教えてくれたのは……森 久仁子先生
産婦人科専門医、医学博士。大阪医科大学を卒業後、同大学産婦人科学講座に入局、同大学産婦人科学講座助教、和歌山労災病院をへて、平成25年和歌山市に森女性クリニックを開院。産婦人科としての枠組みだけではなく、女性医療の充実を目指すべく診療を行っている。
「子宮頸がん」の原因と種類
女性が抱える病気の代表のひとつの「子宮頸がん」。よく耳にはするものの、一体どのような病気なのか詳しく知らない方も少なくないのではないでしょうか。
子宮頸がんの発症原因や種類について、森先生に教えていただきました。
森先生「子宮頸がんは、子宮の入り口(子宮頸部)にできる癌です。30歳代前半から罹患率・死亡率ともに上昇します。近年、若年層(20歳代)での罹患率が増加傾向にあるため、若い人も注意が必要です。
子宮頸がんのほとんどは、ヒトパピローマウイルス(HPV)とういウイルスが、性交渉により子宮頸部に感染することが原因であるといわれています。HPVは皮膚にイボを作るウイルスで100種類以上あり、このうち約15種類のハイリスク型とよばれるものが子宮頸がんを引き起こします。ほとんどは免疫機能で自然に排除されますが、一部が持続感染し、そのうちの一部の細胞が異常を起こし、子宮頸部異形成という状態になります。
子宮頸部異形成は、進行度から軽度異形成、中程度異形成、高度異形成にわけられます。そして、異形成の一部が数年から十数年かけて子宮頸がんにすすむと考えられています。
子宮頸がんは、がんの発生する場所によって、下記の2つに分けられます。
- 扁平上皮がん……子宮頸部にある扁平上皮細胞から発生するもので、全体の約75%を占める。
- 腺がん……子宮の奥に近い腺組織の円柱上皮細胞から発生するもので、約23%を占める。
日本では年々、腺がんの割合が上昇しています。腺がんは検診で発見が困難で転移しやすいため、治りにくいがんとされているのです」
子宮頸がんになるリスクが高い人「6つの特徴」
森先生によると、子宮頸がんにかかりやすい人には6つの特徴があるとのこと。当てはまる人は、子宮頸がんリスクが高いといわれているそうです。
以下、6つの特徴をチェックしてみましょう。
1.性交渉の回数が多い
2.喫煙習慣がある
3.免疫力が低下している
4.出産回数が多い
5.ピルを内服している
6.初回性交年齢が早い
森先生「性交渉による持続的なHPV感染が原因であるため、性交渉の回数が多い人はリスクが高いです。喫煙や免疫低下、出産回数が多いこと、ピルの内服、初回性交年齢が早いなども、子宮頸がんと関連があるといわれています」
初期にほとんど症状がない「子宮頸がん」。進行した場合の症状とは
「子宮頸がんは、初期にはほとんど症状がない」と森先生はおっしゃいます。進行した場合、どのような症状が出てくるのでしょうか?
森先生「進行すると性交時の出血や不正性器出血や異常な帯下(おりもののこと)を認めます。悪臭を伴う帯下や、下腹部痛などがでてくる場合もあります。さらに進行すると、血尿、下血、腰痛や神経痛がでることもあります」
初期に症状がないとなると、重要になってくるのが定期的に健康診断を受けて早期発見につなげることです。
次回の記事では「子宮頸がん検査で『要精密検査』になった場合にどのような検査が必要なのか」、また「早期発見のためにできること」についてご紹介します。