教えてくれたのは……糖尿病専門医・田中祐希院長
三鷹駅前たなか糖尿病・内科クリニック院長
「一人ひとりの幸せを応援」しながら、糖尿病専門医による治療を行う。クリニックホームページ内の院内紙にて、体験記、旬野菜の糖質オフレシピなど、お役立ち情報を公開中。
医療機関を受診せず、悪化していった糖尿病
みなさんは、健診の血液検査の結果の中で「HbA1c」という項目があるのをご存じでしょうか?
HbA1cとは、糖尿病の診断基準となる検査項目で、概ね過去1か月の血糖値を反映する指標のことです。
糖尿病の診断基準は6.5%以上とされています。
受診をせずに4年ほど放置してしまったところ、糖尿病の症状が悪化してしまった42歳女性の事例をご紹介します。
気づいたきっかけ・自覚症状
こちらの方は、2018年の健診でHbA1c 7.1%と高かったのですが、医療機関を受診していませんでした。
その後も1年ごとに健診を受けていましたが、生活に支障もなかったため医療機関は受診しておらず、2022年の年末の健診ではHbA1c 8.9%まで上昇。そのころから、喉の渇き、多尿、疲れやすさが目立つようになったそうです。
また、映画を観に行った際は、頻尿のために2時間続けて座っていることができなくなり、糖尿病の治療希望で受診しました。
改善・治療方法
初診時には、HbA1c 10.4%とさらに上昇しており、空腹時血糖については通常数値が70-100mg/dl程度のところを304mg/dlと、高い数値でした。
1日1回のインスリン自己注射と内服治療の併用を開始したところ、4か月後にはHbA1c 6%台まで改善を認めました。糖尿病による合併症予防のためには、HbA1c 7%未満を維持することが重要です。
その後、1週間に1回のGLP-1注射に変更しましたが、良好な血糖を維持して体重も減量傾向になりました。GLP-1注射は、インスリンとは異なるホルモン治療で食欲を抑え、体重が減りやすい治療方法です。
生活習慣では、夜中に白米を過食していた習慣をきっぱりとやめることができたので、これも血糖の改善、体重の減量に結びついたと言えます。
症状を自覚しないからと放置してしまうのではなく、健診を受けた後の行動が重要です。先延ばしせず、すみやかに医療機関を受診して早期発見、早期治療につなげられるとよいですね。