教えてくれたのは……整形外科医・歌島大輔先生
フリーランス整形外科医として、常に磨き上げ続けている肩関節鏡手術スキルを駆使し、五十肩・腱板断裂などを対象に治療を行っている。また、情報発信ドクターとしての顔も持ち、「正しい医学情報をわかりやすく」をモットーに、情報発信・オンライン教育事業を積極的に展開している。YouTubeチャンネル「すごいエビデンス治療 | 整形外科医 歌島大輔」でも活躍中。
見逃してはいけない「首の痛み」もある
首の痛みというと、肩こりやストレートネックなどを耳にすることが多いのですが、その何倍もさまざまな病気を考えないといけません。
今回は「首の痛みの原因となる病気TOP5」をご紹介します。上位になるほど命に関わり、重要度が上がります。
どの科に相談したらよいのかなど、対策についての情報も併せてお届けするので、ぜひチェックしてみてください(医学論文を交えつつ、歌島先生が独断と偏見でつけたランキングです)。
5位:線維筋痛症
線維筋痛症は、まだまだ未解明な領域が多い病気です。首に痛みが出ることが比較的多いですが、首に限らず全身の痛みに襲われることもあり、女性に多く見られます。
ときに画像検査で異常が指摘できないことがあるので、他人に「気持ちの問題」と片づけられてしまって患者さんをさらに苦しめてしまうこともあります。
後頭部、頸部、肩関節、胸部、腰部および大腿部に痛みが出やすく、右側だけの場合、左側だけの場合、左右両方に症状が出ることもあります。
<受診するとよい診療科>
上記のように多くの部位に痛みの症状が出るので、さまざまな診療科・専門家にまたがるものであり、頼りにできる専門医が少なく難しいとも言えます。
その中でも膠原病内科の先生がより強い専門家だと思いますので、気になる症状がある場合には膠原病内科の先生が地域にいらっしゃるかを調べるのがおすすめです。まずは、かかりつけの整形外科や内科に相談するのもよいと思います。
4位:首の神経の問題
首の痛みとともに腕や手にしびれが走っている場合に考えたいのが、神経の問題です。首の神経の問題は、ざっくり2つに分かれます。
「頚椎症性神経根症」
脊髄から出る枝である、腕や手につながる神経の根っこ(神経根)に問題が出ている状態です。
「腕や手のしびれ」が典型的な症状で、ほとんどは右か左のどちらかに限って症状が出ます。首や肩甲骨付近の痛みも出やすく、その痛みが腕や手の症状よりも先にくることが報告されています。
【参考論文】Yasuhisa Tanaka,et al. Spine(Phila Pa 1976).2006
Cervical roots as origin of pain in the neck or scapular regions
手術を第一にするのではなく、まずは飲み薬などを中心として痛みを抑えつつ、症状が改善しないかどうかを確認することが一般的です。激しい痛み、時間経過をみていくのが難しいほどの症状や事情がある場合に、手術をおこなうことになります。
「頚椎症性脊髄症(頚髄症)」
背骨の中を通る太い神経の幹(本幹)に問題が出ている状態です。加齢によって首の骨の軟骨がすり減ったり、骨が出っ張ったりして靭帯が分厚くなってしまった結果、脊髄神経を圧迫して症状が出ます。
MRIを見れば鮮明に脊髄の状態がわかりますが、「手先の器用さが損なわれる」「歩行障害」が典型的な症状です。
手術せずに進行してしまうと症状改善のチャンスを逃すことになりかねません。手術するタイミングは、よりシビアになります。
<受診するとよい診療科>
頚椎症性神経根症、頚椎症性脊髄症、どちらの場合もMRIや脊髄造影検査などの精密検査で病変が特定できることが多いです。脊椎の専門の整形外科医に相談するのがよいと思います。
3位:首の血管の問題
首の血管の問題として考えられるのは、「血管炎」と「動脈解離」の2点です。
「血管炎」
血管の炎症が起こり、血栓ができる病気です。そんなに頻度の高い病気ではありませんが、それが脳にできると脳梗塞になるので、一大事です。
熱が出たり、皮膚に発疹が起こったりなど、ほかにも全身の症状が出ることが多く、首の痛みだけというケースは少ないと言えます。
<受診するとよい診療科>
血管炎として有名なのが、大動脈炎症候群や側頭動脈炎など。これらの場合は、膠原病内科が専門です。
「動脈解離」
有名なのが、カイロプラティックやバキバキならす整体など、首の音が鳴るような施術で起こりうる問題です。首の骨の中を通っている椎骨動脈は無理な施術で痛みやすく、動脈解離が最も起こりやすくなる部位です。
動脈解離が広がって脳の中にいくと、くも膜下出血や血栓の原因にもなり、脳梗塞につながることもあります。
<受診するとよい診療科>
首の痛みの原因がもし血管だった場合は、脳の急病になりかねない怖さがあります。血管内科や脳外科が専門です。
2位:がん・感染症
首のレントゲンで、癌や感染症が見つかることがあります。骨にできる悪性腫瘍だけでなく、その周りの組織に癌ができたり、感染症で膿が溜まっていたりすると首の骨の周りが腫れてレントゲンで異常が見られることがあります。
<注意すべき症状>
痛み止めが効かない首の痛み、発熱、体調不良、夜眠れない痛み、安静時痛、長期間持続する痛み、喉の痛み、アゴを胸にくっつけられないなど。
もともと癌や悪性腫瘍を抱えている・治療歴がある、糖尿病やステロイドの長期の内服歴など、免疫力が低下している状態の場合には、その可能性が高まるので、より注意が必要です。
レントゲンではわからない悪性腫瘍や感染症もあるので、CTやMRIを受けることも大切です。
1位:心臓発作
心臓は左右でいうと左のほうが痛みが出やすく、ほとんどの場合は胸痛ですが、首にも痛みが出るケースがあります。心臓から出る大きな血管の問題になると、左右どちらでも首の痛みとして現れることがあります。
心臓発作で首の痛みだけが起こることは、とても稀です。ただし、命に関わる重病も、振り返れば「最初は首の痛みだけだった」という人もいます。首の痛みはどうせ筋肉の問題だろうと決めつけずに、その後の変化で首以外の症状が増えてきたり、激痛だったりする場合には、早めに病院に相談してほしいと思います。
“首の痛み”とひと言でいっても、その原因は多岐にわたり、さまざまなケースが考えられるとのこと。「しばらく経ったら改善するはず」と決めつけてしまうのではなく、今後のために知識としてもっておけるとよいですね。
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※こちらの記事は元動画の提供者さまより許可を得て作成しております。