人は「幸運な人」と、「不運な人」にわかれている
運が良い出来事と悪い出来事は、誰にでも平等に訪れるもの。そんなふうに思っていませんか?
これは確率の授業でも学ぶことで、理論上はたしかにそうです。わかりやすく、幸運と不運をコインの裏表が出る確率で考えると、「表(=幸運としてプラス1と計算)」が出る確率と「裏(=不運としてマイナス1と計算)」が出る確率はそれぞれ50%なので、コインを投げ続けると、一時的にどちらかに傾いても、最終的にはプラスマイナスゼロ近辺で調整されるはず。
ただし、ここで注意すべきポイントがあります。それは、確率の計算では、あくまでコインを「永遠に」投げられるのが前提となっていることです。しかし、わたしたちの人生は有限です。コインを1万回しか投げられない人もいれば、10万回投げられる人もいるわけです。つまり、幸運か不運かのどちらかに傾いている状態で、人生が終わる場合があるということなのです。
さらに確認しておきたいのは、表と裏が出る確率は試行のたびに50%ずつだということ。裏が続いたからといって、「そろそろ表が出る」とは限らず、前回の結果に左右されるわけではないのです。たとえば表が出続けても、裏が出続けても、まったくおかしいことではありません。
このように考えると、運に対する考え方が変わってきませんか? 1回ごとの確率は50%で同じでも、限定された範囲(時間)においてとらえると、幸運か不運か、どちらかに偏るのがむしろふつうの状態なのです。
「人生の帳尻は合うようにできている」
それもまた真実かもしれませんが、論理的に考えると、人生は不公平であることがふつうなのです。
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中野信子(なかの・のぶこ)
脳科学者、医学博士、認知科学者。横浜市立大学、東日本国際大学などで教鞭を執る。脳科学や心理学をテーマに研究や執筆活動を行うほか、その知見を生かしてテレビや雑誌でも活躍。社会問題やビジネス、カルチャーなど、幅広い分野を、科学の視点で読み解く語り口が人気。
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