿をよく見かけます。

50m走だって同じです。
たとえ1等になれなくても、去年の自分と戦えばいい。
もちろん去年より遅くなる子だってたくさんいます。でもその悔しさは翌年へのモチベーションになる。だって戦う相手は自分だから。
足が速いあの子には勝てないかもしれないけど、過去の自分を超えることはきっとできる。

そして、リレーも全員出場します。
足の早い子も遅い子も、どのチームにもいるわけです。だから、各チームみんな一生懸命「勝つための戦略」を立てます。
足の早い子をどの順番で走らせるか、遅い子をどこに配置するか。戦略が大当たりすれば、ひとりで全員ゴボウ抜きなんてことだってある。

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これが、子どもたちにとって大きな学びになる。勝っても負けても、結果じゃなく、この運動会というプロジェクトを通して大きく成長していくのが、見ていて伝わってきます。

自分を知ることが、競争の意味!

「個の時代」なんて言われる昨今。人と比べないで、自分の得意を伸ばしていこうと言うのが主流です。
ただ、人と比べることは大切な視点の一つではないでしょうか。自分だけ見ていても、自分の得意なことも苦手なこともよくわかりません。
人と比べるからこそ「あ、これは得意かもしれない」と思えるのです。
と、同時に自分の中で比較する視点も必要です。世界には自分より得意な人なんてあふれるほどいるわけです。その度に自信を失ってしまっては、苦しいばかり。

自分の能力や知識が、人と比べてどの位置にあるのか。そして、自分の中で比較したときの得意不得意はなんなのか。
それらを知ることが、まさに「自分を知る」ことだと思います。

みんな一緒になっても、そこから学べることはあまりないのではないでしょうか。
 

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著者

三木智有

三木智有

NPO法人tadaima!代表 日本唯一の家事シェア研究家/子育て家庭のためのモヨウ替えコンサルタント。著書に『家族全員自分で動く チーム家事』がある。

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