声かけで注意すべき点は?
注意してほしいのが、15分でドリルが終わったら、「すごーい! じゃあ、もう1枚できるよね」とタスクを追加することです。
そうすると子どもは、「せっかく早くやっても、ご褒美の時間が減るのか」と思って、次の日から頑張ることをやめちゃうんです。
約束をしたらしっかり守る! 15分でやったら、あとの45分は好きに使えるんだということを体感することで、子どもは自分で時間を組み立てていけるようになります。
――ゲームやYouTube目的の勉強になってしまわないでしょうか?
最初は、ゲームやYouTubeをやる時間がもらえるというご褒美だったかもしれないけど、子どもはだんだん15分でドリルを終わらせることのご褒美がわかってくるんです。毎日繰りかえすことで昨日やっと分かったことが、今日はスラスラできるようになるということが子ども中で喜びになっていくんです。子どもの知的好奇心は大人よりずっと高いんです。
そうすると、ドリルを毎日1ページやっていた子が、「ママ、今日は2ページやってみるよ」となる。これをママが「できるようになってきたから、今日は2ページね」と言ってはダメなんです。
――すごい。まさに、ママたちが望む理想的な姿ですね。
個人差があるので、3日目でわかる子もいれば、25日目にわかる子もいます。だから、そこは気長に付き合う必要がありますが、子どもが自分のペースでそれに気づけたら、それは一生の宝になります。親が言ってやらせてしまうと、それはずーっと「言われてやらされたこと」になるんです。子ども自身が「僕は自分で頑張った、すごいよね!」と思って育つかは、ここが大きな分かれ道になります。
子どもを変えるには、まずママが変わること
――認めてあげるだけで、そんなに変化するものですか?
これを実践したママたちはみんな驚くんです。「子どもがものすごく変わった!」と。そして「こんなに簡単なことだとは思わなかった」と言っていますよ。
今まではママがフル稼働でいろいろやっていたのに、子どもがやっていることを「すごいね」「わかるよ」と認めてあげるだけで、子どもがすごく嬉しそうに幸せそうに自主的に動くんですよ。そして、ママだったら聞いてくれると思っていっぱい話しかけてくるようになったり、ふっと大事なことを話すようになったりするんです。そこで大事な話をしてきたときは、真剣に聞いて、一緒に問題を解決していくようにすると、子どもはどんどん自分の頭を使うようになっていきます。
――認めてあげられる自分にならないといけないですね。
子どもを変えるには、まずママが変わらないと。子どもの思いを聞けるママになったら、子どもの変化は早いですよ~。実践したママの中には、「今まで全部私が考えていたから大変だったけれど、認めるだけで子どもが自分で動くから、すごく楽になった」という方が多いですよ。
――でも、突然ママが優しくなったら子どもは戸惑いませんか?(笑)
みなさんの反応を見ていると、子どもは、ママがそうしてくれるのを待っていたんだなと感じることが多いので、突然変わってもこちらが思っているほど戸惑いはないようです。子どもは毎日ママをしっかり見て感じているから、ママの変化に敏感で、より子どもたちも変わりやすいのかもしれないですね。ママが変われば、子どもの変化は早いです。
――最後に、日々頑張るママたちメッセージをお願いします。
ママたちがすごく頑張っているのはひしひしと感じています。一人5役、ママ、仕事、保育士さん的な部分もやり、家事もやり、妻もやり。5人ワンオペ状態といった感じですよね。どれも完璧にやりたいし、やれていないことで自分を責めているママもいると思うのですが、それはとても無理なこと。できるだけたくさんの人を頼って、なんとかして自分の時間を確保しながら、未来ある地球を作っていけるといいなと思います。地球規模になってしまいますが、本当にそう思います。
まとめ
「認めてあげるだけ」。それすらも、難しく感じてしまうくらいママたちは日々頑張っていて疲れているかもしれません。6歳の娘を持つ筆者も、「認めるというのが、実は一番難しいことなのでは?」と、天野さんのお話を聞きながら感じていました。でも、「驚くほど簡単だった」という言葉を信じて、インタビュー後に「認める」ことを意識して娘と一日を過ごしてみました。宿題をやる、やらないで毎日のようにイライラしていたのがウソのように、娘の気持ちを認めてあげるだけで、イライラすることなく1日が終わったことにびっくり。
認めるというのは、心に余裕がないとできないと思い込んでいたけれど、認めることで心に余裕ができるんだということに気づけました。自粛生活がもう少し長くなっても、この方法を知った筆者は余裕で過ごせちゃうかもしれません。
お話しを聞いた人 天野ひかりさん
・親子コミュニケーションアドバイザー
・NPO法人親子コミュニケーションラボ代表理事
上智大卒。テレビ局アナウンサーを経てフリーアナに。
NHK「すくすく子育て」キャスターとしての経験を生かし、全国の親子に寄り添いながら、講演会や講座、シンポジウム、企業セミナー講師など。
自身が立ち上げたNPO法人で、子どもの自己肯定感を育てる親子のコミュニケーションを学ぶ教室「ことばでおやこみゅ教室」を主宰。
HP
著書 Amazon子育てランキング1位のロングセラー
「子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ」サンクチュアリ出版
最新刊「賢い子を育てる夫婦の会話」あさ出版
ほか。
TEXT:上原かほり
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