大手航空会社に勤務中、長男が2歳、次男が0歳のときに、警察官だった夫が殉職。その後フルタイム勤務のシングルマザーとして、子どもたちに接することができる短い時間の中で育児に悩み、息子たちに絵本の読み聞かせを始めたところ、子どもの変化と自身の精神安定のために、いかに絵本が良いかを実感。その内容を体系化し、1人で講座をスタートさせ2017年に協会設立。著書に『子どもの脳と心がぐんぐん育つ 絵本の読み方 選び方』(パイインターナショナル)がある。
夢や目標がない子どもが増えている
「うちの子はやりたいことがないと言うのです。どうしたらいいでしょうか」小学校高学年以上の親御さんから特に多い相談です。
「勉強しないと将来の選択肢が少なくなるよ」と言っても、夢や目標に向かって勉強するようにはなりませんよね。それどころか親子関係が悪くなっていくはずです。
本来、子どもは好奇心の塊のようなもの。ワクワクするような楽しいことを見つけると、ご飯や寝る時間を忘れるほど集中します。ワクワクすることから好きなことを探求し、そこから将来の夢に繋がる可能性が広がって行きます。
では、どうしたらよいのでしょうか。3つのポイントでお伝えしたいと思います。
ポイント1.子どもの「楽しい」を引き出す
1つ目は子どもの「楽しい」を引き出すことです。3~4歳頃からは「なんで、海は青いの?」「どうして恐竜はいなくなったの?」などと、たくさんの質問をしてくるようになります。その時、一緒に絵本や図鑑を見ながら答えを探してあげることによって知的好奇心を満たしてあげてください。そうすることで「知ることは楽しいことだ」と自ら学ぶ意欲を持つことができます。
ポイント2.子どもが選んだ絵本にヒントが詰まっている
2つ目のポイントは、読み聞かせを毎日の習慣にすることです。1日10分だけでもお子さんとの読み聞かせの時間を作ってください。
そして、家には数十冊の絵本を置いて欲しいと思います。もちろん図書館から借りてきた絵本でもOKです。子どもが選んだ絵本から、好きな物語、好きな色、好きな登場人物、笑いのツボ、喜怒哀楽の感情が動く場面が分かると、自然に子どもの得意なことや好きなことが分かるようになっていくのです。
そして、子どもの今の感情や気持ちを知るヒントにもなります。子どもが選んできた絵本を読み聞かせしたあと、「今日、お友達とケンカをして仲直りできなかった。ごめんね。が言えなかった」とママに伝えてきたというエピソードのような事例がたくさんあります。絵本の読み聞かせを通して、まだ上手く表現できない気持ちも消化してくれる作用もあります。
私が子どもの「好きなこと」に気づけたきっかけ
特にお気に入りで何度も「もう1回読んで」という絵本には、子どもの才能や資質を伸ばすヒントが大いにあります。
私の子どもが3歳頃のことです。『バムとケロのそらのたび』(文溪堂)という絵本がお気に入りで3ヶ月間、毎日読み聞かせをし続けました。息子は3ヶ月経ったある日、A4の紙を30枚くらい使い、飛行機の設計図を描き始めました。そして、「飛行機を作るから材料を買いに行こう!」と私に言ってきました。何度も繰り返し絵本を読むことで、自分も飛行機を作って冒険の旅をしたいと感じたようです。
大学生になった今、親元を離れて暮らしていますが、振り返ると、小学生の頃から活発で、キャンプに参加したり、中学や高校でも海外に留学したりするなど、様々なことへのチャレンジを楽しんでいます。
ポイント3.子どもの可能性を広げる言葉がけ
3つ目のポイントは、親の言葉かけです。
「みんなは○○ができるよ」「もうお姉ちゃんでしょ」「○○しなさい」など指示するような言葉がけや、誰かと比べるような言葉がけは、自分のしたいことよりも、周りに合わせることを良しとする価値観をすり込んでしまう可能性が高くなります。
では、どのような言葉をかけてあげたらよいでしょうか。「あなたは、どうしたいの?」「○○するためにはどうしたらいいと思う?」など、自分で考えて、判断し、選択することを引き出せる質問をすることを心がけてみてくださいね。家事や仕事に追われて、心穏やかに待ってあげる余裕がないなと思っているママにも、絵本の読み聞かせが効果的です。絵本は、読み手も温かい気持ちや、嬉しい気持ちを感じることができます。そして、子どもと物語を共有することで、親子の絆も深く感じることができる、かけがえのない時間を作ってくれます。
子どもが夢に向かってチャレンジするために、親の肯定的な関わりがとても重要です。自分を信じてどんなことにもチャレンジしてみようと思える環境を、ぜひ絵本の読み聞かせで作って欲しいと思います。