教えてくれたのは……森 久仁子先生
産婦人科専門医、医学博士。大阪医科大学を卒業後、同大学産婦人科学講座に入局、同大学産婦人科学講座助教、和歌山労災病院をへて、平成25年和歌山市に森女性クリニックを開院。産婦人科としての枠組みだけではなく、女性医療の充実を目指すべく診療を行っている。
意外と知らない「子宮頸がん」検診結果の見方
前回、子宮頚がんになるリスクが高い人の特徴と進行した場合の症状について、ご紹介しました。そこで大切になってくるのが、子宮頚がん検診です。
子宮頸がん検診を受けて結果を見たときに、「このアルファベットって、もしかして……」と焦った経験はありませんか? 意外と知られていないのが、検診結果の見方。結果に記されているアルファベットの解釈の仕方について、森先生に教えていただきました。
森先生「子宮頸がん検診は子宮頸部の細胞をブラシで採取し、顕微鏡で観察します。この顕微鏡の検査を細胞診といいます。細胞診の判定はベセスダシステムという判定法で行われます」
ベセスダシステムによる判定の見方は、下記のとおりとのことです。
・NILM:異常なし
・ASC-US:軽度な異型はあるが、LSILの基準を満たさない
・LSIL:軽度異形成を疑う
・HSIL:中程度異形成や高度異形成、上皮内がんを疑う
・ASC-H:HSILを除外できない異型扁平上皮細胞がある
・SCC:扁平上皮がんを疑う
・AGC:腺系の細胞の異常を疑う
・AIS:子宮頸部腺がんの初期を疑う
・adenocarcinoma:子宮頸部腺がんを疑う
森先生「細胞診が『ASC-US』であれば、ハイリスク型HPVに感染していないかを調べるHPV検査をします。この検査が陽性であれば、精密検査が必要となります。
細胞診が『LSIL』『HSIL』『ASC-H』『SCC』『AGC』『AIS』『adenocarcinoma』であれば、はじめから精密検査をします。細胞診で得られた結果は全て“疑い診断”であり、細胞診のみで診断が確定することはありません」
精密検査が必要となった場合
細胞診で異形成やがんの疑いがあるとされた場合、次に受けるのはどのような検査なのでしょうか?
森先生「精密検査が必要となった場合には、まずコルポスコープいう機械で子宮膣部を拡大して観察し、病変が疑われる場所から、数ミリの組織を採取して顕微鏡で調べます。この顕微鏡の検査を組織診といいます。そして、この組織診の結果で診断が確定となります。
軽度異形成や中程度異形成は自然治癒することがあるため、定期的な検査を受けながら経過観察になります。高度異形成や上皮内がんや扁平上皮がん・腺がんの場合には手術が必要になります」
早期発見できれば治癒率が高い「子宮頸がん」
初期には自覚症状がほぼないとされる子宮頸がん。気づいたときにはかなり進行していた、ということがないように「定期的ながん検診が大切」なのだと、森先生はおっしゃいます。
森先生「子宮頸がん検診は厚生労働省の『がん予防重点健康教育およびがん検診実施のための指針』において、20歳以上を対象とした2年に1回の定期的な受診が推奨されています。
子宮頸がんが進行すると、治療が困難になるだけでなく、子宮や卵巣を摘出しなければならなくなる可能性があります。早期の子宮頸がんや高度異形成で発見できれば、子宮頸部を部分的に摘出する手術(子宮頸部円錐切除術)で治療でき、治癒率も高いです。
初期には症状がほとんどないため、早期発見のためには、定期的にがん検診を受けるようにしましょう。HPVに感染して20年以上かけてがんになる場合もあります。性交渉をする機会がなくなっても、性交渉の経験がある人であれば、がん検診は必要です。不正性器出血などの症状があれば、医療機関を受診し、早めに検査を受けましょう」
忙しいから、恥ずかしいから、痛そうだからといった理由で、子宮頸がん検診に対して後ろ向きになっている方もいるかもしれません。しかし、わずかな時間で病気のリスクを減らすことができると前向きに捉え、将来の健康を守ることにつなげられるとよいですね。