【あなたの街のショコラティエ】世界が誇るデニムの街・岡山が生んだクラフト志向のチョコレート「Bean to Bar」の魅力

料理・グルメ

2021.12.09

ショコラティエ―ル(女性チョコレート職人)が作るチョコレートは、どこもで出会ってもアイデアが自由で、おいしさが無限なことに驚きます。今回も例にもれず「全部の工程を私の手で」と、徹底したクラフト志向から生まれたBean to Barと出会いました。

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もくじ

alfer Chocolateへの道
のどかな田園地帯に潜む、本格Bean to Bar
出迎えてくれたのは、オーナー自作のBGM
人生、懸けていますから!
今、食べちゃっていいですか?
クラフトの中で自分を表現していきたい。
おいしさの秘密は?
そして、素敵なコラボも…
あんチョコサンドは「藤戸まんぢゅう」さんと。
カカオ豆の皮むき作業は、「オレンジの会」さんと。
alferの魅力は、ゆるやかなグラデーション!

alfer Chocolateへの道

今回は岡山へ…久しぶりに乗った新幹線こだま号では車内販売が無いことを除けば快適です。駅まで迎えに来てくれた友人R嬢と大阪から同行したK嬢とともに、ひとまず県道沿いの珈琲店でお茶をすることに。Google mapで調べると、そこからBean to Barチョコレートが自慢のalferまでは「徒歩11分」。ご機嫌な様子でパフェやゆず茶を楽しむR嬢&K嬢に手を振って、秋深まる田園地帯を、私はひとり歩き始めました。

のどかな田園地帯に潜む、本格Bean to Bar

のどかだんだんGoogleマップが信じられなくなってきました…
本当にこの先に、おしゃれな本格Bean to Barがあるのか…?

いけどもいけども、田んぼと用水路と住宅ばかり…心細くなってきたところにやっと見つけました。疑って悪かったGoogleよ!そしてHPの記載通り、道路を挟んで向かい側にはセブンイレブンがありました。

出迎えてくれたのは、オーナー自作のBGM

エントランスBean to Barということで…
お店というより、アトリエ的な感じ?と思って入ってみると…
店内はネイビーをテーマカラーにした超おしゃれ空間!
窓に映る青空がすがすがしく「やっと見つけた」思いにつながりました。
あ、セブンも映っていますね。

入口を入ると、心地よい音楽が!ご挨拶もそこそこに「この音楽は?」とお聞きすると「はい、オリジナルなんですよ。アプリで私がちょこちょこっと…。」と笑顔で迎えてくれたのはオーナーシェフの阿地由季子(あちゆきこ)さん。ポコポコと心地よい響きが楽しくて「これはカカオを割っている音かな?」と、ちょっと意味不明なことをつぶやいていると「ああ、そんな感じですね~!」と応じてくださいました。(や、優しい!)

人生、懸けていますから!

阿地さん地元の高校を卒業後、アパレルの勉強のため大阪へ。
デザイナー志望でモノづくりに対する思いが深まるなか
「岡山に世界に誇れるものがあったんだ!」と気づき、
デニムの街、倉敷児島にてダメージデニムの製作に携わった。

オーナーの阿地さんは「お菓子はしょっぱい系の駄菓子が大好きで、コンビニでもまずはそちらの棚に行っちゃいますね(笑)。でも、チョコレートはとにかく面白いんです。普通、食べ物っておいしいかおいしくないか、でしょう?でもチョコレートはそれ以上に魅力があるんですよ。カカオとお砂糖だけしか使わないのに、試行錯誤を繰り返すとそれが味の奥行きになって表れてくれるのが、本当に楽しくて…。もう、人生懸けてるんで(笑)」

うまい棒が大好きだと言いながら、チョコレートの話をしだすと阿地さんの瞳はキラキラと輝きだして、どんどんお話に引き込まれました。

今、食べちゃっていいですか?

tabletお話しを伺いながらいただいたのは、ウガンダ75%。
数字はカカオ度を表します。

取材中に「ちょっといただいてもいいですか?」と、ひとかけ口に入れると…最初に輪郭のハッキリしたベリー系のような酸味が。次にローストの火を感じさせる煙のような香りがして、スパイスのような刺激が舌先に残りました。舌触りはとても繊細で滑らかなのに、味はとてもダイレクト!おそらくチョコレート好きの人でなくても「えっ?なにこれ?なにこれ?」と驚く美味しさに違いありません。

クラフトの中で自分を表現していきたい。

カカオ阿地さん自身が一番好きなのはバリ島産のカカオなのだそう。
「カカオが濃くてストロング!衝撃のおいしさですよ。洋酒のような…香り豊かで奥深い風味がするんです。」

alferのチョコレートはコンチングと言われる、チョコレートをなめらかに練り上げる工程以外は、全て手作業で行われています。「一番好きな作業は?」とお聞きすると、「カカオ豆の皮をむいている時です」と即答。とにもかくにもいつも素材に触れていたい、自分の手から生み出すことが大好き!というのは、デニムを扱っていた時から変わらない、のだそう。「どうすればカッコいいダメージができるのか、どの薬品をどう使えば…と実験を繰り返すことは全く苦にならなくて、だんだん自分のイメージに近づいていくのを感じながら考えを深めるのが楽しいんですよ」。

おいしさの秘密は?

