「何を学ぶべきか」が常に変化する時代。これからの学びで大切なこと

家族・人間関係

広告

【interview】大切なのは「学び」の場作り、コミュニティ作りだと気づいた

Tera school(テラスクール)代表 荒木勇輝さん

全員が学習者。そんな「学び」の場作りに取り組んでいるTera school(テラスクール)代表の荒木勇輝さんにお話を伺いました。

―Tera schoolを見学させていただいた時に、年齢も取り組む課題もバラバラの人たちが集まって、それがむしろ不思議な落ち着きを生んでいることに驚きました。

多様な人が集まって、多様性があることが前提の中で、お互い学び合っていく。そうすることで表面的ではない信頼関係が生まれる部分はあると思います。
あとは、やはりお寺のお堂という場のもつ力も大きいですね。大人も子どもも不思議と背筋が伸びる空間ですよね。緊張感があるというのとはまた別の意味で。

―「ここでは、全員が学習者。」というコンセプトはどう言ったところから生まれたのですか?

もともとは、全然違うことを考えていまして。私は日経新聞の記者をしていたのですけれど、そういった経験から知ったことや学んだこと、「学校では学ばないこと」を子ども達に「教えてあげたい」という考えをもっていました。

―今の学び合いを中心とした形とは違いますね。

はい。立ち上げ前の準備期間の中で、色んな新しい教育サービスや取り組みに触れたり、活動をしている人と話したりする中で、大切にすべき軸はティーチング(その人が持っている知識、技能、技術を相手に教えること)ではないなと気づきました。

重視すべきは「学び」の場作り、コミュニティ作りだと。
そうして「大人と子どもの学び合い」の場として活動を始めた中で、「全員が学習者」という言葉がスタッフから出てきて、今はそこを中心に据えています。その上で、大人と子どもは対等な立場でありながら「大人はここで過ごす時間の3割以上を子ども達のために使う」という、ゆるやかなルールを設けることで、学び合いの関係性が生まれるようにしています。

「管理しないと動けない人になっていないか」というのは常に気を配る必要がある

社会人や大学生から主婦まで、スタッフのメンバーも多種多様

―通っているのはどういった子ども達なんですか?

本当に幅広く、色んな子がいますね。本人の学力的にもそうですし。就学援助世帯を対象に奨学生制度を設けたりしているので、経済層的にも多様です。

お父さんお母さんが大学の先生とか、お医者さんという子もいれば、母子家庭でお母さんがパートで頑張って子育てされているところの子もいて。そういう子達が良い関係性を築いているんですね。

今の時代、普通に習い事とかに行くと、分断されてしまいがちなんですが、多様な背景をもつ子が、共に学び合える場になっています。それを、社会福祉団体的なアプローチじゃない形でできているのは良いところだなと思いますね。

― 一般的な親の目線として、「カリキュラムとかがなくて、授業や講義もなくて、子どもって本当に学ぶの?」と思われる方もいると思うのですが。

「管理しないと動けない人になっていないか」というのは常に気を配る必要があると思います。お子さんがもっと小さかった時を思い出すと良いのですが、やっていることを応援してあげるだけで、子どもって遊びから自然と学んでいく力を持っているんですよね。

管理の必要があるということは、何か別のところに問題があるのかもしれないです。とはいえ、家庭ではなかなか分かっていても口うるさく言ってしまうということもあります。そこで、私たちの団体としては、家庭から離れて別の環境、関係性の中で「学び」に向き合う場を作っていこうと。新しい環境、関係性の中で子どもが本来もっていた遊ぶ力・学ぶ力が発揮されるケースをたくさん見ています。

―今後の展望についてお聞かせください。

教育というと「何を学ぶか」に注目が集まりがちですが、私たちは「どうやって学ぶか」「だれと学ぶか」というところを重視して引き続きやっていきたいです。不確実性の高い時代を生きていく子ども達にとって「何を」の部分は常に変化していきます。だからこそ、「だれと」「どうやって」という部分が大切になっていくと思いますし、そういう場作り、コミュニティ作り、組織作りを行っていきたいです。

取材を終えて

グループワークの時間は、スタッフがそれぞれの個性を生かしながら内容を考えます

関係性の中から課題をとらえ直すことの大切さ


荒木さんとは数年前に京都市での教育系イベントでお会いしました。
それ以来、お互い「教育」をテーマにしながら「ボードゲームデザイナー」という肩書きで活動する同志として、ボードゲームを作ったり一緒にイベントを開催したりさせていただいています。

私の中の印象は「アクティブな哲学者」。いつも安易な解決策に飛び付きがちな私と違って(笑)物事の本質を見つめながら、考えながら、その上で時に大胆な行動をとられます。

荒木さんはよく「関係性」または「関係性を変化させる」ということに注目して話をされます。何かの課題や問題があった時に、その課題だけを見るのではなく、周囲との関係性、前後や社会との繋がりなどを含めて向き合う必要がある。人はつい「木を見て森を見ず」になってしまうからこそ、「関係性」に着目することで色んなヒントが見えてくるのかもしれません。

これって、良い仕事をする上でも同じかもしれませんね。

取材時点では新型コロナへの対応で、Tera schoolはオンラインのTele school(テレ・スクール)としてオンライン上の学び合いの場として活動されています。この困難な事態に対しても、さすがは荒木さんという工夫の数々で、むしろ可能性の広がりを感じています。

ぜひまた改めて取材させていただきたいと思います!

子どもと大人が学び合う現代の寺子屋「Tera school」
https://www.teraschool.jp/

荒木さんが開発された「教師・生徒・保護者・地域住民」皆で学校を良くする学校運営シミュレーションボードゲーム「We School」
https://readyfor.jp/projects/weschool

※表示価格は記事執筆時点の価格です。現在の価格については各サイトでご確認ください。

広告

著者

門川 良平

門川 良平

ベネッセコーポレーション→小学校教員→うんこドリル事業のプロデューサーを経て、現在は「すなばコーポレーション」という会社を立ち上げ、学習コンテンツクリエイター・ボードゲームデザイナーとして活動しています。2児の父。

気になるタグをチェック!

saitaとは
広告

人気記事ランキング

ランキングをもっと見る