アイスがとまらない……!
特別に好きというわけでもなかったし、どちらかと言うと実は冷凍庫の奥の方で放置されてしまう事が多かったのだけれど。
この長く続いた自粛期間、家で仕事をしているうちにハマってしまったものがあるのです。それが「アイスクリーム」、通称アイスです。
まだ夏が来た、というわけでもなく。常備してあるわけでもなく。でも、ひとしきり仕事に集中した後にふと思うのです。「アイスが食べたい」。
思い立ったらもうダメです。まだやる事はたっぷりあるし、この後オンライン会議だって控えている。だけど気が付いたらサンダルを履き、コンビニへダッシュして、一番美味しそうなのはどれかと真剣に選ぶ私がいる。
アイスを中心に考える1日
きっかけは、久しぶりにスーパーで買い物をしている時に「せっかく来たなら」と普段買わない豪華リッチなアイスを何の気なしに買ったこと。
そして更にせっかくだからと食べる前に写真を撮り、同僚に「今からこれを食べる」とひとしきり自慢し、意味のない意気込みを語り終え、でも実はお腹の弱い私は全部食べきらないうちにトイレに駆け込むことになるだろうと半ば投げやりな気持ちを抱えつつ、一口目を食べたところ。
「美味しい。なにこれ、すごく美味しい!!」
となり、あっという間に全てをペロリとたいらげてしまった……という、ごく普通の出来事です。ごく普通だけれど、このリフレッシュ感はもう普通ではない。ヒンヤリとした触感と脳に染みわたる濃厚な味。その事に感覚すべてを集中する時間を過ごす贅沢さ。
なんですが、この気持ちの盛り上がりは。いつしか一日の仕事のスケジュールを「アイス前」「アイス後」で組み立てるようになってしまった程にはインパクトがあったのです。
1日で一番盛り上がる瞬間は
今日はどのタイミングにその瞬間を組み込もうか。何の味にするのかは、その時の気分によって決めたいから買い置きはしたくないよね。買いに行く時間もフィーリングで決めようか。「今だ!」っていう直感を大切にしたい。でも「アイス後」に向き合った時にがっかりしない程度には仕事を済ませておきたい。そうすると、今日は結構遅い時間になるのかな。
その瞬間を迎える準備もぬかりなく。やっぱりアイスのふたをあける瞬間は、他のことに気を取られたくないからメ―ルもチャットもひと通り済ませて。
身体が冷えすぎないように、温かいお茶も用意して。大きすぎず、小さすぎず、ちょうどいい大きさのスプーンを口にくわえ。あ、誰かに自慢するために写真も撮っておいて。
一口目は目をつむった方が味わえるかな。この瞬間が絶好調の盛り上がり。
んーーーアイスってすごい。さあ、ここまできたら……あとは同じです。
「美味しい。なにこれ、すごく美味しい!!」
あっという間にペロリとたいらげる。全くいつも同じです。ヒンヤリ、濃厚、リフレッシュ。なんて贅沢、なんて幸せ。そして、ある程度仕上げておいた仕事に再び向かい、あとは終わりまで淡々とこなしていくのみです。
1日のうちの一番の盛り上がりが「アイスを食べる瞬間」。これって幸せなのかな。これって積極的な過ごし方って言えるのかな。ふと頭をよぎることもあるけれど。段々と食べたいアイスの種類もなくなってきたけれど、クーラーの部屋で食べると身体が冷えて後悔することもあるけれど。ちょっと多いな、と感じる日もあるけれど。(あれ、そんなに好きじゃない?)
それでもやっぱり、朝起きて考えるのはとてつもなく楽しいのです。今日もやっぱり食べちゃおうかな、と。思わずサンダルを履いて外へ飛び出してしまう自分が好きなのです。
ああ……アイスがとまらない!
『ノラネコぐんだんアイスのくに』
「ニャー、アイス。おいしそうニャー。」
けたはずれに食いしん坊の彼ら「ノラネコぐんだん」が見つめているのは、「ワンワンちゃんのアイスクリームパーラー」の店の中。
そして考えることは1つだけ。どうしたら好きなだけアイスを食べることができるのか。それを実現するためならば、彼らはまっすぐ前に進むのみ。
ところが念願のアイスを食べた後、気がつけばそこは氷一面の世界。さらにとんでもない展開が続き……あやうく自らがアイスになりかけるところだった!?
大人気「ノラネコぐんだん」シリーズ5作目も期待通りのやんちゃっぷり、そして期待通りの面白さ。愛すべき悪ガキぐんだんの冒険物語です。さすがに今回ばかりは彼らも反省している、といつも願っているんですけどね。
アイスへの情熱
確かに私の今の楽しみはアイスの時間だと断言し、止まる気配もありません。で、でも。そこまでは求めていないです……はい。震えながら食べるほどの果てしない欲望を目の前にしてしまうと、私なんてまだまだ未熟者。
アイスの国の住人たちの足元にもおよびません。
というわけで、そろそろお腹の方を大事にしたいと思います。
磯崎 園子
「絵本ナビ」編集長として、おすすめ絵本の紹介、絵本ナビコンテンツページの企画制作・インタビューなどを行っている。大手書店の絵本担当という前職の経験と、自身の子育て経験を活かし、絵本ナビのサイト内だけではなく新聞・雑誌・インターネット等の各種メディアで「絵本」「親子」をキーワードとした情報を発信。
著書に『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)がある。
イラスト:掛川晶子
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