教えてくれたのは……森 久仁子先生
産婦人科専門医、医学博士。大阪医科大学を卒業後、同大学産婦人科学講座に入局、同大学産婦人科学講座助教、和歌山労災病院をへて、平成25年和歌山市に森女性クリニックを開院。産婦人科としての枠組みだけではなく、女性医療の充実を目指すべく診療を行っている。
女性のがんの中で最も多い「乳がん」
40代以降の女性が罹患するがんの中で、最も多いとされている「乳がん」(※)。年齢を重ねるにつれ、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。乳がんがどのような病気であるのか、年齢によっての罹患率の変化について教えていただきました。
森先生「乳がんとは、乳房にある乳腺にできるがんです。乳房はほとんどが乳腺でできており、乳腺は母乳をつくる小葉と、小葉でつくられた母乳を乳頭に運ぶ乳管にわけられます。乳がんの約90%が乳管から発生する乳管がんで、約5~10%が小葉から発生する小葉がんです。
乳がん罹患率は20歳代後半から上昇し始め、30歳代後半から45歳までは急増し、45歳から69歳までピークが続き、その後は減少します。女性のがん罹患の約22%を占めており、女性のがんの中では最も頻度が高いです。2021年の統計では、女性の部位別のがん死亡数は4位ですが、年代別に見ると30歳~64歳まででは1位になります」
※参考:2019年 日本対がん協会「がんの部位別統計」
乳がんになるリスクが高い人の「11個の特徴」
森先生によると、乳がんにかかりやすい人には特徴があるとのこと。当てはまる人は、乳がんリスクが高いといわれているそうです。
以下、11個の特徴をチェックしてみましょう。
1.初経年齢が早い
2.閉経年齢が遅い
3.出産経験がない
4.初産年齢が遅い
5.授乳経験がない
6.喫煙習慣がある
7.アルコール飲料を摂取する習慣がある
8.肥満
9.良性乳腺疾患を抱えている
10.遺伝
11.ホルモン補充療法(エストロゲン+黄体ホルモン併用療法)を長期的に使用している
森先生「乳がんの5~10%は『遺伝』が関係しています。乳がんにかかった人が自分の親や子や姉妹など遺伝的に近いほど、血縁者のうち乳がんにかかった人が多いほど、乳がんの発症リスクが高くなる傾向にあります。
更年期障害の治療で用いられる『ホルモン補充療法(エストロゲン+黄体ホルモン併用療法)』では、長期的に使用することで、乳がんリスクが増加するといわれています」
年齢をはじめ、月経や出産、生活習慣、遺伝、ホルモン治療など、乳がんのリスクになりうる要因は多岐にわたるのですね。
注意すべき「乳がん」の初期症状とは
「もしかして……」と思ったときに気になるのが、乳がんの初期症状や進行している場合の自覚症状。どのような症状があるのでしょうか?
森先生「主な症状は乳房のしこりや違和感です。乳頭から血性の分泌物がでることや、乳房にえくぼのようなへこみを生じることもあります。乳房皮膚の赤みや腫れ・ただれ・熱っぽさ・痛み、脇の下の腫れやしこりから発見されることもあります」
早いタイミングで胸の異変に気づくために大切になってくるのが、セルフチェックです。具体的にどのようにチェックするとよいのか、次回の記事では「乳がんの早期発見に必要な4つのこと」についてご紹介します。