教えてくれたのは……福田 頌子先生
愛知医科大を卒業後、大学病院での診療をしながら、同大学にて博士号を取得。現在は愛知県尾張旭市にて「あさひの森 内科消化器クリニック」を開業。消化器病専門、消化器内視鏡専門医でありクリニックでは胃カメラ、大腸カメラも行い、「便秘下痢外来」を開設し多くの方の診療を行っている。
「白い便」の原因
福田先生によると、便の色は病気のサインになる可能性もあるとのこと。その一つが“白い便”の場合です。白い便が出ると、どのような病気が隠れている可能性があるのでしょうか。
福田先生「便が白い場合に考えられる病気は、『胆管炎』や『胆管癌』です。
通常の便の色(黄褐色や茶褐色)は、食べ物の消化を助けるために分泌される胆汁に含まれるビリルビンによるもの。ビリルビンは、赤血球の成分であるヘモグロビンが分解されてできたものです。
胆汁は、肝臓で作られ、胆のうに蓄えられます。食べ物を食べると胆汁は胆管という管を通って十二指腸に流れていくのですが、この胆汁の通り道である胆管が詰まったり、胆汁を作る肝臓の働きが悪くなったりすると白っぽい便になります」
白い便が出ているときに考えられる病気の特徴
「胆管炎」と「胆管癌」の症状や原因についても教えていただきました。
白い便が出る以外にも前兆があるとのことなので、いざというときに慌てずに対処できるように知っておきましょう。
胆管炎
症状:腹痛、発熱、尿の色が濃くなるなど。便が白くなると同時に、眼球が黄色くなる黄疸も特徴的。「なんとなく胃が痛い」「なんとなく倦怠感がある」といった、はっきりしない症状の場合も。
福田先生「肝臓で作られ、胆のうに蓄えられていた胆汁が通る道(胆管)が詰まってしまい、詰まった部分で細菌が感染することで引き起こされます。
詰まりの原因は、胆石や胆泥(胆のうにできる泥)、がん(腫瘍)が考えられます。以前から健診などで胆嚢結石を指摘されたことがある方は、胆管炎を引き起こす可能性があるので要注意です」
胆管癌
症状:食欲不振や体重減少、吐き気、黄疸など。
福田先生「胆汁が通る道(胆管)に発生する癌です。胆管癌は比較的まれながらも、治療が難しく、予後が悪いがんの一つです。
胆管が詰まることで起こる、黄疸をきっかけに発見されることが多いと言えます。胆管癌は早期に症状が現れることが少ないため、診断が遅れがちです。黄疸に関しては徐々に進行するため、自身で気づかずに家族に指摘されてはじめて気づく場合もあります」
白い便が出ている場合のNG行動
白い便が出ている場合には「とにかく放置することは厳禁」なのだと、福田先生はおっしゃいます。
福田先生「白い便が出た場合は、胆管が閉塞している可能性が考えられます。胆管炎は放っておくと死にもいたる病気であるうえに、膵炎も同時に起こってしまうことがあります。胃カメラで緊急に胆管の詰まりを取るなどの処置が必要な場合が大半です。
また、胆管癌の場合も早急に治療することが予後を左右するので、症状に気づいた場合は早めに病院を受診してください。その際は、胃カメラを行う可能性がありますので飲食飲水を控えて、内科(できれば消化器内科)を受診しましょう」
排便した後に、自分の便の状態を見ていない方も少なくないかもしれません。自分の健康状態を知る手段として、便のチェックを日々の習慣にしてみてはいかがでしょうか。