教えてくれたのは……菊池 大和先生
医療法人ONE きくち総合診療クリニック理事長 菊池 大和先生
日本救急学会救急科専門医、日本外科学会外科専門医、日本慢性期医療協会総合診療認定医。
平成29年4月11日に「きくち総合診療クリニック」を開院し、令和元年に医療法人ONEを設立。「病気を診て、人を診て、一人でも多くの命をやさしく包み込む医療を提供する」ことを診療基本理念としている。
帯状疱疹のよくある初期症状とは?〈事例10選〉
前回の記事では「帯状疱疹の好発部位と起こりうる合併症」について、ご紹介しました。
実際に帯状疱疹になった方は、どのような症状で気づき、どのような治療をして完治・改善していったのでしょうか? よくある事例を教えていただきました。
<case1>
虫刺されだと思っていたが、3日経って背中に発疹が広がる。ピリピリと痛くなってきたので受診。視診上、水疱を伴う皮疹が集まっており、帯状疱疹と診断。抗ウイルス薬を1週間分と炎症を抑える軟膏、鎮痛剤を処方し、1週間後にかさぶたになって終了した。
<case2>
1週間前から、頭の右だけピリピリと痛かった。そこから6日ほど経ち、耳の中に発疹ができたので受診。帯状疱疹と診断し、投薬治療して軽快した。
<case3>
3日前に胸が痛かった。家族に見てもらったら、背中に皮疹があった。3日経って胸にも皮疹が出てきたので受診。肋間神経に沿った痛みと皮疹で、帯状疱疹と診断。抗ウイルス薬と鎮痛剤で軽快した。
<case4>
1日前から胸に皮疹が出てきた。翌日になって一気に広がってきたので受診。しかし、広がりがひどかったため、その後も半年痛みが続き、鎮痛剤を内服している。
<case5>
仕事のストレスで不眠が続いていた。右胸に痛みがあったが、そこまで強くないので放置していた。1週間経っても治らなかったので受診。背中を見ると発疹があり、帯状疱疹と診断。1週間投薬して軽快した。
<case6>
右足に痛みを感じたので受診。認知症もあり診断が難しかったが、翌日に再度受診してもらい、発疹を確認。投薬して軽快した。
<case7>
耳の中に痛みを感じたので受診。耳の中に発疹を認め、投薬した。1か月経っても、まだ痛みが続いている。
<case8>
右顔面が突然動かなくなり、その翌日に目の周りに発疹が出てきたので受診。帯状疱疹による顔面神経麻痺と診断し、投薬。現在は顔面神経麻痺のリハビリに通っている。
<case9>
背中に虫刺されがあるとのことで受診。痛みはなし。帯状疱疹が疑わしいが経過観察し、3日後に受診してもらったところ、発疹が帯状にでているために投薬開始。1週間後に軽快した。
<case10>
お腹の痛みがあったので受診。まだ発疹はなし。その翌日に受診したところ、ピリピリと痛みがあり、発疹が出ているため投薬。1週間後に軽快したが、痛みは3か月続いている。
10つの事例を見ると、帯状疱疹が発症する部位はさまざまであるうえに、突然その部位に痛みや違和感を感じるケースが多いことがわかります。
単なる“虫刺され”だと軽い気持ちで受診したら帯状疱疹だった……ということも多いようなので、注意が必要です。
帯状疱疹後神経痛を防ぐため現在できる「4つのこと」
上記の事例にもあったとおり、帯状疱疹は重症化してしまうと神経痛が残ることも。つらい痛みが続いてしまう神経痛を防ぐために、できることはあるのでしょうか?
菊池先生「まずは、帯状疱疹にならないことが一番です。
- 疲れやストレスをためない……十分な睡眠をとり、ストレス発散を上手に行う。
- バランスのとれた食事を摂る……たんぱく質を多く、糖質・脂質を控えめにすることを意識する。糖尿病を持っている方は、血糖のコントロールがより必要です。
など、普段から健康に気をつけることが大切と言えます。
つぎに、重症化しないためのワクチン接種を受けることです。ワクチンは接種すると20年有効と言われています。帯状疱疹の発症は50歳以上の方に多いので、該当する方は検討するとよいでしょう。
そして、早期発見・早期治療も重要です。痛みだけで受診する方は少ないですが、皮疹が出てすぐ受診すれば、抗ウイルス薬を1週間内服すると軽快します。皮疹が出てから3日以内に受診していただくのがベストです。」
現在では、ワクチン接種費用の一部を助成する自治体も増えています。身体に異変を感じたときに早めに適切な治療を受けられるように、まずは帯状疱疹について「知る」ことが大切ですね。
※助成の有無は、自治体によって異なります。お住まいの自治体のホームページなどで確認してください。