48歳で出産した記者が語る、不妊治療中パートナーに“救われた”こととは

家族・人間関係

2026.04.24

40代以降の母親から生まれた子どもの数は、この20年で2倍以上に増えています。「高齢出産」という言葉は珍しくなくなりましたが、その裏側にある不妊治療のリアルが語られる機会は、決して多くありません。今回お話をうかがったのは、読売新聞記者であり、48歳で第一子を授かった遠藤富美子さん。自らの体験をまとめた著書『48歳、初産のリアル』に込めた思いをうかがいました。

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教えてくれたのは……遠藤富美子さん

遠藤富美子さん

読売新聞記者。1995年、読売新聞社に入社し、北海道支社、国際部、マニラ支局、金沢支局、生活部などを経て英字新聞部長兼THE JAPAN NEWS編集長。不妊体験者を支援するNPO法人「Fine」認定の不妊ピア・カウンセラーの資格を持つ。

書影

『48歳、初産のリアル:仕事そして妊活・子育て・介護』
著者:遠藤富美子
価格:2,200円(税込)
発行所:現代書館

相談できない孤独を抱える人の「サンプル」に

――著書『48歳、初産のリアル』は、読売オンラインの連載「高齢出産のリアル」に大幅加筆した一冊です。遠藤さんご自身の体験がつぶさに描かれていますが、一冊の本にまとめようと思った理由を教えてください。

遠藤さん 「43歳で結婚、不妊治療を経て48歳で初産、育休や親の介護、職場復帰を経て仕事と育児の両立と、これまでの経験をひとつのサンプルとして提示することで、誰かの役に立つことがあるかもしれないと思いました。40代以降、さまざまな岐路に立ったとき、誰かに相談したいと思ったことがたびたびありましたが、プライベートに関わることなので、なかなか相談できませんでした。相手に嫌がられるのではないかと、躊躇してしまっていたんです。こうして本としてまとめることで、偶然、私と同じ課題を抱えている人に手に取ってもらって、参考にしていただけたらと思いました」

――結婚・妊活・出産など、デリケートな話題は相談しづらいこともありますね。

遠藤さん 「不妊という言葉自体、マイナスに受け取られがちですよね。私自身、向き合っていた当時は日々さまざまな悩みを抱えていました。もし今、同様の課題に直面している方がいるとしたら、私の体験がひとつの情報提供になるかもしれません。これから妊娠・出産をしたいと考えている方や、現時点では妊娠・出産に関心はないけれど、どういう世界が広がっているのか知りたい方、また自治体や行政の方が子育てについて考えるときの一例として参考になることがあればと思っています」

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不妊治療と仕事の両立。当事者と職場が歩み寄るには?

――著書『48歳、初産のリアル』には、不妊治療と仕事を両立する難しさが描かれています。

遠藤さん 「不妊治療は、突然、翌日の受診や処置が必要になる場合があります。また、必要な処置や対応には個人差が大きく、Aさんが行っている治療がBさんにも絶対に有効とは限りません。治療が非常に複雑なため、周囲が理解しにくいということが前提としてあります。当事者としても、あまりにも複雑すぎるので、話してもわかってもらえるだろうかと思ってしまいがちです」

――厚生労働省の発表によると、不妊治療を受けている人のうち、「職場に一切伝えていない(伝えない予定)」人は全体の約半数*。治療の複雑さが、言い出しにくさにつながっているのかもしれませんね。

遠藤さん 「私が治療を受けていた当時は、不妊治療が保険適用される2022年4月以前でしたから、不妊治療について大きな声では語りにくく、フランクに話せない雰囲気がありました。保険適用となった現在でも、職場に言い出しにくいと感じることはあると思います。近年では、福利厚生の一環として、不妊治療に関する相談やカウンセリングを用意する企業もあり、以前に比べて周囲の理解は進んできていると思います。ただ、制度が整っても、課題を抱えている当事者の気持ちは、なかなか変わらないのかもしれません」

職場の女性出典:stock.adobe.com

遠藤さん 「不妊治療にかぎらず、子育てをしながら働いている人もいますし、親の介護をしながら勤務している人もいます。何かしらの事情を抱えながら働く人は、今後さらに増えていくと思います。いつも同じ人が業務を肩代わりするのではなく、不公平だという思いを抱える人が少しでも減るように、社会の仕組みを変更するのはもちろん、当事者も、まわりに理解を求める努力をする必要があると思います。当事者と職場、双方がより分かり合えるように、誠意を持って伝え合うことが重要だと思います」

※参考:厚生労働省「不妊治療と仕事の両立に係る調査(令和5年度)」
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000930556.pdf

「いいよ、まかせるよ」。夫の淡々としたところに救われた

――不妊治療中、パートナーがしてくれた、もしくはしないでいてくれてうれしかったことはありますか?

遠藤さん 「最近は、夫婦で同じ温度感で妊活するカップルも増えているかもしれませんが、私たち夫婦が治療を始めた10年前は、まだそれほど不妊治療が認識されていなかったこともあって、基本的に今後どうするかは私中心で考えていました。夫は淡々としていて、『いいよ、まかせるよ』と、私に一任してくれました。治療を抵抗なく受け入れてくれましたし、受診にも協力的。私の『こうしたい』を否定しなかったところが、うれしかったですね。治療中は気持ちが乱高下するので、夫が安定していたことは、今振り返ってみるとありがたかったです」

夫婦出典:stock.adobe.com

40代を過ぎれば、誰もが何かしらの「個人的な事情」を抱えて働くことになります。遠藤さんの言葉通り、大切なのは制度の整備だけでなく、職場と当事者が「誠意を持って伝え合うこと」。完璧な理解は難しくても、お互いの状況を知ろうと歩み寄ることで、不公平感のない「新しい働き方」が見えてくるはずです。次回は、不妊治療を経て始まった、子育てのリアルについて、遠藤さんのお話を紹介します。

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