「私はまだ大丈夫」と思っていませんか?40代から知っておきたい「親の介護」の現実

家族・人間関係

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2025.04.29

親が元気に生活していると、「介護はまだ先のこと」「元気そうだし今は考えなくて大丈夫」と思ってしまいますよね。親の様子に不安を感じていても、介護の話を切り出せずに先送りにしてしまうことがあるかもしれません。「親の介護」について、40代からどのように考えているといいのでしょうか。経済産業省の水口怜斉さんにお話をうかがいます。

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教えてくれたのは……経済産業省 水口怜斉さん

水口さん

経済産業省に入省し、スタートアップ支援や起業家育成、2025年大阪・関西万博関連業務などに従事。現在は健康・医療・介護分野を横断したヘルスケア領域の政策立案を担当。働く家族介護者に対する支援や、介護を個人の課題からみんなの話題へ転換することを目指す「OPEN CARE PROJECT」の立ち上げメンバー。その他、医療の国際展開やヘルスケアスタートアップ支援に関する政策も企画・推進。

5年後には家族を介護する人は800万人超に

“団塊の世代”(1947~1949年に生まれ)の800万人が後期高齢者になる今年、「およそ5人に1人」が75歳以上になります。超高齢化が進むことで介護に直面する人はますます増え、2030年には家族を介護する人の数は約833万人に達すると推計されています。

5年後には家族を介護する人は800万人超出典:stock.adobe.com

経済産業省でヘルスケア産業の振興を担当している水口怜斉さんは、「働きながら家族の介護をする人の数は増加傾向にあり、2030年には約318万人になる見込みです」と話します。仕事と介護の両立というと、親の介護のために仕事を辞める「介護離職」を思い浮かべがちですが、水口さんはそれ以外にも大きな影響があると指摘します。

水口さん

水口さん 「現在、年間約10万人が『介護・看護』を理由に離職しています。介護による離職を防ぐことは非常に重要ですが、介護者増加による社会的な損失はそれだけではありません」

経済産業省データ出典:www.meti.go.jp

水口さん 「仕事と介護の両立が難しくなることで生じる経済損失は、2030年には約9.2兆円と予測されています。このうち、介護離職による損失は約1兆円です。もっとも大きな割合を占めるのは、日常的なパフォーマンスの低下による損失です。介護の発生により、平均して約3割のパフォーマンス低下があるという結果が出ています。介護は精神的な負担が大きく、日中も心が落ち着かない、集中できないという声をよく耳にします。離職に至らなくても、じわじわとパフォーマンスが落ちてしまう状況があるのです」

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「親の介護を考えておきたい人」の4つの特徴

親の介護を考えておきたい出典:stock.adobe.com

親の介護が必要になる年齢は、「45歳ごろから60代前半にかけてが多い」と水口さん。この時期は、親の介護だけでなく、さまざまな問題に直面しやすい年代でもあるといいます。

水口さん 「近年は晩婚化が進み、子育てと介護が同時期になる、いわゆるダブルケアラーも見られます。子どもの受験と親の介護が重なるケースもあるようです。また、45~55歳で閉経を迎える女性も多く、自身の体調が不安定な時期と親の介護が重なるケースもあります」

以下の項目に当てはまる場合はとくに、親の介護について一度考えておくといいそうです。

Check!親の介護を考え始めておきたい人の特徴

1. きょうだいがいない
一人っ子は、親の介護の負担が大きくなる可能性があります。

2. 親と自分の住まいが離れている
親の様子を確認したり、手続きのために実家に戻ったりと、移動の負担が大きくなります。とくに介護初期は、介護保険の申請や要介護認定、入居施設の選定などで、頻繁に立ち会いが必要になることがあります。

3. 親が「75~85歳以上」
日常生活全般にサポートが必要な状態である「要介護」の認定率は、75歳以上で約3割、85歳以上で約6割。介護準備を始めるひとつの目安と考えられます。

4. 親の外出頻度が下がっている
頻繁な外出は、介護予防に効果があることがわかっています。以前よりも外出が減っている、または家にこもりがちになっている場合は、より気にかけておくといいでしょう。

親が元気なうちからできる「介護の備え」とは

介護は、ケガや病気などで突然始まることが多いものです。いざというときに慌てないために、親が元気なうちからできることはあるのでしょうか? 水口さんは、「家族構成やライフプランを確認して、いつごろ介護と向き合うことになるかをイメージしておくこと」を提案します。

水口さん 「介護は、誰にも起こりうる、避け難いことです。そして、介護は始まるときがもっとも大変だったと多くの経験者が話しています。いざというときのために、自分のライフプランのどのあたりで介護に携わることになりそうか、イメージしておくといいですね。あらかじめ心づもりをして知識を持っておくことで、介護初期の負担感が軽減されると思います」

ライフプラン出典:stock.adobe.com

親が元気なうちに介護についてイメージを膨らませておくと、いざというとき慌てずにいられるかもしれないのですね。次回は、40代から知っておきたい「親の介護でもっとも大切なこと」について、水口さんにお話をうかがいます。

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