教えてくれたのは……福田 頌子先生
愛知医科大を卒業後、大学病院での診療をしながら、同大学にて博士号を取得。現在は愛知県尾張旭市にて「あさひの森 内科消化器クリニック」を開業。消化器病専門、消化器内視鏡専門医でありクリニックでは胃カメラ、大腸カメラも行い、「便秘下痢外来」を開設し多くの方の診療を行っている。
下痢が病気のサインになることも
福田先生によると、下痢が続くことが病気のサインになる可能性もあるとのこと。考えられる病気には、どのようなものがあるのでしょうか。
福田先生「下痢が続く場合に考えられる病気は、潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群下痢型、甲状腺機能亢進症などが挙げられます。過敏性腸症候群のように体質的な病気の場合や、潰瘍性大腸炎、甲状腺機能亢進症などのように治療の必要がある病気の場合もあります」
下痢が続いているときに考えられる「3つの病気」の特徴
上記に挙がった病気の症状や原因について、福田先生に詳しくうかがいました。
下痢が続いているときには「病気が隠れているかもしれない」と捉えて、自己判断しないことが大切なのだそうです。
1.潰瘍性大腸炎
大腸の内側の粘膜に炎症が起こり、潰瘍(ただれ)が形成される疾患です。潰瘍性大腸炎の主な症状の一つは下痢で、血液が混ざったり「白いモヤモヤ」が便に混ざることもあります。
一般的に若年成人から中年にかけて発症することが多いですが、どの年代でも発症します。
2.過敏性腸症候群
大腸に腫瘍や炎症などの病気がないにも関わらず、下痢や腹痛、腹部の張りなどの違和感が続く状態のことを指します。
過敏性腸症候群は下記の4つのタイプにわかれます。
- 便秘症状が主となる「便秘型」
- 下痢症状が主となる「下痢型」
- 便秘と下痢を繰り返す「混合型」
- どのタイプにも分類しにくい「分類不能型」
好発年齢は、20代~40代です。
3.甲状腺機能亢進症
甲状腺が過剰に活動し、体内の代謝が加速する状態です。甲状腺機能亢進症によって代謝が亢進すると、消化吸収や腸管の運動が通常よりも速くなります。それにより、下痢の症状が現れます。
「いつものこと」と放置するのはNG
下痢が続くときに気をつける必要があるのが「低カリウム血症」。長期にわたって続く、症状が重い場合には放置するのは危険なのだと、福田先生は解説します。
福田先生「カリウムは、細胞内で重要な役割を果たす電解質であり、神経伝達や筋肉収縮などの生理機能に関与しています。そのため、下痢が続いて低カリウム血症の状態になると、筋肉のけいれん、疲労感、不整脈、心拍数の増加などの症状が出る場合もあります。
重篤な場合には命に関わるリスクが生じる可能性もあるので、あまりにも下痢が多く、身体のだるさが強いときには医療機関を受診してください。点滴にてカリウムを補充し、改善が可能です。
また、潰瘍性大腸炎などの難病が潜んでいる場合もあります。治療開始が遅れることで症状が悪くなり、難治性になってしまう場合もあるので、“いつものことだから”と放置せず、消化器内科の受診を検討しましょう」
症状が続くときには、適切な治療や検査を受けることが重要です。このような病気の可能性があることを知っておき、早期発見・早期治療につなげられるとよいですね。