教えてくれたのは……福田 頌子先生
愛知医科大を卒業後、大学病院での診療をしながら、同大学にて博士号を取得。現在は愛知県尾張旭市にて「あさひの森 内科消化器クリニック」を開業。消化器病専門、消化器内視鏡専門医でありクリニックでは胃カメラ、大腸カメラも行い、「便秘下痢外来」を開設し多くの方の診療を行っている。
「下痢と便秘のくり返し」が病気のサインになることも
福田先生によると、下痢と便秘をくり返している状態は病気のサインである可能性もあるとのこと。考えられる病気には、どのようなものがあるのでしょうか。
福田先生「下痢と便秘を繰り返す場合は『過敏性腸症候群』の可能性が考えられます。過敏性腸症候群以外には、炎症性腸疾患(クローン病や潰瘍性大腸炎など)、食品アレルギー、または他の消化器系の問題が原因である場合もあります」
考えられる「3つの病気」の特徴
上記に挙がった病気の症状や原因について、福田先生に詳しくうかがいました。
1.過敏性腸症候群
大腸に腫瘍や炎症などの病気がないにも関わらず、下痢や腹痛、腹部の張りなどの違和感が続く状態のことを指します。
過敏性腸症候群は下記の4つのタイプにわかれます。
- 便秘症状が主となる「便秘型」
- 下痢症状が主となる「下痢型」
- 便秘と下痢を繰り返す「混合型」
- どのタイプにも分類しにくい「分類不能型」
好発年齢は20代~40代で、人口の約10〜15%が過敏性腸症候群の症状に苦しんでいると推定されています。体質だと思い込んで病院を受診しない人も多いですが、実際にはもっと多くの人がこの問題で悩んでいるとされています。
同じ人でも、「便秘」メインの時期、「下痢」メインの時期、「下痢と便秘を繰り返す」時期など、年齢によって症状の現れ方に違いが出ることもあります。
2.潰瘍性大腸炎
大腸の内側の粘膜に炎症や潰瘍が生じる病気です。
潰瘍性大腸炎は自己免疫性の疾患で、自分の免疫機能で正常なご自身の腸管粘膜を攻撃することによって引き起こされます。赤い便だけでなく、血の混ざらない下痢が続く場合もあります。
3.食品アレルギー
特定の食品に対する免疫系の異常な反応です。
アレルギーを引き起こす食品は、個人によって異なりますが、一般的なものには、卵、牛乳、大豆、魚、貝類、木の実、小麦、ピーナッツなどがあります。
「体質だから」と諦めずに受診する選択を
患者の方から「子どもの頃からお腹が弱い体質なのだと思って諦めており、こんなことで受診してはいけないと思っていた」と言われることも多いのだと、福田先生。
気になる症状がある場合には自己判断せずに、受診することが望ましいのだそうです。
福田先生「なかなか症状が改善されない方は何かの病気がひそんでいる可能性もあるため、まずは消化器内科の受診をおすすめします。過敏性腸症候群であった場合は、適切な薬治療や食事、生活指導で症状の改善が可能です。
下痢や便秘は命に関わる病気でない場合も多いうえに他人に相談しにくいことから、我慢する方が多いかもしれません。しかし、生活の質が下がり、精神的にも苦痛を伴うものだと思います。症状で悩んでいる方は、消化器の専門医をぜひ受診してくださいね」
腹痛、便秘、下痢の症状が続くと、生活に支障をきたすことも少なくありません。QOLの向上のためにも、専門医に相談することから始めてみるとよいかもしれませんね。