教えてくれたのは……糖尿病専門医・田中祐希院長
三鷹駅前たなか糖尿病・内科クリニック院長
「一人ひとりの幸せを応援」しながら、糖尿病専門医による治療を行う。クリニックホームページ内の院内紙にて、体験記、旬野菜の糖質オフレシピなど、お役立ち情報を公開中。
食生活に問題がなく肥満でもないのに発症する「糖尿病」
糖尿病には、生活習慣や肥満、遺伝的な体質によって発症する2型に対して、原因不明である日突然発症する1型糖尿病があります。
1型糖尿病と診断された45歳女性の事例をご紹介します。
気づいたきっかけ・自覚症状
健診で血糖が高いと言われたが、医療機関は数年間受診せずにいた。
2023年に強い倦怠感と体重の減少があり、糖尿病の検査を希望して受診。受診したところ、HbA1c 15.3%(6.5%以上で糖尿病と診断)、食後血糖 504mg/dl(正常値では70-160mg/dlの範囲で上下)と、明らかに高い数値を認めた。
検査の結果、抗GAD抗体(1型糖尿病において検出される事がある抗体)が陽性で、「緩徐進行1型糖尿病」と診断され、腎障害もすでに進み始めている事がわかった。
◆1型糖尿病とは……?
ある日突然発症するタイプの糖尿病で、生活習慣によらず誰でもなりうる可能性があるタイプの糖尿病です。
1型糖尿病には、
- 自身の膵臓のインスリンを作る能力が徐々に低下、概ね3か月以内にインスリン分泌が枯渇する急性発症1型糖尿病
- 1週間程度でインスリン分泌が枯渇する劇症1型糖尿病
- 3か月以上の期間をかけて徐々にインスリン分泌が枯渇する緩徐進行1型糖尿病
があります。
改善・治療方法
本症例では特に暴飲暴食はなく肥満もありませんでしたが、緩徐進行1型糖尿病により、数年にわたって膵臓のインスリンを作る能力が低下、枯渇したため高血糖になったと考えられます。インスリン治療を開始後は、HbA1cは15.3%から6.5%まで改善を認め、喉の渇きもなくなっていきました。
減っていた体重も概ね元に戻り、インスリン治療も継続。1型糖尿病のように膵臓のインスリンを生産する能力が極度に低下、枯渇している場合は、適切なインスリン治療が必要だと考えます。
自覚症状がない場合でも、血液検査で正常値よりも高い場合には早めに医療機関を受診することが大切です。「健康だから大丈夫」と過信せず、健康診断を定期的に受けるなどして、将来の健康や生活の質を守りましょう。