教えてくれたのは……糖尿病専門医・田中祐希院長
三鷹駅前たなか糖尿病・内科クリニック院長
「一人ひとりの幸せを応援」しながら、糖尿病専門医による治療を行う。クリニックホームページ内の院内紙にて、体験記、旬野菜の糖質オフレシピなど、お役立ち情報を公開中。
Case1「ペットボトル症候群」
皆さんは「ペットボトル症候群」を知っていますか? 普段、水分補給としてスポーツ飲料やジュースをよく飲んでいる方は注意が必要です。
ペットボトル症候群が原因で急激に血糖値が上がり、糖尿病と診断された46歳女性の事例をご紹介します。
気づいたきっかけ・自覚症状
健診で、HbA1c(概ね過去1か月の血糖値の程度に連動して上下する指標のこと。6.5%以上が糖尿病の診断基準の一つとされる)が6%台だったため受診を勧められたが、医療機関は受診していなかった。健診で、HbA1c(概ね過去1か月の血糖値の程度に連動して上下する指標のこと。6.5%以上が糖尿病の診断基準の一つとされる)6%台だったため受診を勧められたが、医療機関は受診していなかった。
半年後に多尿と強い喉の渇き、体重の減少、手の痺れ、日中の強い眠気を自覚するようになった。友人との食事中にあまりにもドリンクバーで飲み物を飲むため、友人に糖尿病検査を勧められて受診。受診したところ、HbA1c 14%、食後血糖 720mg/dl(正常では血糖は70-160mg/dlで上下)と高値で、検査の結果「2型糖尿病による重症高血糖」と診断した。
改善・治療方法
今回のケースは、半年という短い期間の間で急激な血糖の上昇を認めた症例です。
急激な血糖上昇の原因として、糖質飲料(スポーツドリンク、ジュース)の過剰な摂取による高血糖が考えられます。血糖が上昇すると、多尿によって体から水分が失われ、喉が渇くようになります。その際の水分補給で糖質を含む飲み物を摂取すると、さらに血糖が上昇し、喉の渇きも悪化するため、過剰な糖質飲料の摂取に繋がりやすくなるのです。これをペットボトル症候群といいます。
本症例では、飲み物については糖質を含まない水、お茶、炭酸水に限定し、インスリンの自己注射、内服治療を開始しました。その後、血糖はHbA1c 6.2%まで改善を認めました。
CASE2「過剰な糖質摂取」
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糖質を意識するのをやめたところ、健診結果に変化が出てしまった45歳女性の事例をご紹介します。
気づいたきっかけ・自覚症状
糖質制限を行っていた際は、健診でHbA1c 5.6%(HbA1c 6.5%以上が糖尿病の診断基準の一つ)と正常範囲内だった。ところが、今年は糖質制限を特に意識しない生活をしていたところ、健診でHbA1c 7.6%と高値に。特に自覚症状はなかったが受診した。
改善・治療方法
改めて食事の見直しを行い、糖質が過剰にならないようにできる範囲の中で糖質を控えることしました。
具体的には、
- ご飯はおかわりをしない
- 「うどん+おにぎり」など、主食が重ならないようにする
- 甘い飲み物は飲まないようにする
といった3点を徹底しました。
また、睡眠が短時間、不規則であり、それも血糖上昇の一因となるため、夜更かしせずに6時間以上は睡眠時間を確保するようにしました。
運動習慣については、写真が趣味であったため、季節の風景撮影で散歩に出かけるようになり、運動量も増やすことに成功。半年後には、HbA1c 6.2%まで改善しました。
2つの事例からわかるように、血糖値が高くなるような生活習慣を見直すことが改善への一歩になるようです。糖尿病予備軍も多いとされているようなので、事例のような症状に少しでも当てはまる場合には医師に相談してみましょう。