お話を伺ったのは……高尾美穂先生
産婦人科専門医、医学博士、婦人科スポーツドクター、ヨガ指導者。女性のための統合ヘルスクリニック イーク表参道副院長。婦人科の診療を通して女性の健康を支え、女性のライフステージ・ライフスタイルに合った治療法を提示し、選択をサポートしている。『大丈夫だよ 女性ホルモンと人生のお話111』(講談社)が発売中。
『大丈夫だよ 女性ホルモンと人生のお話111』
著者:高尾 美穂
価格:1,760円(税込)
産婦人科医にも「専門」があることを知っておこう
——先生の著書の中で、女性のかかりつけ医は「産婦人科医」がおすすめとおっしゃっていますが、その理由を教えてください。
高尾先生:病気になると症状ごとに病院を変えられる方が多いかもしれませんが、体調不良の場合、自分のかかりつけ医がいると非常に安心です。とくに女性の場合、初潮、妊娠、出産など体の変化が著しいので、1人の医師に自分の体のことを知ってもらっておくことは大事です。不調を感じる更年期にも診察がスムーズにいきますし、更年期後もサポートしてもらえます。
とはいえ、産婦人科医であれば誰でもいいというわけではありません。産婦人科医の中にも専門性が腫瘍、周産期、不妊・不育治療、女性医学といくつかの分野があります。
たとえば、がんに関することを知りたいときに、がんを専門にしていない先生には聞かないですよね。同じように更年期やホルモンの相談を、子宮がんなどを専門にしている先生に相談しても、欲しい情報は得られないかもしれません。
——産婦人科医の先生なら、皆さん同じアドバイスをくれるのかと思っていました。
高尾先生:一般的にはそう考える方が多いと思います。皆さんからしたら「産婦人科医」と聞けばどの先生でも女性の体のことならば何でも知っているのでは? と思うかもしれませんが、その中でも分野が分かれているということを知っていただければと思います。
40代の女性にとってはこれから「更年期」の心配が出てくると思います。生理や更年期など、特にホルモンのことを相談するなら、それについて詳しい女性医学学会専門医という資格を持った先生に相談するのがいいでしょう。
信頼できる情報を得て、「かしこい患者」でいることが大事
——都会であれば多くの婦人科の先生がいるので、専門医に診てもらえますが、地方の場合はどうでしょうか? 距離や時間、お金の問題もあって、結局自宅の近くの先生に診てもらうしかないような気がします。
高尾先生:これは大きな問題ですよね。地方だと選択肢がないため、どうしても特定の病院に集中しがちです。患者さん側も自分の症状にあった専門医にじっくり話を聞きたいけれど、なかなか自分の悩みを解決してくれるぴったりな先生に出会える確率は都会よりも低いでしょう。
しかし、これからはもっとオンラインでの診療が増えていくと思うので、地方との医療格差が少しずつ埋まっていくのではと思っています。
さらに調剤薬局が独立したように、CTやMRIなど検査をする病院も増えてきています。この先はもしかすると、自分の家の近くで検査だけしてもらって、診断は専門医の〇〇先生に、というように、どこに住んでいても平均的な医療が受けられるようになる可能性もあるのではないでしょうか。
今すぐは無理かもしれないですが、医療の世界も変化してきているので、皆さんには信頼できる情報を常にアップデートしてもらいたいなと思います。
——信頼できる情報とはどうやって得ればいいのでしょうか?
高尾先生:それは「誰が」「いつ」発信したかということが大事です。調べた情報が10年前の情報であればそれは古いですし、新しい情報でも誰が発信しているかわからなければ信憑性は薄いです。自分で「これは信頼できる情報だ」と思ったら、その情報をかかりつけ医の先生に相談してみるのもいいでしょう。
患者さん側もリテラシーを上げていけば、どこに住んでいても最適な医療を受けることができるようになっていくと思います。患者さんが新しい情報を得て、行動することは自分の身を守ることに直結するので、とても大事なことなんですよ。
取材後記
かかりつけ医のいない筆者にとっては非常に勉強になるお話をたくさん伺うことができました。たしかに生理から更年期、がんや心の悩みなど女性の悩みは、女性の体の専門医である産婦人科の先生に診てもらえれば安心です。とはいえ、医師との相性もあるかと思います。「この先生なら」と自分が思える先生になかなか出会えないこともあるでしょう。100%望みどおりの先生ではなくても、コミュニケーションをくり返すことで、良い関係性を築くことも大切です。