教えてくれたのは……糖尿病専門医・田中 祐希院長
三鷹駅前たなか糖尿病・内科クリニック院長
「一人ひとりの幸せを応援」しながら、糖尿病専門医による治療を行う。クリニックホームページ内の院内紙にて、体験記、旬野菜の糖質オフレシピなど、お役立ち情報を公開中。
糖尿病と診断される基準値
糖尿病の診断には、以下の基準値が用いられます。
- 「HbA1c」の数値
HbA1cは、概ね過去1か月の血糖値を反映する指標のことで、糖尿病の診断基準は6.5%以上とされています。
- 空腹時血糖値
健診では朝食前血糖値を調べることが多く、空腹時血糖値 110mg/dl未満は正常、110-125mg/dlは境界型糖尿病域、126mg/dl以上で糖尿病域とされています。
事例1.甘い飲み物と主食の見直しで改善した糖尿病(41歳女性)
気づいたきっかけ・自覚症状
喉の渇きや頻尿の自覚はあったものの、多忙のため健診はしばらく受けていませんでした。
2023年12月に家族に促されて健診を受けたところ、HbA1c 11.2%、空腹時血糖値 210mg/dlと高値を認め、医療機関受診を勧められて当院を受診しました。
改善・治療方法
治療として、インスリン注射と内服治療を開始し、フリースタイルリブレセンサーを腕に取りつけました。このフリースタイルリブレセンサーは、皮下脂肪中の糖を1分毎に測定し、Bluetoothでスマートフォンにデータを送れるものです。
就寝中も含めて、血糖の変化を常にスマートフォンに記録できるため(※一部非対応の機種があります)、日々の血糖の変化を自身でも把握できるようになりました。
以前は加糖のミルクティーを毎日1本飲んでいましたが、ミルクティーを飲むと血糖値が200mg/dl以上に急上昇することや、白米、パン、麺類などの主食類を摂りすぎると血糖の上昇が大きいことが分かりました。そのため、これらの摂取量を減らすように心がけたそうです。
その結果、血糖コントロールの改善を認め、HbA1cの数値が10.9%から6.4%にまで改善されました。
事例2.食事と運動の見直しと内服薬で改善した糖尿病(49歳女性)
気づいたきっかけ・自覚症状
喉の渇きを強く感じるようになり、健診で尿に糖が出ていたため、糖尿病の検査を受けました。採血でHbA1c 8.3%、早朝空腹時血糖 156mg/dlと高値で、2型糖尿病と診断されました。
改善・治療方法
159cm、72kg(BMI 28.4kg/m2)の肥満も認められたため、食事と運動の見直しを行うとともに、SGLT-2阻害薬、GLP-1受容体作動薬の内服薬を開始しました。
◆SGLT-2阻害薬とは
糖尿病の治療薬の一種で、内服により1日400kcal程度の糖が尿中に排泄されるようになり、血糖の改善と体重の減量が期待されます。
◆GLP-1受容体作動薬とは
内服薬と自己注射薬があり、血糖を下げる作用に加えて腸管に作用し、食欲の制御や減量効果が期待できるものです。
娘さんの結婚式でドレスを着て写真を撮る目標もあり、モチベーションアップにつながったとのこと。晩酌の習慣がなくなり、体重は58kg(BMI 22.9kg/m2)まで減量、HbA1cも8.3%から6.4%まで改善を認めました。
「もしかして……」と思ったときには、放置しないことが大切です。定期的に健康診断を受けて、早期発見につなげましょう。