教えてくれたのは……森 久仁子先生
産婦人科専門医、医学博士。大阪医科大学を卒業後、同大学産婦人科学講座に入局、同大学産婦人科学講座助教、和歌山労災病院をへて、平成25年和歌山市に森女性クリニックを開院。産婦人科としての枠組みだけではなく、女性医療の充実を目指すべく診療を行っている。
「プレ更年期」とは?
「30代後半から40代前半の女性において、月経不順・のぼせ・ほてり・不安感・イライラ感など更年期障害に似た症状が起きることを、一般的に『プレ更年期』と表現します」とおっしゃるのは、産婦人科専門医の森久仁子先生。
森先生によると、「プレ更年期」という言葉は学会や各種ガイドラインで用いられるような医学用語ではなく、メディアから広がった言葉なのだそうです。
森先生 「月経不順やのぼせ、イライラ感などの症状は、女性ホルモンの分泌量の低下にともなって『更年期』にあらわれることが多いものです。
『更年期』とは、閉経前後5年間ずつ、計10年間のことをいいます。日本人女性の平均閉経年齢は約50歳で、45〜55歳ごろが更年期の目安です」
森先生 「しかし、更年期ではない時期に、女性ホルモンの分泌量が低下していなくても、月経不順やのぼせ、イライラ感などの症状が出ることがあります。これが一般的にいわれるプレ更年期なのです」
「プレ更年期」と「更年期」はどう違う?
アラフォー女性に月経不順やのぼせ、不安感などの症状があらわれた場合、プレ更年期か更年期かを見分けることはできるのでしょうか?
森先生は、「症状だけで判別することはできません」とおっしゃいます。婦人科では、血液検査で卵胞刺激ホルモン(FSH)と女性ホルモンの数値を調べ、いずれも正常値の場合はプレ更年期、卵巣の機能低下を確認した場合は更年期と判断するのだそうです。
森先生 「そのほかに基礎体温を測るという方法もあります。基礎体温が低温期と高温期にわかれていれば、プレ更年期であると考えられるでしょう」
「プレ更年期」と「PMS」は見分けられる?
不安感やイライラ感といった症状は、PMS(月経前症候群)の症状ともよく似ています。プレ更年期とPMSは、見分けられるのでしょうか?
森先生 「どちらも腹痛・頭痛・倦怠感・むくみ・精神不安・ほてり・のぼせがおきることが多く、症状だけで判別することはできません。
婦人科では、月経前に症状がひどくなり、月経が来ると症状が落ち着くというように、月経周期にともなって症状が変動するようなら『PMS』を疑います」
森先生 「一方、月経周期に関係なく、常に症状があり、血液検査で卵胞刺激ホルモン(FSH)・女性ホルモンの数値低下がなければ、『プレ更年期』を疑います」
今日からできる!「プレ更年期」の症状を楽にする5つのポイント
わずかな症状であっても継続すると、日々の生活にも差し障りがありますよね。プレ更年期による不調を少しでも軽くするには、どのようなことに気をつけたらいいのでしょうか? 森先生に教えていただいた5つのポイントをシェアします。
適正体重をめざす
森先生 「一般的に、BMIの値が25以上の場合を肥満と考えます。肥満がプレ更年期の不調と関係している場合があるので、もしBMI値が25を超えるようなら、適正体重をめざしましょう」
【BMIと適正体重の計算方法】
- BMI = 体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
- 適正体重 = 身長(m)×身長(m)×22
禁煙する
森先生 「喫煙している場合は、禁煙などの生活指導を行うことで、プレ更年期の症状が軽くなることがあります。自分ではやめられないようなら、医療機関に相談しましょう」
アルコールはほどほどに
森先生 「アルコールを飲むことが、ほてりやのぼせなどのリスク因子になるという報告があります。アルコールの摂取はほどほどに留めておくといいでしょう」
自分なりの「リラックス方法」を見つける
森先生 「30代後半から40代前半は、仕事・子育て・介護などで忙しい時期でもあります。ストレスにより自律神経が乱れやすい環境にあるため、なおさら症状を強く感じるということも考えられます。アロマセラピーや西洋ハーブを取り入れるなど、自分なりのリラックス方法を見つけましょう」
婦人科で相談する
森先生 「つらい症状があるときは、婦人科を受診するのがおすすめです。漢方療法やサプリメント服用など、症状にあった対策を医師と相談しましょう。サプリメントには、女性ホルモンと似た作用や、ホルモンバランスを整える作用がある『エクオール』などがあります。プレ更年期症状の改善に、低用量ピルを用いた治療が有効であるという報告もあります」
プレ更年期の症状に悩まされているようなら、まずできることから始めてみてはいかがでしょうか。つらい症状があるときは、ためらわず婦人科を受診して相談しましょう!