「WCA・JCA 2大チーズコンテスト成果報告会」
2024年11月19日(火)、日本橋ホールで開催されたのは、ポルトガルで開催のチーズの世界大会「World Cheese Awards 2024」(以下 WCA)と、国内大会「Japan Cheese Awards 2024」(以下 JCA)の成果報告会。
登壇したのは、写真左から、NPO法人チーズプロフェッショナル協会(以下CPA)会長 坂上あき氏、WCA2024で審査員にも選定された広内エゾリスの谷チーズ社 寺尾智也氏、国内外で数々の受賞経験を持ち、2年連続でWCAにも出品している注目の生産者 木次乳業の川本英二氏、2024年秋に黄綬褒章を表彰し、グランドハイアット東京やコンラッド東京で日本料理・統括料理長をつとめた経験をもつ齋藤章雄氏、農林水産省 畜産局 牛乳乳製品課 伊藤寿氏です。
2大チーズコンテストの成果報告をはじめ、国産ナチュラルチーズの新たな食べ方の可能性を探るトークセッションやコンテストに出品した国産チーズの試食会が実施されました。
▶Japan Cheese Awards 2024 結果発表はコチラ
チーズの国内大会「JCA」のグランプリに輝いたのは
国産ナチュラルチーズの評価品質のコンテスト「JCA」を10月19日(土)・10月20日(日)に開催。全国120の工房から選りすぐりのチーズ371品が出品されました。これは、過去最多のエントリー数なのだそうです。
審査は、テイスティング能力や風味表現のトレーニングなどの評価技術のプログラムを終了し、選考に通過したチーズプロフェッショナルの資格をもつ審査員と、ゲスト審査員合わせた93名による厳正な審査の結果、グランプリを受賞したのは……?
「加熱圧絞/熟成6か月以上」部門に出品された「チーズ工房タカラ」(北海道)の「タカラのタカラ」です!
工房を代表するチーズで、口の中でほろほろと崩れ、濃縮された甘みと旨みが広がるのが特徴。試食でいただいたところ、ハードタイプで、噛むほどに豊かなミルク風味が増していく印象を受けました。一切れ食べてみると、もう一切れについ手を伸ばしたくなるようなチーズでした。
また、19工房、21品のチーズが最優秀賞を受賞。こちらがリストです。
酪農のイメージがある北海道に限らず、関東圏のチーズも含めて全国各地のチーズが高い評価を得たという結果も注目ポイント。全国にチーズ工房があるのを知らなかった方も多いのではないでしょうか。
同コンテストは、国内最大級の国産チーズイベント「Cheese Fun!Fan!Fun!」のひとつであり、「第9回 日本の銘チーズ百選」も同時開催。 2日間で4500人以上が訪れ、多くの方が国産チーズの魅力を楽しめる大盛況のイベントになったようです。
チーズの世界大会「WCA」では日本のチーズがSuper Gold賞に選出!
11月15日(金)から11月18日(月)の期間、ポルトガルのヴィセウで開催されたのは、チーズの世界大会「WCA」。世界各国から多種多様なチーズが集まる世界最大級のチーズ・コンペティションとして知られ、第36回目となる今年は47か国から4,786品のチーズがエントリー。こちらも、過去最大規模なのだそうです。日本からは、CPAが事務局をつとめる国産チーズブランド化推進委員会から、37工房44品の国産ナチュラルチーズが出品されました。
40か国からチーズの専門家である審査員240名が集まり、一次審査では104のテーブルにわかれて、外観、テクスチャー、風味などを採点し、Gold(金賞)、Silver(銀賞)、Bronze(銅賞)を選出。各テーブルで最高点のチーズがSuper Gold賞となり、二次審査へ進みます。二次審査では14名の特別審査員がそれぞれ1つのチーズを選出し、チャンピオンが決定するのだそうです。
今年のチャンピオンチーズには、ポルトガル在住のスペイン人のチーズ生産者「キンタ・ド・ポマール社」の「ケイホ・デ・オヴェーリャ・アマンテイガード」が選ばれました。
日本から出品されたチーズは、Super Gold賞 1品、Gold賞 4品、Silver賞 8品、Bronze賞 8品、計21品(補助事業以外含む)が入賞という素晴らしい結果に!
Super Gold賞に輝いたのは……?
