教えてくれたのは……新見正則先生
オックスフォード大学医学博士(免疫学)。新見正則医院院長。
外科医×免疫学者×漢方医。2013年イグノーベル医学賞受賞(脳と免疫)。世界初の抗がんエビデンスを獲得した生薬フアイアの啓蒙者。最新刊『フローチャートコロナ後遺症漢方薬』
貧血とは「血液が薄い状態」のこと
40代女性が気をつけたい病気として、新見正則先生がまっ先に挙げたのが「鉄欠乏性貧血」です。
新見先生「貧血というと、立ちくらみのことを指すと考える方も多いようですが、医学的には“血液のもと”であるヘモグロビンが少ない状態、つまり“血液が薄い状態”のことをいいます。
貧血の原因はさまざまですが、鉄が不足することで起こる貧血が『鉄欠乏性貧血』です。」
新見先生「血液は、からだ全体に酸素を運ぶ働きをしています。その役割を担っているのが、赤血球に含まれるヘモグロビンです。このヘモグロビンをつくるために欠かせないのが『鉄』で、鉄が不足するとヘモグロビンも足りなくなってからだに十分な酸素を運べなくなり、立ちくらみ、息切れ、めまい、ふらつき、頭痛などの症状が現れます。こうした症状はじわじわと出てくるので自覚しづらく、気づかないうちに鉄欠乏性貧血になっていることもよくあります。」
更年期世代はとくに要注意!
月経がある女性は鉄が不足しやすいため、鉄欠乏性貧血になりやすいのだと新見先生はおっしゃいます。40代以降の女性にとって、「更年期」は気になるワードのひとつ。更年期と鉄欠乏性貧血との関連性はあるのでしょうか?
新見先生「更年期は、ざっくりいうと50歳±5歳の年代のことです。鉄欠乏性貧血と更年期に直接的な関連があるわけではありませんが、この年代は子宮筋腫がある女性も少なくありません。子宮筋腫や子宮内膜症の人は、月経時の経血量が多い傾向があり、より貧血になりやすいと考えられます。夜用のナプキンを頻繁に取り替えるくらい経血量が多い人は、鉄欠乏性貧血になりやすいので要注意です。」
鉄欠乏性貧血はセルフチェックでわかる?
「鉄欠乏性貧血」の初期症状はじわじわとあらわれるため、なかなか自覚しづらいことが特徴だといいます。では、どのようにして鉄欠乏性貧血に気がついたらいいのでしょうか?
新見先生「鉄欠乏性貧血は、血液検査で簡単にチェックすることができます。企業に勤めている場合は、健康診断の項目に含まれていることが多いので、そこで気づくことができるでしょう。
定期的な健康診断を受ける機会がなく、立ちくらみや息切れ、めまいなどの症状に困っている、月経量が多くて貧血が心配という場合は、かかりつけの内科クリニックに相談して、血液検査をしてもらうといいでしょう。
もしクリニックで相談するのは気がひける、時間がないという場合には、遠隔診療(オンライン診療)を活用するのもひとつの方法です。遠隔診療では、医師が気になる症状などを問診して、受診の必要性や受診先を相談することができます。オンラインによる保険診療を行っている「出雲漢方クリニック」もそのひとつ。遠隔診療を行っているクリニックは増えているので、受診しやすい、相談しやすいところを知っておくと安心です。」
オンライン診療は新見先生ご自身も使っているとのこと。自宅にいながら的確な診察を受けられるのは安心ですね。
新見先生「セルフチェックとしては、目の下を指で軽く引っ張って、下まぶたの裏側(眼球結膜)の色を見る方法があります。」
新見先生「この部分が白い場合は、血液が薄い、すなわち鉄が不足している可能性があります。自分だけで判断できないときは、友人やパートナーと比べてみるのもいいでしょう。」
食生活が偏っているときは、週1回「レバー串」を食べて
鉄が不足することによって起こる「鉄欠乏性貧血」。予防のために、ふだんの生活ではどんなことに気をつけたらいいのでしょうか?
新見先生「予防には、不足した鉄を食事で補うことが大切です。鉄は、さまざまな食材に含まれているので、日頃からバランスの良い食事ができていれば、それほど気にする必要はありません。
ただし、コンビニ食やカップ麺など、偏った食生活を続けている人は、十分な鉄を食事で補えていない可能性があるので、注意が必要です。
鉄の補給として私がおすすめしているのが、『週1回焼きとりのレバーを食べること』です。」
新見先生「そのほか、赤貝・めざし・かつお・マグロ・納豆・小松菜など、鉄が多く含まれている食材を意識的に食べるようにしましょう。
食生活を変えても症状が改善しないようなら、鉄剤という薬で補います。もし子宮筋腫や子宮内膜症で経血量が多く、鉄剤でも不足分を補えないときは、低用量ピルで月経を休ませる、子宮筋腫や子宮内膜症そのものを手術で取り除くこともできます。心配なことがある場合は婦人科で相談してみましょう。」
生理が重い人や食生活が偏っている人はとくに気をつけたい「鉄欠乏性貧血」。気になる方は、健康診断を受けたり、かかりつけのクリニックで相談したりしてみましょう!