教えてくれたのは……鈴木 枝里子先生
医療法人社団ユーアイエメリー会理事長、医療法人大壮会久喜すずのき病院認知症疾患医療センターの理事。地域に根ざした認知症ケアを実践。数十年にわたり豊富な臨床経験を積み、患者一人ひとりに合わせた丁寧な対応と家族支援を提供している。
精神保健指定医、日本精神神経学会認定 精神科専門医・指導医、日本精神神経学会認知症診療医、クロザピン処方医、電気けいれん療法(ECT)講習会修了、日本臨床精神神経薬理学専門医。
「認知症」とは、どのような病気?
鈴木先生:認知症は、脳の機能が徐々に低下していく病気です。記憶力や判断力が悪くなり、日常生活に支障が出る状態を指します。発症しやすいのは 65歳以上の高齢者ですが、40代から50代で発症する若年性認知症もあります。
認知症は、脳の細胞がダメージを受けることによって起こります。その中で最も一般的な原因が、アルツハイマー病です。ほかにも、脳血管障害やパーキンソン病が原因となることもあります。イメージとしては、脳の配線が少しずつショートして、電気がうまく流れなくなっていくような状態だといえます。
認知症の初期に見られる「4つのサイン」
自分や身近な人が「もしかしたら認知症かもしれない」と気づくためには、認知症の初期に見られる兆候を知ることが早期発見のうえで大切なのだと、鈴木先生は言います。兆候には4つのポイントがあるそうです。
- 普段やっていたことの手順がわからなくなる
- 予定をすぐに忘れてしまう
- 無関心になる
- 同じ話をくり返す
鈴木先生:認知症によく見られる初期サインとして、毎日していた家事や仕事の手順がわからなくなることや、予定をすぐに忘れるといった行動があります。また、以前は興味を持っていたことに急に無関心になったり、何度も同じ話を繰り返すことが増えたりする場合もあります。
具体的な行動例としては、スーパーで買い物をしたのに何を買いに来たか忘れてしまう、長年使っていた電話の操作ができなくなるなどが挙げられます。長く使い慣れた道を突然迷ってしまうような感覚です。
認知症の診断と治療方法
上記のような認知症のサインがあった場合、何科を受診すればよいのでしょうか。診断にいたるまでの過程や治療方法についても教えていただきました。
鈴木先生:認知症の疑いがある場合は、神経内科や精神科を受診するのが一般的です。診断のプロセスとしては、まずは医師が問診を行い、患者さんや家族から日常生活の様子を聞きます。その後に認知機能テストや脳の画像診断(MRIやCT)を行って、脳の状態を確認します。
診断がつけば、薬物療法や認知機能訓練、生活環境の調整などの治療が行われます。脳の「健康診断」をして、どの部分が弱っているのかを見つけて対策を立てていきます。
もし家族や身近な人が認知症、またはその疑いをもっている場合、適切な対応方法について悩み、不安を感じることがあるかもしれません。
次回の記事では「認知症の人に言ってはいけないこと」や「一緒に暮らす心構え」について、ご紹介します。