CHEESEDOM(北海道)の「瀬棚(せたな)」です。
生産者の中山恵里子氏によると、グラスフェッドのブラウンスイス・ジャージー種のミルクの濃厚できれいな味わいが特徴とのこと。「工房を開業して2年の私たちが今回Super Gold賞を受賞できたことはまるで夢のようで、言葉になりません」とコメントを寄せています。
CPA会長 坂上氏は、本場のカマンベールのような白カビタイプのチーズを押さえて日本のチーズがSuper Gold賞を得たのは、日本のすぐれたチーズ製造技術とミルクの品質が評価されたと感じていると述べました。
また、Gold賞には、新利根チーズ工房(茨城県)の「月利根」、加藤牧場バッフィ(埼玉県)の「加藤牧場濃厚カマンベール」、三良坂フロマージュ(広島県)の「カヌレ」が受賞しました。
惜しくも受賞を逃した日本のチーズについても、「口当たりがまろやかでバランスのとれた味」「生産者の情熱がここまでの発展を促している」「クリーンなチーズでまさに日本の文化が融合されている」など、高評価を獲得。実際にWCAで審査員をつとめた寺尾氏は、特徴的であることの優位性と基本を押さえた安定感とのバランスをとることで、より上位の賞を取ることにつながるのではないかと、生産者として今後の可能性を感じたのだそうです。
現地では、日本のチーズを試食できるワークショップも開催。各国の専門家から「生乳の品質がよい」などのポジティブな評価を受けたときには、うれしくて涙が出そうになり、酪農家の方々にそれを伝えてあげたいと思ったと寺尾氏。今後は、地域と観光、食を結びつけながら地域の価値として発信していく取り組みに力を入れていきたいと述べました。
チーズの「新しい食べ方」を発見する楽しさを知ろう
トークセッションでは、日本料理人の齋藤氏、木次乳業の川本氏、CPA会長の坂上氏が、日本人の食生活にマッチするチーズの食べ方や意外な組み合わせについて紹介。日本料理界の巨匠である齋藤氏考案の国産チーズを用いた創作和食メニューを試食させていただきました。
そのメニューは、なんと「そば」×「チーズ」の組み合わせを楽しむ「きのこ天ぷら出雲そば ゴーダチーズがけ(柚子風味)」!
チーズはWCAに出品された木次乳業の「オールドゴーダ」が使用され、出雲そばの上にふんだんにトッピング。木次乳業が島根県にあることから、同じ土地の食材をと出雲そばを題材に選び、国産チーズだからこそのやさしい甘みを引き立てるメニューを考案したのだそうです。
実際にいただいてみて、そばとチーズの相性のよさにビックリ。洋食に使うイメージが強いチーズですが、和食ともこんなに合うのですね……!
新たなチーズの魅力を知ると、ますますチーズを積極的に取り入れたくなるところ。齋藤氏によると、日本のチーズは海外のものと比較するとやさしい味わいのものが多いからこそ、じつは日本料理とぴったり合うのだそうです。このほかにも、おすすめのチーズの取り入れ方があるようですよ。
齋藤氏のおすすめの食べ方は、おでんやお鍋の出汁にチーズを加えること。好みのチーズを入れて溶かしながら食べると、チーズの旨みが溶け込んで、それぞれの家庭らしさがあらわれた鍋料理になるのだそうです。また、毎日の味噌汁にチーズを加えてみるなど、チーズを調味料としても幅広く使って家庭料理に取り入れ、新たな発見をする面白さが料理には大切だと述べました。
川本氏のおすすめの食べ方は、カレーに加えること。家庭でたくさんのカレーを作った際、2日目や3日目にチーズを加えると飽きることなく楽しめて、子どもウケも抜群なメニューになるとのこと。日本のチーズはやさしい味わいのものが多いため、さまざまな食材にマッチすることをみなさんに知ってもらいたいと述べました。生産者と消費者が新しいアイデアを共有し合うことで、その魅力を広めていきたいとしています。
日本のチーズの「これから」
海外の有識者からの評価が高まり、日本のチーズの素晴らしさが広く認識されるようになったため、ブランド化が徐々に定着してきたと坂上氏。また、従来のヨーロッパのチーズの概念にとらわれず、独自の“日本らしい”チーズを発展させていく時期に差し掛かっていると感じているのだそうです。
今後は、それを具体的な数字に結びつけていくことが課題であり、輸出に向けた対策をしていくステージに入ったと述べます。国内の人口減少にともなう市場の縮小化や酪農への支援といった受動的な動きだけではなく、日本のものづくりの素晴らしさ、チーズ作りの技術の価値を海外に広めることにも注力していきたいとしています。
世界でも高い評価を受け、今注目を集めている日本のチーズ。みなさんも、新しいチーズとの出会い、チーズの新しい食べ方との出会いを楽しんでみませんか?