教えてくれたのは……沢岻 美奈子(たくし みなこ)先生
日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医。女性ヘルスケア認定医。神戸にある、医療法人社団 沢岻美奈子女性医療クリニック理事長。子宮がんや乳がん検診、骨粗鬆症検診まで女性特有の病気の早期発見のための検診を行う。診療では、更年期を中心にホルモンや漢方治療だけでなく、カウンセリングや栄養療法も取り入れている。
40代女性が「貧血」になりやすい理由
ふらつきや倦怠感など、「もしかしたら貧血かもしれない」と感じることはありませんか? 40代の女性が貧血になりやすいのは、身体の変化やライフスタイルが関係していることも多いのだと、沢岻先生は言います。改善のためには、忙しい中でも定期的な健康チェックを受けることが重要なのだそうです。
沢岻先生:女性の貧血は、実は初潮を迎える10代の前半から始まっています。身長が伸び、女性らしい体つきになる思春期には、必要なカロリーが増えるだけではなく、栄養素としての鉄分の需要も急増します。鉄分の必要量に追いつかないまま、毎月の月経によって貧血がゆっくり進行するのです。
40代になると、子宮筋腫や子宮内膜症の一つである子宮腺筋症などの疾患が増えます。それによる過多月経がさらに貧血に追い打ちをかけ、慢性的な鉄欠乏性貧血になっている方が多いのが現状です。
自分のことを後回しにせず、定期的な健康チェックを
沢岻先生:食事からしっかり鉄分を摂取することが、貧血治療のポイントです。しかし、40代の女性は家事や育児に追われ、自分のキャリアや人間関係に悩む中で、規則正しい食事や十分な睡眠時間も確保するのが難しい傾向にあります。その結果、自分のケアが後回しになりがちで、貧血による疲労感や不調が強くなることもあります。
貧血は全身が酸欠状態に陥るのと似ており、頭痛、動悸、めまい、集中力の低下など、更年期の症状とよく似た症状を引き起こすことも。これらの症状が貧血から来ている可能性があることを知らない方が多くいらっしゃいます。「歳のせいだから仕方ない」と諦めてしまいがちな更年期世代ですが、40代の女性こそ定期的な健康チェック、貧血に関する検査を受けることが重要です。月経の前後に特に辛い症状が現れる方は、貧血が隠れている可能性が高いと言えるでしょう。
こんな症状ありませんか?「貧血のセルフチェック」12項目
そこで、より具体的に貧血の症状を確認できるよう、沢岻先生に「貧血のセルフチェック」について教えていただきました。
沢岻先生:貧血の主な症状には、めまい、立ちくらみ、動悸、氷が食べたくなるなどありますが、それだけではありません。「なんとなく調子が悪い」と感じるときや、更年期の症状で最も多い頭痛が、実は貧血によるものである可能性もあります。セルフチェック項目を以下にまとめたので、いくつ当てはまるかをチェックしてみてくださいね。
「貧血」セルフチェック
- 朝起きても疲れがとれない・常にだるい。
- めまいや立ちくらみがよくある。
- 階段を上がっただけで息切れがする。
- 頭痛や肩こりがひどくなった気がする。
- 顔色が悪い、血色がなくなったと言われる。
- 動悸(ドキドキ)が急に起こる。
- 爪が割れやすい・反っている(スプーン状爪)。
- 食べ物ではないものを口にしたくなる(氷・チョークなど)。
- 髪が抜けやすくなった・パサつく。毛が細くなってきた。
- 月経量が多い(ナプキンを2時間ごとに替えるほど)。
- 睡眠の質が悪くなった。
- 傷の治りが悪くなった。ぶつけた記憶はないがアザができやすくなった。
沢岻先生:もし3つ以上当てはまる項目があれば、一度、婦人科や内科で血液検査を受けることをおすすめします。貧血の原因が「鉄欠乏性貧血」の場合、治療すれば症状はかなり改善しますが、子宮筋腫や内膜症などの婦人科の病気が隠れていることもあります。自己判断せず、医療機関でチェックを受けましょう。「たかが貧血」と軽視されがちですが、仕事や家事、さらにはメンタル面にまで影響を及ぼすことがあります。
セルフチェックで3つ以上当てはまる方は、貧血に隠れている可能性のある病気について、不安に感じる方もいらっしゃるかもしれません。次回の記事で詳しくご紹介します。