教えてくれたのは……高木 謙太郎院長
東京慈恵会医科大学附属柏病院、東京都立墨東病院勤務などを経て、2022年に「予防医学を世の中に広め、健康寿命を伸ばし社会に貢献する」を理念に、四谷内科・内視鏡クリニックを開院。「胃がん、大腸がんで亡くなる人をゼロに」をミッションに、人と人のつながりを大切にした、専門的で高度な医療の提供を行う。
どんな病気が考えられる?
トイレに立ったとき、便の色がいつもと違っていたり、血便が出たりすると、不安になりますよね。40代女性の場合、どのような病気の可能性が考えられるのでしょうか。
四谷内科・内視鏡クリニックの高木謙太郎院長によると、「便の色」によって次のような病気が考えられるのだそうです。
便が赤色の場合
- 内痔核・外痔核・切れ痔
- 大腸ポリープ
- 大腸がん
- 大腸憩室出血
- 虚血性腸炎
- クローン病
- 潰瘍性大腸炎
便が黒色の場合(タール便)
- 胃がん
- 胃十二指腸潰瘍
- 大腸がん
高木院長 「こうした疾患のなかで40代女性に最も多いのが、いわゆる『いぼ痔』です。肛門の外側にできるものは『外痔核』、肛門の内側にできるものは『内痔核』に分類されます」
高木院長 「肛門の内側にできる『内痔核』は、痛みは伴いませんが、肛門のかゆみや出血などの症状がみられます。便秘、座りっぱなし、過度のアルコール、冷え性が原因となるため、生活習慣の改善が重要です。検査方法は、肛門鏡や大腸内視鏡検査があり、治療には患部に直接塗る外用薬(坐薬、注入軟膏)と、内服薬(錠剤や漢方薬)があります。手術で治療することもできます」
高木院長 「一方、肛門の外側にできる『外痔核』は、腫れや痛みが主な症状で、視診や触診で診断します。治療は患部に直接塗る外用薬(坐薬、注入軟膏)と内服薬(錠剤や漢方薬)があります。外科的治療には、痔核の根元にある血管を縛って外側の皮膚と一緒に切除する方法があります」
自己判断はNG。受診して相談を
いぼ痔に加えて、40代女性が注意しておきたいのが、「胃がん、大腸がん」だと高木院長。次のような事例が、実際に起きているのだそうです。
高木院長 「血便が出て、痔が原因だと考えていたけれども、大腸内視鏡検査をしてみたところ大腸がんだったという事例は、しばしばあります。また、稀ではありますが、痔だと思っていたら肛門管癌だったという事例もあります」
高木院長 「こうした事例では、血便があったが、大腸内視鏡検査を受けることに積極的になれずに、血便の原因は痔であると思い込んで検査を回避していたケースが多いです。
胃がん・大腸がんは早期に発見すれば、内視鏡による切除が可能です。進行すると外科的手術が必要となり、場合によっては抗がん剤治療が必要になってくるケースもあります。病気の早期発見には定期的な胃カメラ・大腸カメラを受けることが大切です。血便の原因が痔だとしても、大腸がんが増加する40代以上の方で過去に内視鏡検査を受けたことがない方は、必ず検査を受けていただきたいと思います」
健康な便の4つの特徴
病気のサインにいち早く気づくには、日常生活の中でどのようなことに注意するといいのでしょうか。高木院長は、「排便時に便回数、便色調(血液付着の有無)、便の太さを観察することが重要です」として、健康な便の4つの特徴を挙げています。
- 【色】茶色から黄土色
- 【形状】バナナ型(太く、ブツブツ切れていない)
- 【排便回数】1回の排便で1~3行 ※便の本数は行で数えます。具体的な長さの定義はありません
- 【排便のしやすさ】いきまなくても出る
便の様子がいつもと違うと感じたときは、「きっと痔なんだ」と自己判断せず、医療機関を受診して相談・検査することが大切なのですね。高木院長に教えていただいた観察ポイントを参考に、ふだんから気にかけておきましょう。