教えてくれたのは……沢岻 美奈子(たくし みなこ)先生
日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医。女性ヘルスケア認定医。神戸にある、医療法人社団 沢岻美奈子女性医療クリニック理事長。子宮がんや乳がん検診、骨粗鬆症検診まで女性特有の病気の早期発見のための検診を行う。診療では、更年期を中心にホルモンや漢方治療だけでなく、カウンセリングや栄養療法も取り入れている。
貧血を改善するために知っておきたい「4つの方法」
前回の記事では、「40代女性の貧血に隠れた婦人科疾患」について伺いました。貧血の症状を改善するためには、どのような改善方法があるのでしょうか。
沢岻先生によると、40代女性の貧血を改善するには、まず原因を明らかにすることが第一歩になるとのこと。その上で、食事・生活習慣・必要に応じた検査と治療の組み合わせで、体調は大きく改善するそうです。具体的な4つの改善方法を解説していただきました。
1.貧血の原因を調べる
沢岻先生:まずは、「なぜ貧血になっているのか」を知ることが大切です。特に40代女性の場合、子宮筋腫や子宮内膜症、過多月経など婦人科疾患によって、月経のたびに多量の鉄分を失っているケースが多く見られます。
また、胃や腸からの出血(潰瘍や大腸ポリープなど)も見逃せません。血液検査だけでなく、婦人科や消化器内科での診察・検査が必要な場合もあります。
2.鉄分を補う食材を食べる
沢岻先生:鉄には「ヘム鉄(動物性)」と「非ヘム鉄(植物性)」があります。吸収率の高いヘム鉄を中心に、効率よく鉄を摂取する工夫をしましょう。また、鉄の吸収を助ける栄養素が含まれる食材を組み合わせることで、より体内への吸収を高めることができます。以下は食材の一例なので、参考にしてみてくださいね。
- ヘム鉄が豊富な食材:赤身の肉(牛・豚)、レバー、カツオ、マグロ
- 非ヘム鉄が豊富な食材:ひじき、小松菜、大豆製品、ほうれん草
- 鉄の吸収を助ける栄養素:ビタミンC(ピーマン、いちご、柑橘類)、動物性たんぱく質
3.鉄剤やサプリメントを取り入れる
沢岻先生:食事だけで不足を補いきれない場合は、鉄剤や鉄のサプリメントを取り入れるのも有効です。ただし、市販のサプリであっても、服用のタイミングや量には注意が必要です。
「胃が痛くなるため鉄剤が飲めない」という方もいますが、しっかりと消化吸収する健康な胃粘膜を作るのにも、鉄が欠かせません。胃荒れを防ぐために胃薬と一緒に鉄剤を服用する方もいますが、普段の食事で唾液や胃液の分泌を促す食材を取り入れたり、摂取の順番を工夫したりすることが大切です。
4.婦人科的な治療を視野に入れる
沢岻先生:過多月経や子宮筋腫が原因で貧血が続く場合は、ピルやホルモン療法、子宮内避妊具(ミレーナ)による出血コントロールが効果的です。貧血の原因を根本から断つ治療も積極的に検討しましょう。
貧血によるつらい症状に悩まされないためにも、原因を正しく把握し、適切に対応できるようにしておきたいですね。次回の記事では「貧血に関する患者さんからのよくある相談や誤解」について、ご紹介します。