教えてくれたのは……鈴木 枝里子先生
医療法人社団ユーアイエメリー会理事長、医療法人大壮会久喜すずのき病院認知症疾患医療センターの理事。地域に根ざした認知症ケアを実践。数十年にわたり豊富な臨床経験を積み、患者一人ひとりに合わせた丁寧な対応と家族支援を提供している。
精神保健指定医、日本精神神経学会認定 精神科専門医・指導医、日本精神神経学会認知症診療医、クロザピン処方医、電気けいれん療法(ECT)講習会修了、日本臨床精神神経薬理学専門医。
認知症の人に言ってはいけない「3つの言葉」
前回の記事では、認知症の原因や初期のサイン、診断にいたるまでのプロセスについて伺いました。もし家族や身近な人が認知症、またはその疑いをもっている場合、適切な接し方について悩み、不安を感じることがあるかもしれません。
鈴木先生によると、認知症の人には以下のような言葉は避けたほうがよいとのこと。お互いの関係を良好に保つために、意識しておくとよいのだそうです。
- 「さっき言ったでしょう」
- 「何度も同じことを言わないで」
- 「また忘れたの?」
鈴木先生:認知症の人に対して、このような言葉を避けたほうがよい理由は、本人は本当に忘れてしまっているので、責められると混乱や不安が増してしまうためです。例えば、「また忘れたの?」と聞くのは、本人にとっては何度も間違いを指摘される苦痛のようなものだといえます。
家族は、忘れていることを責めるのではなく、優しく繰り返し説明することが大切です。パソコンがフリーズしてうまく動かないときに、何度もクリックしても逆効果なのと同じですね。
認知症の人と一緒に生活する際に意識したいこと
頭ではわかっていても、認知症の人を介護する家族は心に余裕がなくなってくるときもあるかもしれません。介護する側は、一人で抱えて思い詰めないようにすることが大切なのだと、鈴木先生は言います。
鈴木先生:認知症の家族と暮らす際は、無理をせず、できるだけ家族全体で負担を分け合うことが不可欠です。介護は長期戦になることが多いので、適度な休息を取ることや、外部のサポート(デイサービスなど)を利用することも必要だと思います。
家族が「共倒れ」にならないように、自分の生活や趣味、仕事を犠牲にしないバランスを保つことが大切です。まるで長距離マラソンのような介護生活では、つらくなってしまうこともあると思います。一人で走り続けるのではなく、リレーのようにバトンを渡しながら進んでいくのがよいでしょう。
認知症は若年層にも発症する可能性がある病気であり、日常の生活習慣が重要だとされています。次回の記事では「認知症を予防する4つの生活習慣」について、ご紹介します。