教えてくれたのは……沢岻 美奈子(たくし みなこ)先生
日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医。女性ヘルスケア認定医。神戸にある、医療法人社団 沢岻美奈子女性医療クリニック理事長。子宮がんや乳がん検診、骨粗鬆症検診まで女性特有の病気の早期発見のための検診を行う。診療では、更年期を中心にホルモンや漢方治療だけでなく、カウンセリングや栄養療法も取り入れている。
貧血に隠れている可能性がある「3つの婦人科疾患」
前回の記事では、「40代女性が貧血になりやすい理由」について伺いました。40代は特に、身体の変化やライフスタイルによって、健康リスクが高まりやすくなる年代。貧血には、どのような病気が隠れている可能性があるのでしょうか。
沢岻先生:40代女性の貧血の背景には、単なる鉄分摂取不足だけではなく、婦人科的に見逃してはいけない病気が隠れている場合があります。毎月の月経自体が女性にとって鉄分不足になる大きな原因ですが、さらに子宮の疾患が原因で月経量がさらに増え、過多月経につながることがあります。その代表的な疾患が、子宮筋腫と子宮内膜症です。
子宮筋腫
沢岻先生:子宮筋腫は、婦人科の良性の病気の中で最も多い疾患です。大きさや数に個人差はありますが、5人に2人が筋腫を持っていると言われています。筋腫が子宮のどの部位にできるかによって、月経量が多くなる「過多月経」の原因になることがあります。月経のたびに多量の鉄が失われるため、貧血が進行しやすく、疲れやめまいといった症状が現れやすくなります。また、筋腫が大きくなると下腹部の違和感や頻尿などの症状も見られるため、早めの婦人科受診が必要です。
子宮内膜症
沢岻先生:次に多い疾患として挙げられるのが、子宮内膜症です。この病気は、本来子宮の内側にあるべき内膜組織が、卵巣や骨盤内など子宮以外の場所にできる病気です。強い月経痛や不妊の原因となり、出血量が増えることで貧血を招くこともあります。特に卵巣に血の塊(チョコレート嚢胞)ができた場合は、経過観察や手術が必要になることもあります。
子宮体がん(子宮内膜がん)にも要注意
沢岻先生:40代後半になると注意したいのが、子宮体がん(子宮内膜がん)です。閉経前後に発症率が高まり、初期症状として不正出血が見られることがあります。出血が続くと慢性貧血を引き起こすことがあり、貧血の検査をきっかけに発見されるケースもあります。特に、閉経後の出血や生理以外の時期に出血がある場合は、早急に婦人科を受診すべきサインです。
そのほかに注意したい病気
沢岻先生によると、婦人科以外にも注意すべき病気があるとのこと。見過ごされてしまうことがないように、症状をしっかり確認して適切な検査を受けることが大切だそうです。
沢岻先生:婦人科疾患以外にも、胃潰瘍や大腸ポリープ、大腸がんなど、消化管からの出血が貧血の原因となることもあります。鉄剤を服用しても貧血が改善しない場合や、便が黒っぽい、胃もたれといった症状がある際は、消化器内科での精査も必要です。つまり、40代女性の貧血は「年齢のせい」や「忙しさのせい」で片づけるのではなく、その背景に隠れた病気を見逃さないことが大切です。定期的な血液検査と婦人科を受診し、自分の体を守るための第一歩を踏み出しましょう。
貧血の症状が見られる場合、改善のためにはまず原因を明らかにすることが大切だと沢岻先生は言います。次回の記事では「具体的な改善方法」をご紹介します。