胚芽大好きなカカオ豆の皮むき作業を見せていただきました。
約1000粒で30枚の板チョコになるとのこと。
豆1つ1つにある胚芽も丁寧に取り除くのは「雑味を出さない」ため。
大量生産のチョコレートには、この繊細な作業はもちろん存在しない。

皮を丁寧にむく作業を見せてもらいながら、よりクリアにカカオの味を響かせるために胚芽を取り除くということにも驚きましたが、もう1つ。ローストについてもこだわりがあるようです。「Bean to Barはカカオの味で勝負をするので、個性が出しにくいんですが、どうしても味に奥行きを出したくて…よりわかりやすく各産地のカカオの個性を立たせたいというのもあって、ローストの加減にわざとムラを出しています」。なんでも通常は均等にローストをして、コーヒーと同じように、深め、中間、浅め、と分けるところを、阿地さんはまだらにカカオをローストするのだそうです。

そして、素敵なコラボも…

あんチョコこちらは源氏平家の時代から倉敷に伝わる「藤戸まんぢゅう」との
コラボして大好評を得ている「あんチョコサンド」。

私が楽しみにしていたのが、この「あんチョコサンド」。alferの商品は、ほぼ阿地さんおひとりで作られているため、特に手間のかかるこちらは限定商品とお聞きしていました。なので、アポを取る際に思い切って「あんチョコサンドを買って帰りたいんですが…」と図々しいお願いをしたほどです。カカオの味がクリアに響くalferのチョコレートと、キメの細かい藤戸まんぢゅうのこしあんが合わさるとどうなるか?…いやもう絶対おいしいに決まってる!そう信じていましたが、素人チョコレート愛好家の予測はズバリ正解パーフェクト!でした。

あんチョコサンドは「藤戸まんぢゅう」さんと。

あんチョコサンドチョコレートとあんこの比率を決めるのは、なかなかの難題だったようで
かなりの回数、試作を繰り返したそうですが・・・
その「妥協の無い」探求心が見つけ出したおいしさは、パーフェクト!

カカオニブの香ばしさがサクサクおいしいクッキーに、少しだけこしあん寄りのチョコレートクリームがサンドされていて、その複雑で絶妙なおいしさは格別!コーヒーととても良く合い、ボリュームもあり、最高のおやつです…と言っても取材中に食べてはいけませんね(汗)。

ホットチョコレートこちらはこの季節に特にオススメのホットチョコレートパウダー。
カカオ75%のガーナ産カカオ豆を使用したチョコレート。温めたミルクにチョコレートパウダーを溶かします。
「全部おいしく味わったら、空瓶をお店に持ってきてくださいね。」
とのこと。次からはホットチョコレートパウダーだけを購入できます。

カカオ豆の皮むき作業は、「オレンジの会」さんと。

かかおほとんどの作業をひとりで、それも手作業で行うため
「心強い仲間がいるのは、とてもありがたい。」のだそう…。

膨大な数のカカオ豆の皮むきが「一番好き」とはいえ、全てひとりでやっていては、チョコレート作りには辿りつきません…そこで、alferでは、ひきこもりや・障害・貧困をはじめとする社会的孤立状態に置かれた人たちを支援するオレンジの会の協力を得ています。まずローストしたカカオ豆をオレンジの会へ送り、作業を終えたものがまた送り返されて来るのです。貴重な就業を支援することにもなり、ここにも心がふれあうコラボレーションがもうひとつありました。

alferの魅力は、ゆるやかなグラデーション!

珈琲店内ではコーヒーやホットチョコレート、アイスクリームもいただけます。
ゆくゆくは「ここでカフェもやってみたい」と、さらなる夢を語ってくれました。

ファッション業界を志した女の子が、自分の生まれ育った土地の産業の素晴らしさに気づき、デニム加工に没頭していた時…彼女が目指していたのは「カッコいいダメージと色ムラ」でした。そして、いつしかチョコレートの「面白さ」に魅せられ、この道を進み始めたときに、再びデニムの作業に没頭していたあの頃に目指した、色ムラ…すなわち、ローストのグラデーションが、味に奥行きを出す、ということに気づいたのです。
alferのチョコレートのおいしさ、楽しさ、面白さは、これまでの彼女の足跡が全てが消えることなく、まろやかに溶け合い、独自のBean to Barとなっています。

そういえば、ご自身がデザインしたカワイイネイビーのパーカー…いやフーディーというのね、多分…あのロゴもキレイな虹色のグラデーションでした。思わず「売ってないんですか?」と聞いちゃいましたが、こちらは残念ながら非売品。そして、阿地さんの次なる目標は「カフェ」とのこと。その時には、おしゃれなグッズやアパレルもぜひ展開してもらいたい…と、密かに楽しみにしています。

次回は、スーパー・コンビニチョコの冬の名物と言えば…のアレ!をピックアップします。

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著者

みやむらけいこ

みやむらけいこ

ライター歴20年。「あなたに逢いに行きます」取材ではなく出会い、インタビューではなく会話。わかりやすい言葉で丁寧に「ひと」を伝えます。好きなものは、サーフィンと歌舞伎、主食はチョコレート。#人生はチョコレート

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