教えてくれたのは……日本眼科学会専門医 黒木明子先生
長崎大学眼科入局後、同大学付属病院および関連病院勤務、ペンシルベニア大学留学を経て、2008年に医療法人くろき眼科を開業。患者の不安を少しでもやわらげられるように、最新の医療機器を用い、確実で誠実な診療とわかりやすい説明を心がけている。医学博士。
いつから老眼になるの?
「スマホや本の文字が読みにくくなった」と感じている方はいませんか? 近くのものが見えにくくなるのは、老眼の症状のひとつ。何歳ごろからこうした症状が出やすくなるのでしょうか?
医療法人くろき眼科の黒木明子先生は、「老眼の感じ方は個人差がある」としたうえで、次のように解説します。
黒木先生 「軽い遠視の方は、元々遠くにピントが合っているので、老眼の出始めに感じる『近くが見えにくくなる』状態を実感しやすい傾向があります」
黒木先生 「一方、もともと近視の方は、老眼が出ていても、元々近くにピントが合っているので、40代に入っても老眼を実感しない方も多いです。近視の方は、遠くをみるときは眼鏡などを使用していることが多く、眼鏡を外せば手元は十分見えるので、日常生活に支障が出ない方が多いようです」
見えにくさを我慢していても、老眼は改善しない
黒木先生は、老眼は「すべての人に起こる」とおっしゃいます。老眼を改善する方法はあるのでしょうか?
黒木先生 「残念ながら、老眼の改善方法はありません。そして、見えにくさを我慢していても、老眼は改善しません。むしろ、見えにくい状態のまま我慢して生活していると、目の負担となって、目が疲れやすくなり、ひどくなると肩こり、頭痛、吐き気、不眠などの症状まで起こることがあります。眼科や眼鏡店で検眼してもらい、適切な眼鏡やコンタクトレンズを使用することをおすすめします」
じつは黒木先生自身、老眼の症状が出たばかりのころは、老眼になったことを認めたくないという気持ちから、眼鏡を使わないようにしていたのだといいます。
黒木先生 「でも、見えにくいことでイライラしたり、目が疲れたり、自信がなくなってきたりしたんです。それで、あっさり老眼鏡を使用することにしました。すると、とても快適になりました。最近は遠近両用のコンタクトレンズも出ています。生活スタイルに合わせてどのようなものを使うといいのか、専門家に相談してみるといいですよ」
やりがち!老眼を進める2つのNG行動
では、なるべく老眼の症状を進めないためには、日常生活でどのようなことに気をつけたらいいのでしょうか。黒木先生に教えていただいた「老眼を進行させるNG行動」を紹介します。
【NG行動その1】スマホを至近距離で長時間見続ける
スマホなどのデバイスを至近距離で長時間見続けていると、一時的にピント調節機能が悪くなり、老眼のような症状になります。スマホの長時間使用は避け、なるべく目から離して使いましょう。
【NG行動その2】睡眠不足や過度のストレスがある
一般的に、睡眠不足や強いストレスを受けていると、目の機能がきちんと発揮されず、通常より見えにくく感じます。特に40代後半からは、更年期症状など、精神的・肉体的にさまざまな症状が出やすい時期です。リラックスできる時間をできるだけ確保し、心身の状態をよくすることで、目の症状が緩和されやすくなります。
老眼の症状を進めないようにするためには、「自分を大切にする時間を持つように心がけてください」と黒木先生。教えていただいた2つのNG行動を避けて、目の負担を減らしましょう!